「女性ホルモン」というのはよく聞く言葉ですが、しっかり理解している方は少ないのではないでしょうか。「ホルモン」という言葉も、耳にはするもののどんな働きをしているのか分からない方が多いと思います。しかしこのホルモン検査が、婦人科ではとても重要な位置をしめているのです。
ホルモンは特定の臓器で作られて、全身の機能を調整する役割をもっています。ホルモン検査とは、採血を行ってその血液中のホルモンの量を調べるという検査です。産婦人科でおこなうホルモン検査は脳下垂体から分泌されて卵巣機能を調整するゴナドトロピン類と卵巣から分泌されて主として子宮に作用する女性ホルモンです。
女性ホルモンの分泌量が減ると、心身に様々な不調が出てきます。
・プレ更年期障害や更年期障害のような症状がある人
・無月経、無排卵の人
・体調不良がある人
などは、女性ホルモン検査を受けてみるとよいでしょう。
ホルモン検査は、クリニックや産婦人科のある病院等で受けることが出来ます。検査費用は通常保険診療で5,000円以下ですが、体外受精などの不妊治療の場合、私費診療になり5,000円を超えることもあります。
クリニックに検査室がある場合、通常検査結果は30分~1時間程度で出ます。外注検査の場合は数日かかるので、次回以降の受診日に結果を聞くことになります。
女性ホルモン検査の主なものとして、
があります。(それぞれホルモンの種類を表しています。)
また、最近注目されているものとして
6.AMH(アンチミューラリアンホルモン)の検査
があります。
以下、それぞれの検査でなにが分かるのかを紹介します。
エストロゲンというホルモンは卵巣から分泌され、女性らしいからだつきをつくり、排卵・月経を起こして妊娠機能を維持するという重要なはたらきをしています。
エストラジオールはそのエストロゲンを代表する成分で、女性ホルモン検査では、血液中のエストラジオール値を測るのが一般的です。
エストラジオール(エストロゲン)値を測定することによって、卵巣機能の状態や更年期・閉経の可能性などがわかります。不妊症診療では排卵を予知するために検査します。
エストロゲンの数値が基準値より低い場合は、卵巣機能が低下していることが推測されます。無排卵や無月経、プレ更年期、40代後半以上では更年期が考えられます。
まれですが、排卵誘発をしていないのに、エストラジオール値が高値であることがあります。この場合はエストロゲン産生腫瘍(さんせいしゅよう)などの可能性が考えられます。
プロゲステロンは、エストロゲンと同様、排卵に伴い卵巣の黄体から分泌される、妊娠に必要なホルモンです。プロゲステロンが体温を上昇させるので、基礎体温を毎日測ると、プロゲステロンが分泌されていることがわかります。プロゲステロンが十分分泌されないと黄体機能不全といって不妊の原因になります。およそ10ng/ml以上あればよい排卵がおこったと考えます。
FSH(卵胞刺激ホルモン)は未熟な卵胞を成熟させる働きをしています。FSHの値を測ることで、脳下垂体や性腺機能の異常がチェックできます。
FSHの値が低い場合は、視床下部や下垂体機能の低下による月経異常(無月経、無排卵)や不妊症が考えられます。
FSHの値はいわゆる卵巣年齢や卵巣予備能のチェックにも用いられます。値が高い場合は、20〜30単位ならプレ更年期や更年期である可能性が考えられ、50ないし100であると閉経が考えられます。
LH(黄体形成ホルモン)は排卵を起こすために必要なホルモンです。LHの値をチェックすることで排卵時期を予測することができます。
また、月経不順や不妊で悩む方の中には多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方がいますが、このような方のホルモン値はLH値がFSHに比べて上昇することが特徴であるため、PCOSの診断のためにもLHは測定されます。
プロラクチンは母乳を出すために妊娠~出産・授乳期に高くなるホルモンです。妊娠していないのにプロラクチンが高値になると、乳汁分泌がみられたり、乳房緊満があらわれます。また排卵が抑制されるので、無月経、月経不順や黄体機能不全などの症状がでて、不妊の原因にもなります。
妊娠以外の時期にプロラクチンが高値になることを高プロラクチン血症といいます。その原因としては、脳下垂体の腫瘍(しゅよう)などが考えられますが、睡眠薬や抗うつ剤の服用でプロラクチン値が高くなることもあります。
最近産婦人科、特に不妊領域で注目されているホルモンです。AMH(アンチミュラーリアンホルモン)は卵巣の中の卵子数を反映するので、卵巣年齢、卵巣予備能のチェックに使用されます。閉経すればゼロになるので、不妊の方でAMHが低い時は治療を急ぐことになります。
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山王病院(東京都) 名誉病院長
堤 治 先生の所属医療機関
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