インタビュー

子宮筋腫の治療方法―ホルモン療法、手術療法

子宮筋腫の治療方法―ホルモン療法、手術療法
堤 治 先生

山王病院(東京都) 名誉病院長

堤 治 先生

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この記事の最終更新は2015年05月21日です。

子宮筋腫は婦人科良性腫瘍の中では最もよくみられるもので、3人にひとりは持っているとも言われています。ただし良性の腫瘍とは言っても、大きくなってしまうとひどい月経痛を引き起こしたり、妊娠・分娩時の妨げになったりします。また、個人のライフスタイルや症状に合わせて治療法の選択が難しいのも子宮筋腫の特徴です。

「子宮筋腫になったらどうすればいいの?」「治療はどんな時するの?」という基本的なことがらについて、婦人科の腹腔鏡手術の第一人者・堤先生にうかがいました。

子宮筋腫は症状がない場合には特に治療をせずに、経過を観察します。
日常生活に支障をきたすような症状があり、鎮痛剤だけでは十分な症状緩和ができない場合、ホルモン療法が行われます。そして、ホルモン療法でも十分な効果を得られなければ、最終的には手術療法が実施されることが多くなります。

また、まだ問題点は多いですが、近年保険適応になった子宮動脈塞栓術や、保険適応外のFUS(集束超音波治療)という方法もあります。

ホルモン療法とは薬剤を用いて生体内のホルモン作用を増やしたり、減らしたりする治療です。子宮筋腫では女性ホルモンの作用を減らすことが大切です。

子宮筋腫が過多月経月経困難症を引き起こしている場合は、低用量ピルが用いられます。低用量ピルの内服により排卵が抑制されることで子宮内膜が薄くなり、月経量は少なく、また痛みも軽くなります。20代から30代の方で上記の症状があり、なおかつ妊娠希望がない方が選択されることが多いです。ただし筋腫自体は大きくなることもあり、一時しのぎ的な治療といえます。

2014年からは子宮内避妊用具の一つであるIUSも過多月経や月経困難症に対して使用できるようになりました。IUSの持続的な黄体ホルモン放出作用により子宮内膜増殖が抑制され、結果として月経時の苦痛を緩和することができます。ピルの内服ができない方や内服が面倒という方に適している方法です。一方で、妊娠出産の経験がない方には使いにくかったり、感染などのリスクがあるという欠点もあります。

GnRHアゴニストというホルモン療法は卵巣機能を一時的に停止させる治療です。結果として閉経と似た状況になるため偽閉経療法ともいわれます。鼻から、または皮下注射により投与されます。月経がなくなるため、月経困難症や貧血の改善効果は高いです。ただし無視できない副作用として更年期症状が起こることがあります。

また、長期的な使用は骨粗鬆症を引き起こすため、長くても半年程度が目安とされています。治療を終了すると月経が再開し、症状も戻ってきてしまいます。このため、この治療を行う方は「症状があり、あと少しで閉経しそうな」40代後半の方に選択されやすい傾向があります。また、偽閉経療法には子宮筋腫を小さくする効果や子宮の内膜を薄くする効果があります。このため、手術操作を容易にするために手術前に偽閉経療法を行うことがあります。

患者さんが将来の妊娠を希望していて、さらに下記いずれかにあてはまる方は子宮筋腫核出術を検討します。まず、ホルモン療法など、薬を飲むだけでは症状がコントロールできないほど重症な場合。または子宮筋腫が不妊や流産の原因になっている場合。そして症状はそこまで強くなくても、将来の妊娠のためを考えると子宮筋腫をとっておいたほうがよいと考えられる場合です。

子宮筋腫核出術とは、将来の妊娠出産のために子宮を残し(機能温存手術)、子宮筋腫だけをとる手術を言います。開腹でおこなう施設もありますが、患者の負担を減らす腹腔鏡を用いる術式が普及しています。

子宮筋腫核出術と子宮摘出術
子宮筋腫核出術と子宮摘出術

ただし、子宮内に筋腫ができる粘膜下子宮筋腫が不妊症の原因になっている場合には、子宮鏡を用いる術式が実施されます。子宮鏡とは、膣から子宮内を直接みるためのピストル型のカメラです。子宮鏡と電気メスが一体化した装置を使えば膣内で筋腫を切除できるため、おなかに傷を残すことなく筋腫を切除できます。

子宮鏡手術
子宮鏡手術

子宮摘出術とは、子宮を全て取ってしまうことです(根治手術)。子宮の機能を温存する子宮筋腫核出術では、一度は治療に成功してもまた再発してしまうことがあります。
妊娠はできなくなってしまいますが、病気を根治するため、あるいは将来の子宮がん発生を防ぐという意味では、子宮摘出術がもっとも確実な方法です。
子宮摘出術を開腹でおこなう施設もありますが、患者の負担を減らす腹腔鏡を用いる術式が普及しつつあります。

子宮へ流れる血液量を減らすことにより、子宮筋腫を小さくする治療法です。開腹が必要なく、患者さんの負担が小さいのが利点で、近年、保険適応になりました。

しかし現在はまだ歴史が浅く、さまざまな問題点があります。子宮に流れる血液量が減るので不妊や流産のリスクが高くなり、また、妊娠できた場合でも胎盤に血液が運ばれにくいので赤ちゃんが発育しにくいという心配も出てきます。この手術後に無事に出産された方もいるようですが、妊娠を希望される方には基本的にはおすすめできません。

FUSとは、超音波を収束して、筋腫を変性させて退縮させようという治療です。しかしまだ治療成績の件数が少なく試験的な治療法で、保険が適応されていない状況です。

FUSが有効な場合もあると思いますが、不妊症の患者さんの場合、その後子宮の機能が低下するというデータもあるので、慎重に判断する必要があります。

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