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卵巣が腫れる原因とは〜女性ホルモンの影響と考えられる病気の治療法〜

卵巣が腫れる原因とは〜女性ホルモンの影響と考えられる病気の治療法〜
堤 治 先生

山王病院(東京都) 名誉病院長

堤 治 先生

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卵巣は子宮の両側にあるそらまめのような形をした器官で、女性ホルモンの分泌や排卵をする臓器です。腹部の奥にあり“沈黙の臓器”ともいわれるため、多少の腫れでは症状が出ないことがあります。そのため、検診などで指摘されて初めて卵巣が腫れていると気づく方が少なくありません。

ここでは卵巣の腫れについて、原因、病院での治療法を分かりやすくご紹介します。

卵巣の腫れの原因は、おおまかに“腫瘍”“女性ホルモンの影響”“炎症”の三つに分類されます。

卵巣の腫れの原因として多いのは“腫瘍”です。卵巣腫瘍にはさまざまなタイプのものがありますが、9割以上は良性の腫瘍であり、特に卵巣内に水や古い血液、脂肪などがたまることが原因の“卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)”であることが多いといわれています。卵巣嚢腫は内容物によって“漿(しょう)液性嚢腫(えきせいのうしゅ)”“粘液性嚢腫”“皮様嚢腫(奇形腫)”“チョコレート嚢腫”などに分けられます。

卵巣腫瘍の9割以上は良性とはいえ、悪性の可能性がないというわけではありません。このため、検診などで卵巣腫瘍が発見された場合は、CTやMRIなどの画像検査、血液検査による腫瘍マーカーの測定を行って良性、悪性の診断を行います。

小さな良性腫瘍の場合は、体に悪影響を与えることはないので治療の必要はなく、定期的な経過観察を行います。

しかし、大きさが4~5㎝を超えると、卵巣の根元がねじれる“茎捻転”を起こす可能性があるため、摘出手術が必要になることがあります。また、大きさが4~5㎝以下の場合でも、腹痛や腰痛、頻尿、便秘などの症状が引き起こされている場合は、手術を検討します。さらに、画像検査や血液検査で良性か悪性かはっきりと区別できない場合も手術をすることがあります。

現在では開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術で嚢腫の部分だけをくり抜く手術も可能で、むしろ主流です。卵巣を嚢腫の部分だけを切除するか、全摘出するか、卵巣と卵管を併せて摘出するか(子宮附属器の摘出)は、嚢腫の状態や患者の年齢、希望などによって変わります。閉経後の50歳以上の女性では、卵巣と卵管を摘出することが多いです。

女性ホルモンの分泌で卵巣が腫れることもあります。一つは生理の周期に伴う腫れです。排卵後に、卵巣の中に卵子を取り巻いていた卵胞から“黄体”が形成されて女性ホルモンを分泌すると、それに関連して、卵巣が腫れたようになることがあります(黄体嚢胞ないしルテイン嚢胞<機能性卵巣嚢胞>)。その際、おなかに張りを感じることや腹痛を伴う場合があります。

ルテイン嚢胞がよく見られるのは、妊娠初期です。排卵後に形成された黄体が、妊娠成立によって分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンに刺激されることが原因のひとつと考えられています。

ルテイン嚢胞は、hCG分泌のピークである妊娠10週頃に腫れもピークとなり、それ以降hCG分泌が落ち着くと腫れも縮小します。

ルテイン嚢胞は自然に消退するため、治療の必要はなく、経過観察が行われます。

卵巣の腫れは“卵巣炎”が原因のこともあります。卵巣炎は卵管の炎症が卵巣にまで波及することによって引き起こされることがあり、その原因の多くが性行為によって感染するクラミジアや淋菌です。女性はこれらの性感染症にかかっても症状が現れにくいため、発見が遅れることもあります。気づいたときにはかなり症状が進行していて、卵巣を摘出しなければならない場合もあります。

卵巣炎は、卵管や卵巣と周辺組織との癒着が生じ、将来的に不妊症の原因になることがあるので、抗菌薬などによる治療がなされます。また、腫れの種類にもよりますが、それぞれの状態に合わせて3か月~1年おきに定期的に検査を受けることを検討しましょう。

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