
現在の卵巣がんの治療は、手術と抗がん剤治療が主体となっています。国際医療福祉大学病院副院長、産婦人科部長の大和田倫孝先生にお話をうかがいます。
一般的に、I 期のがんではまず手術で根治を目指します。その後、再発リスクの高い場合には再発予防のために抗がん剤治療を行います。ですから、I期で見つかった方のなかには手術のみで治療を終えられる方もいらっしゃいます。Ⅱ期~IV期のがんでは、手術と抗がん剤の両方を組み合わせて治療を行います。
卵巣がんでは、両側の卵巣・卵管(付属器)の摘出、子宮の摘出、大網の切除が基本手術です。これに加えて、がんの広がりを評価するために、腹水または腹腔洗浄細胞診、腹腔内のさまざまな場所からの生検、および後腹膜リンパ節の生検または郭清(切除すること)を行い、可能な限り腫瘍を摘出します。
卵巣がんの手術でもっとも重要なことは、いかにがん病巣を取り除くかということであり、手術の完遂度が生命予後に大きく関わります。
後腹膜リンパ節郭清を加えた手術後に、下肢リンパ浮腫(むくみ)の起こる頻度は一時的には20~30%程度ですが、そのなかで症状が治まらず、長く下肢リンパ浮腫を患ってしまう方は少数です。浮腫は、足元から流れてくるリンパ液が鼠径部で妨げられるために起きます。
完治を目指すならば、リンパ節の切除を避けるのは難しいことですが、リンパの流れをよくするために、手術の際に後腹膜を縫合せずにリンパ液がそのまま体内に流れるようにする方法があります。リンパは体内に流れ出ても健康上の問題が起きるようなことはありません。
また、足の付け根に近い部位の大腿上リンパ節を残すこともあります。先に述べたように鼠径部でリンパの流れが妨げられる結果浮腫が起こるため、その部分のリンパ節を残すことで流れを止めないようにすることができ、浮腫を予防できるといわれています。しかしながら根治性との問題もあり、慎重に対応する必要があります。なお、下肢の細静脈とリンパ管を吻合する顕微鏡手術も試みられ、QOL に寄与したとの報告もあります。
卵巣癌において主に使われるのはTC療法で、3~4週間に1回、パクリタキセルとカルボプラチンという2つの抗がん剤の点滴静脈注射を行い、それを3~6サイクル行います。通常は手術後に実施しますが、手術時にできるだけがんを取り除くために術前に行う(術前化学療法)という選択肢もあり、これにより患者さんの治療成績が改善されたとする報告もあります。
なお、抗がん剤は組織型により有効性が異なり、漿液性腺癌や類内膜腺癌では有効性が高く、粘液性腺癌や明細胞腺癌では有効性が低いとされています。また、若年に多い胚細胞腫瘍では一般に有効性が高いとされています。
なお、卵巣がんの治療方針は、「卵巣がん治療ガイドライン」に沿って立案されます。とくに初回治療では患者さんに特別な理由がない限り、病院によって、または医師によって違いが出ることはほとんどありません。しかしながら、再発などでは「ガイドライン」でも治療の選択肢が多くなり、そのため施設によって治療法が異なることはあります。
術前化学療法の目的は、手術前にがんをできるだけ小さくし、手術でできるだけがんを取り除くことです。しかしながら抗がん剤治療時には組織型がわからないことが最大の欠点であり、粘液性腺癌や明細胞腺癌などでは抗がん剤が思うように効かないことがあります。その場合、抗がん剤を始めてから手術までの期間が長引くことになり、その間にがんが進行してしまう恐れがあるので、術前化学療法を選択する場合には慎重に対応することが必要です。
国際医療福祉大学病院 産婦人科部長、国際医療福祉大学 教授
周辺で卵巣がんの実績がある医師
国際医療福祉大学三田病院 婦人科部長、国際医療福祉大学 産婦人科学教授
内科、血液内科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、脳神経内科、血管外科、脊椎脊髄外科、放射線診断科、放射線治療科、頭頸部外科、病理診断科
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