卵巣がんは初期に症状を認めにくく、診断される際には相当に進行している場合が多いがんです。そのため、治療は手術に加えて抗がん剤が併用されることが大半です。卵巣がんの要点について、山王病院院長 堤治先生にうかがいました。
卵巣は、とても腫瘍のできやすい器官といわれています。卵巣にできる腫瘍は、「卵巣嚢腫」と「充実性腫瘍」の2つに大きく分けることができます。
卵巣嚢腫では、腫瘍の中に液体状のものがたまっており、良性のものが多いです。卵巣腫瘍の約85%がこのタイプです。一方、充実性腫瘍はかたいコブ状のかたまりで、その80%が悪性です。卵巣嚢腫・充実性腫瘍ともに「良性」「悪性」その間の「境界悪性」があり、悪性のものを卵巣がんと呼んでいます。
卵巣がんには年間9000人程度が罹患し、死亡数は年間4500人を超えていて、罹患した場合の死亡率が非常に高い病気として知られています。卵巣がんは最近増加傾向にあり、発症の若年化も指摘されています。
卵巣がんになりやすい方として挙げられるのは、以下のような方です。
また、卵巣は沈黙の臓器ともいわれ、卵巣がんは初期には症状がないことが多いため、進行した状態で発見されることが多いのが特徴です。進行した段階で出てくる症状としては、以下が挙げられます。
卵巣がんは、先述したように症状がないことが多いため、妊婦検診や子宮がん検診、他の病気での受診時などに偶然発見されることが多い病気です。
卵巣がんが疑われる際に行われる検査としては、以下があります。
卵巣がんは、どれだけ進行しているかによってⅠ期からⅣ期に分類されます。
臨床進行期分類の定義
卵巣がんの治療はまず手術を行い、たとえ完全に摘出できなくても出来るだけ腫瘍を取り除き、術後に化学療法(抗がん剤を用いた治療のこと)を行うのが基本です。卵巣がんは悪性腫瘍のうちでも化学療法がよく効く疾患ですが、がんの種類によって効く薬が違います。たとえ手術ですべて取り除くことが不可能でも手術によってがんの種類を診断し、抗がん剤を選択する必要があります。
卵巣がんの手術は、悪性の度合いか、またその大きさや形状などにより術式を選択します。そして原則として、子宮、卵巣を取ります。ただし、どうしても子供が欲しい場合は、Ⅰ期で比較的悪性度の低い限り、温存できることもあります。しかしそれ以上の進行にしたものについては、子宮と卵巣を取らざるを得ません。
卵巣がんは治療により寛解(臨床的にがんがなくなったと判断される状態)に達しても再発する例が少なくないので、厳重なフォローアップが必要です。
一般的には、治療終了後1年間は1か月ごと、2年目は3か月ごと、3年目は4か月ごと、4~5年目は6か月ごと、それ以後は1年に1回の診察とし、内診、エコー検査、腫瘍マーカーの測定を行い、これらに異常があればCTやMRI検査を行います。治療時の進行期がIII期以上の例で再発のリスクが高いと考える場合は、再発の徴候がなくても治療終了後1~2年間は3~4ヶ月ごとに念押しのための化学療法(cyclic chemotherapy)を行う場合もあります。
卵巣がんは再発も多いのですが、一方では化学療法によく反応しますので、定期的にきちんとフォローアップし、再発をできるだけ早くみつけることが大切です。
山王病院(東京都) 名誉病院長
堤 治 先生の所属医療機関
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