
卵巣がんとは、卵巣にできるがんのことです。卵巣に腫瘍ができた場合、全てががんと診断されるわけではなく、良性または悪性、その中間にあたる境界悪性に分類されます。
卵巣腫瘍は発生部位によっていくつかのタイプに分けられますが、卵巣がんと診断されるものの多くは、卵巣の表面を覆う細胞から発生する上皮性腫瘍と呼ばれるタイプのものです。
それでは、卵巣がんにはどのような症状が見られるのでしょうか。痛みなどの症状はあるのでしょうか。
卵巣がんで生じる痛みとして考えられるものには、卵巣がんに由来して生じるものと卵巣がんがほかの部位に転移して生じるものがあります。
初期の卵巣がんは自覚症状に乏しく、明らかな痛みを伴わないことも少なくありません。
卵巣がんに由来する痛みとして考えられるものには、“腹水の貯留に伴う痛み”、“腫瘍が大きくなることで周囲の臓器と癒着したり圧迫したりすることによって起きる痛み”、比較的まれですが、“卵巣が捻転(ねじれること)や破裂することによる痛み”があります。
腹水とはお腹の中に水がたまる症状のことで、進行した卵巣がんでよく見られます。腹水が周りの臓器を圧迫することで、腹痛や腰痛などの痛みを感じることがあります。体重が増える、お腹周りがきつくなるなどの症状も同時に認められることが多いです。
良性・悪性を問わず、卵巣腫瘍が大きくなった場合は卵巣がねじれたり、卵巣が破裂したりすることがあります。これらが原因になっている場合、非常に激しい痛みが生じます。ただし、このような症状が起こる頻度はあまり高くはありません。
上記のほかにも、卵巣がんが大きくなって周りの臓器や神経を圧迫することによる痛みや消化器のはたらきが低下し、消化管内にガスがたまることによる痛みなどがあります。さらに進行し、がんが広がるために消化管と癒着をして腸閉塞の状態になると、ガスや便が出なくなることによる激しい痛みを生じることもあります。
卵巣がんが進行すると、遠く離れた組織や臓器にがんが転移することがあります。このうち、痛みとして症状が現れやすいものが骨への転移(骨転移)です。
骨転移の代表的な症状は痛みや骨折などですが、骨転移の初期では特に痛みを感じなかったり、違和感程度の痛みであったりすることも少なくありません。
卵巣がんは自覚症状が現れにくいがんのひとつで、かなり進行しないと痛みの症状が現れません。卵巣がんの症状には痛み以外にも以下のようなものがあります。
など
これらの症状は、痛みと同様にある程度進行したがんで現れやすいといわれています。女性器疾患の症状としてイメージしやすい不正出血は、卵巣がんではほとんど見られません。
なお、卵巣がんによる症状は患者さんによって異なり、特定の症状をもとに卵巣がんだと決めつけることはできません。これらの症状があるからといって過度に心配するのではなく、気になる症状がある場合は医療機関を受診し、正しい診断を受けることが大切です。
女性で下腹部の痛みが続く場合は、卵巣などの臓器の病気を疑うこともあるかもしれません。しかし、初期の卵巣がんは痛みを感じないことも多く、進行した卵巣がんでは痛み以外の症状も同時に見られることがあります。また、さらに進行すると骨転移など卵巣以外の部位で痛みを感じることもあるでしょう。
痛みは卵巣がん以外のさまざまな病気で見られる症状であるため、卵巣がん以外の病気も視野に入れることが大切です。医療機関を受診する際には、痛み以外の症状も含めて医師に説明できるようにしましょう。
また、卵巣がんの一部は遺伝が関係しているといわれており、家族(母親、姉妹、娘)に卵巣がんにかかっている人がいる場合は、卵巣がんのリスクが高くなるといわれています。当てはまる場合は医師に相談したうえで、必要に応じて定期的な検査を受けるようにしましょう。
卵巣がん検診というものはありませんが、会社や自治体の子宮頸がん検診を受診することで、症状がなくても偶然に卵巣の腫れが見つかることがあります。検査をして手術をしたらがんだったということも少なくありません。子宮頸がん検診を定期的に受けることも、卵巣がんの早期発見につなげるコツです。
NTT東日本関東病院 産婦人科部長
杉田 匡聡 先生の所属医療機関
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