やわらぎクリニック 院長、西和医療センター 感染制御内科
北 和也 先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...
徳田 安春 先生
Choosing Wisely
他のがんと比べて、卵巣がんは命に関わるがんであると言えます。卵巣がんを思わせる症状が女性に現れた場合、医師は血液検査で「CA-125」の値を調べ、超音波検査を行う場合が多いですが、これらの検査は卵巣がんに罹患するリスクの低い女性に対しては良い検査ではありません。それはなぜでしょうか?以下にその理由を挙げます。
代わりに、他部位のがんの場合や、肝硬変、骨盤内炎症性疾患、子宮腺筋症や子宮内膜症といった他の疾患がある場合もあります。更に、早期卵巣がんの約半分がCA-125正常値を示します。
また、超音波検査は、卵巣がんの早期発見には不向きです。がんのように見えても実は良性の嚢胞である場合があり、不必要な手術に繋がる恐れもあります。
CA-125検査や超音波検査で異常が発見されたら、医師は多くの場合、卵巣を検査するために手術を行い、通常卵巣は切除されます。ある有名な研究によると、卵巣がん摘出手術を受けた100人中15人の女性に術後合併症を伴ったというデータがあります。腹腔鏡手術はとても小さな穴をあけて手術を行いますが、それでも侵襲を伴うのでリスクはあります。
両側の卵巣を手術で切除することもあります。この場合、早期更年期障害を引き起こす可能性もあり、これにより骨盤骨折、心臓発作、認知症などを引き起こすことも考えられます。
血液検査でCA-125を検査すると200ドル(日本円で約2万4千円)以上、超音波検査は150~250ドル(日本円で約1万8千円〜3万円)程度費用がかかる可能性があります。外科手術は更に費用がかかり、合併症を伴えばより費用が大きくなることになります。手術で卵巣を両側切除した場合は、ホルモン療法を生涯続けなくてはなりませんし、それにもまた費用がかかります。結局この検査は、何かと費用ばかりがかさみ、生活の質を下げた上で、全く利益が無いということもあり得るのです。
また、医師が身体所見で異常を発見した場合に、検査は診断を確定するために有用であることがあります。
卵巣がんのリスクが高い場合は、検査を受けることについて医師と話すべきですが、そのリスクには以下の項目が含まれています。
・卵巣がん、乳癌、子宮がん、大腸がんに罹患したことがある家族がいる。
・BRCA1またはBRCA2遺伝子変異、リンチ症候群等の遺伝的リスク。これらは卵巣がんにおける遺伝的リスクとなります。
卵巣がんに罹ってしまった場合、CA-125検査は有用となります。現在の治療効果を調べるため、または再発をしていないかどうか調べるためにCA-125の値を検査することがあります。
●生活習慣の変化
ほんの少し生活を変えるだけでも卵巣がんのリスクを減らすことができます。
・健康な体重を維持しましょう
・活動的になって、運動をしましょう
・果物や野菜をたくさん摂取し、体に良い食事を摂りましょう
・アボカドや多くの魚などに含まれるオメガ3脂肪酸を沢山摂取しましょう
・ビタミンDを摂取するかどうか医師と相談しましょう
・経口避妊薬の使用も考えましょう
●卵巣がんの症状を知る
卵巣がんの症状としては以下が挙げられます。多くの症状は、急性胃腸炎のような軽症の病気でも見られる、ありふれた症状です。しかし、新しく症状が出た場合、毎日もしくは2日に1回その症状が2週間以上も続く場合は、医師の診察を受けましょう
・腹部や骨盤に圧迫感や痛みがある場合
・腹部膨満感、腹部腫瘤がある場合
・食事が摂れない、またはすぐお腹一杯になる
・吐き気、消化不良、お腹のガスが溜まる、便秘、下痢
・常に疲労感がある
・息苦しい
・多尿
・更年期の不正性器出血、月経過多
●女性が受けるべき検査
医師に以下の検査を受けるべきか尋ねましょう。
・子宮頸部細胞診
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 大阪医科大学医学部医学科 前田広太郎
監修:北 和也、徳田安春先生
やわらぎクリニック 院長、西和医療センター 感染制御内科
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
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