こつばんないえんしょうせいしっかん

骨盤内炎症性疾患

同義語
PID:pelvic inflammatory disease
最終更新日:
2025年03月18日
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2025/03/18
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概要

骨盤内炎症性疾患(PID:pelvic inflammatory disease)は、女性の子宮や子宮頸部(しきゅうけいぶ)、卵巣、卵管に細菌感染を起こす病気の総称です。子宮筋層炎子宮内膜炎、卵管炎、そこから波及した骨盤腹膜炎や卵管卵巣瘍(卵管と卵巣に膿がたまった状態)などが該当します。性行為などによって細菌に感染して発症するとされており、原因となる細菌にはクラミジアや淋菌などが挙げられます。

骨盤内炎症性疾患では、下腹部の痛みや性交時痛、不正出血、膿性の分泌物(おりもの)などの症状がみられます。さらに、重症の場合には、腹部にある臓器をつつむ腹膜という部分にまで感染が広がり、38度を超える発熱や、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うことがあります。一部の患者さんでは異所性妊娠子宮外妊娠)や慢性骨盤痛、不妊症などの後遺症をきたしたりする可能性もあります。

発症を認める場合には、抗菌薬を用いた薬物療法が行われるほか、手術が検討されるケースもあります。

原因

骨盤内炎症性疾患は細菌感染によって発症します。多くの場合、性行為によって複数の細菌に感染し、(ちつ)や子宮頸部から子宮や卵巣へと感染が広がることで発症します。

原因となる細菌のうち、よくみられるのはクラミジアや淋菌です。ほかに細菌性腟症(BV)を引き起こす複数のBV関連細菌やマイコプラズマ、ウレアプラズマ、インフルエンザ菌、A群レンサ球菌、B群レンサ球菌などによって発症することもあります。

このほか、以下に該当する場合には骨盤内炎症性疾患を発症するリスクが高まるといわれています。

  • コンドームを使用しない
  • 複数の性行為パートナーがいる
  • 過去に骨盤内炎症性疾患を発症したことがある
  • 若年である(25歳以下)
  • 腟洗浄器を使用している
  • 妊リング(IUD)を挿入している

症状

骨盤内炎症性疾患では、38度以上の発熱や下腹部痛、不正出血、性の分泌物などの症状がみられます。

症状の程度はさまざまで、軽度の場合や無症状の場合もあります。しかし、感染が広がるにつれて下腹部痛が強くなったり、吐き気や嘔吐を伴ったりすることもあります。さらに、排尿痛や性交時痛がみられるケースもあります。

このほか、クラミジアや淋菌によって卵管炎を発症し、肝臓周囲の組織に炎症が広がって、フィッツ・ヒュー・カーティス症候群と呼ばれる肝周囲炎を合併することもあります。フィッツ・ヒュー・カーティス症候群では右側の上腹部に強い痛みを伴います。さらに、卵管や卵巣に膿が蓄積する卵管卵巣膿瘍(らんかんらんそうのうよう)を合併することもあり、膿瘍が破裂して敗血性ショックと呼ばれる重篤な状態に陥る場合もあります。

また、炎症が治まった後に卵管采(卵管の出口)が閉塞することで、卵管に液体が貯留する卵管留水症を発症することがあります。この状態は不妊症の原因となるほか、通常は無症状ですが、性交時痛や慢性骨盤痛を引き起こすこともあります。

検査・診断

症状から骨盤内炎症性疾患が疑われる場合には、血液検査や感染の原因となる細菌を特定する検査、妊娠検査、画像検査などが行われます。内診も大切で、子宮可動痛がある場合は、子宮周囲の炎症の可能性が高いと判断できます。

血液検査では、感染の兆候がある場合に増加する白血球やCRP*などの数値を確認します。

感染の原因となる細菌を特定するためには、子宮頸管部から採取した検体を元にしたPCR検査(クラミジア、淋菌、マイコプラズマなど)や、腟分泌物を採取して細菌を培養する検査が行われます。また、骨盤内炎症性疾患による症状は異所性妊娠と類似しているケースがあるため、異所性妊娠の可能性を確かめるために尿で妊娠検査を行います。

さらに、必要に応じて腹部超音波検査やMRI検査、腹腔鏡検査が行われることもあります。

なお、これらの検査の結果、クラミジアや淋菌の感染を認める場合には、セックスパートナーも並行して検査と治療を行うことが推奨されます。

*CRP:炎症反応の有無を判定する際に用いる値。細菌やウイルスに感染した際などに、体内の免疫のはたらきが活発になり発熱などの炎症反応が起こるとCRP値が上昇する。

治療

骨盤内炎症性疾患では、症状や検査結果に応じて抗菌薬の内服(飲み薬)、または点滴による薬物療法が行われます。

内服治療が困難な場合や下腹部痛などの症状が強い場合には、原則入院のうえ抗菌薬の点滴治療が行われます。卵管卵巣瘍を認める場合には、卵管や卵巣に貯留した膿を排出する手術(排膿)も併行して行います。また、卵巣に子宮内膜症性嚢胞(子宮内膜組織が卵巣内に発生するもの)がある場合、卵管卵巣膿瘍を形成するリスクが高くなります。そのため、手術による排膿、嚢胞を切除する嚢胞摘出、卵巣や卵管を含む子宮の付属組織を切除する子宮付属器切除、お腹の中(腹腔内)を生理食塩水などで洗い流す腹腔内洗浄が必要になります。

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骨盤内炎症性疾患

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