こつばんこっせつ

骨盤骨折

監修:

概要

骨盤骨折は、交通事故や高所からの転落などで骨盤に大きな外力が加わることによって生じます。

骨盤は寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)と、仙骨、尾骨の3種類の骨から形成され、骨折した部位によって寛骨臼(かんこつきゅう)骨折と骨盤輪(こつばんりん)骨折に分類されます。

イラスト提供:PIXTA

骨盤周辺には消化器、泌尿器、生殖器などの重要な臓器や、多くの神経や血管が存在しています。骨盤骨折が起こると、折れた骨によりこれら各種臓器の機能障害や神経障害、骨盤内出血を生じることもあり、出血が大量になると出血性ショックを引き起こすことがあります。

治療としては出血部位の止血処置のほか、状態に応じて保存療法、または手術療法が行われます。

種類

骨盤骨折は、骨折した部位によって寛骨臼骨折と骨盤輪骨折の2つに分類されます。寛骨臼骨折は、骨盤(寛骨)と大腿(だいたい)骨がつながる股関節(こかんせつ)の一部が折れた状態です。骨盤輪骨折は寛骨臼を除いた骨盤骨折です。

原因

骨盤骨折は、主に交通事故や高所からの転落などで骨盤に大きな外力が加わることによって生じます。

また、スポーツ中に筋肉と骨の付着部分が剥がれ、骨盤剥離(はくり)折を生じることがあるほか、高齢の方では骨粗鬆症が原因となり、軽微な外力で生じることもあります。

症状

骨盤骨折が生じると、座ったり、自分で体を動かしたりすることが困難なほど強い痛みが現れます。また、骨盤周辺にはさまざまな臓器や血管があり、これらが損傷され大量出血が生じると出血性ショックを引き起こすことがあります。

骨粗鬆症を原因とする骨盤骨折では、自覚症状がなく骨折しているケースもあります。

検査・診断

骨盤骨折が疑われる場合、X線検査で骨の状態を確認して診断します。また、骨盤は複雑な形状をしているため、X線検査では確認できない詳細な情報を得るためにCT検査を行い、治療方針を決定します。骨盤内の臓器や血管の損傷が疑われる場合は、造影剤を用いたCT検査が行われます。

治療

骨盤内の大量出血を伴う場合には止血処置を行います。骨盤周囲の圧迫や骨折部分を仮固定する器具などにより出血量を抑えた後、損傷した血管を塞ぎ、出血性ショックを起こしている場合には輸液・輸血を行います。

骨盤内の臓器にも損傷が及んでいる場合には、各診療科の医師と連携をとりながら処置を行います。特に骨盤輪骨折は臓器損傷や大量出血による出血性ショックを伴うケースが少なくないため、合併症に応じた処置が必要です。

骨折部位の治療方法には、保存療法と手術療法があり、骨折部位や骨のずれの状態などから選択されます。

保存療法

折れた骨のズレがほとんどないか許容範囲内の場合、また高齢者における骨粗鬆症による骨盤骨折の場合には保存療法が選択されます。安静に過ごした後、車椅子移動、松葉杖歩行といった順に、骨のつき具合、安定性を確認しながら、徐々に負荷をかけていきます。

手術療法

骨折部の骨のズレが大きい場合や不安定な場合には手術療法が選択されます。特に寛骨臼骨折の場合、折れた骨を元の位置に戻すのが不十分だと股関節に負担がかかり、後に変形性股関節症へと発展する可能性があるため、正しい位置へ戻すことが重要となります。手術治療では折れた骨を正しい位置に戻し、スクリュー(ネジ)やプレートなどの人工物を用いて固定します。なお、寛骨臼骨折で折れた骨を元の位置に戻すのが困難な場合には人工関節による置換も検討されます。

最終更新日:
2025年05月16日
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2025/05/16
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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