胃・十二指腸

急性胃腸炎(きゅうせいいちょうえん)

急性胃腸炎とは

急性胃腸炎とは、胃腸の粘膜が何かしらの原因により障害をきたし、粘膜が炎症を起こしている状態をいいます。炎症を起こした粘膜は腫れ、急性発症の下痢や嘔気・嘔吐、腹痛を伴うようになります。胃腸の粘膜に障害を起こす原因にはさまざまなものがありますが、ウイルス性をはじめとした感染症が圧倒的に多いです。その他、薬剤やアレルギーなどさまざまなものが含まれます。一般的に急性胃腸炎というと、感染性胃腸炎を指すことが多いです。

世界的にみると、5歳未満のお子さんの死因として急性胃腸炎は主要原因の一つに挙げられます。特に、発展途上国を中心に胃腸炎を原因として亡くなっていることが報告されています。清潔な飲料水の確保、手洗いうがいの徹底等を通して、死亡率の改善を図ることができると考えられており、世界的なレベルでみるととても重大なインパクトを含む疾患です。

日本においては衛生環境が整っており、特殊な病原体による急性胃腸炎にかかるリスクは少ないです。また、下痢や嘔吐等の急性胃腸炎の症状を呈した場合も、適切な治療を提供できる医療機関が整備されており、致死的な予後になることは少ないです。それでもやはり、乳幼児を中心に流行することの多いロタウイルスに伴う胃腸炎の症状は強く、点滴や入院が必要になることもあります。その他、腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群は、けいれんや腎不全を起こすこともある病気です。このように、急性胃腸炎に伴う危険性は、日本でも看過できるものではありません。

原因

急性胃腸炎の原因は、感染性のものがその多くを占めています。その他、薬剤やアレルギー等も含まれます。感染性のものはさらに、(1)ウイルス性、(2)細菌性、(3)その他、に分類することができます。

(1)ウイルス性胃腸炎

小児の下痢の原因は、大半がウイルスの感染によるものであり、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが代表的です。特にノロウイルスとロタウイルスが主要原因となっています。ロタウイルスは5歳未満のお子さんにおいて、ほぼ全員が感染すると考えられています。年齢が大きくなるにつれロタウイルスに伴う急性胃腸炎の頻度は少なくなり、ノロウイルスによるものがその大半を占めるようになります。

(2)細菌性胃腸炎

乳児期以降の小児や成人では細菌感染にともなう急性胃腸炎にかかることがあります。生卵や生肉の摂取によって感染が成立することから、食中毒の一種として捉えることも可能です。食中毒の原因はカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌といった細菌です。それぞれ、鶏肉、生卵、牛肉、仕出し弁当などを介して食中毒として発生することがあります。

(3)その他の感染性胃腸炎

なかにはウイルス性と細菌性以外にも急性胃腸炎を引き起こす感染症があります。たとえば、ランブル鞭毛虫(べんもうちゅう)、クリプトスポリジウム等を挙げることができます。

症状

急性胃腸炎に伴う症状は、嘔気・嘔吐、下痢、腹痛を挙げることができます。通常は、嘔気や嘔吐などの口に近い側の症状が突然出現することから、急性胃腸炎は発症します。その後、時間経過と共に、下痢や腹痛などより肛門側に近い症状が出現するようになります。その他、腹部の張り、腹部膨満感、食欲不振を訴える方もいらっしゃいます。また、脱水の程度が強くなると、小児であれば不機嫌になる、ぐったりした感じが強いなどがみられるようになります。成人であれば、ふらつく、だるいなどの症状を訴える方もいます。

細菌性胃腸炎では、原因となる細菌に応じた特徴的な合併症が生じることもあり、それに関連した症状が出現することもあります。たとえば、カンピロバクターでは、ギランバレー症候群という合併症を発生することがあります。この場合は手足の動かしにくさを感じるようになることもあります。またO157に代表される腸管出血性大腸菌においては、溶血性尿毒症症候群を発症することがあります。この合併症では血便や貧血症状、出血、けいれん、意識障害などがみられることがあります。

検査・診断

急性胃腸炎の診断は、臨床経過や身体診察からされることが多いです。脱水の症状が強いときや合併症を伴っているとき、食中毒等の集団感染が疑われるなどの状況があれば、検査にて確定診断が行われることもあります。

ノロウイルスやロタウイルスは、便を用いた迅速検査が可能です。細菌性急性胃腸炎であれば、糞便を顕微鏡で確認したり、培養をしたりすることで、原因となっている細菌を同定します。また、脱水の程度を評価するための血液検査/尿検査が行われることもあります。

なお、腸管出血性大腸菌が疑われる場合には、ベロ毒素と呼ばれる毒素を検査することもあります。また貧血、血小板、腎機能が障害を評価するための血液検査を行うこともあります。

治療

水分・糖分・ミネラルを適切に摂取しながら、脱水を避けることが治療の第一目標になります。急性胃腸炎では、嘔気が強く水分摂取がままならないときもあるため、極少量ずつ、頻回に水分摂取をすることが大切です。食事は固形物に限る必要はありません。経口イオン水と呼ばれる商品が市販されており、これらを摂取することも有効な手段です。どうしても口から水分が摂取できず、脱水の程度が強い場合には、点滴にて水分補給がされます。

水分摂取方法の工夫以外に、内服薬が検討されることもあります。水分摂取や下痢の症状をサポートする目的で、制吐剤や整腸剤が処方されることもあります。下痢止めは、感染性胃腸炎においては積極的に使用されることはありません。抗生物質については、細菌性胃腸炎において必ずしも適応になるわけではありません。症状や合併症の有無等を適宜判断しながら、抗生物質が必要かどうかを判断します。

また合併症を併発したときには、より合併症に重点を置いた治療法が選択されます。たとえば、溶血性尿毒症症候群であれば、輸血、血漿交換など、より集学的な治療方法が選択されることもあります。

胃腸炎の発生を抑えるためには、感染予防策もとても大切です。ノロウイルスやロタウイルスは感染力が強いことに加えて、アルコール消毒では不十分です。塩素系消毒液の使用も考慮するようにしましょう。

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