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急性胃腸炎はどうやってうつるの?〜種類によっては人から人へうつる可能性がある〜

急性胃腸炎はどうやってうつるの?〜種類によっては人から人へうつる可能性がある〜
伊藤 友弥 先生

あいち小児保健医療総合センター 救急科 医長

伊藤 友弥 先生

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胃腸炎は、胃や小腸、大腸の粘膜に炎症が生じる病気で、原因や重症度などによってさまざまな種類に分けられます。

なかでも急性胃腸炎とは、腹痛・下痢・吐き気・嘔吐・発熱などの強い症状が急激に生じる胃腸炎のことを指します。主にウイルスや細菌、寄生虫に感染することによって生じますが、まれに薬剤の服用や化学物質の摂取によって生じることもあります。急性胃腸炎は子どもから大人までかかる可能性があり、原因によって人にうつることもあるため注意が必要です。

急性胃腸炎の大部分はウイルス・細菌・寄生虫の感染を原因とする“感染性胃腸炎”といわれており、その種類によっては人から人へうつる可能性があります。

特にノロウイルス・ロタウイルス・腸管アデノウイルスなどのウイルス性胃腸炎は、人から人へうつる確率の高い胃腸炎として知られています。そのため、急性胃腸炎にかかった場合は人にうつさないために感染対策を徹底することが大切です。

感染性の急性胃腸炎の主な感染経路は、口から原因となる病原体が入ることによる“経口感染”です。感染性胃腸炎では、同じ経口感染でも人からの感染と食品からの感染の2つに大別できます。

感染性胃腸炎は、感染者が排出する病原体が何らかの原因で他者の口に入ることによってうつることがあります。

たとえば下痢や嘔吐などの症状があると、その糞便や嘔吐物には病原体が含まれている可能性があります。そのため、これらを処理する際に他者が素手で触れ、その後の手洗いが十分でない場合、手指を介して原因物質が口に入り感染してしまうことがあります。また、糞便や嘔吐物を長期間処理せず乾燥させてしまうと、ほこりや(ちり)と一緒に原因物質が舞い、他者がその空気を吸い込むことで感染することもあります。

ほかにも、感染者の手洗いが不十分な場合は病原体が手に付着している可能性があるため、感染者が触ったドアノブやスイッチ、食品などに他者が触れたり食べたりすることによって、手指や口を介してうつるケースも考えられます。

一方で、もともと汚染されていた食品を不十分な調理で食べてしまうことで感染する、いわゆる食中毒によって感染することもあります。

一般に知られているのは、生カキなどの二枚貝が挙げられます。これにはノロウイルスが含まれていることがあり、食べることによって感染性胃腸炎にかかることがあります。また、発展途上国などを中心に汚染された水を飲むことによって感染性胃腸炎にかかることもあります。

感染性の急性胃腸炎の予防方法としては、こまめな手洗いが重要であるほか、感染経路別に以下のような工夫をとるとよいでしょう。

人からの感染を予防するには、こまめな手洗いのほか、感染者の糞便や嘔吐物に触れないことが大切です。

自宅に感染者がいる場合などで糞便や嘔吐物の処理が必要な場合には、マスクや手袋を着用して処理を行い、処理に使った道具は密閉して捨てましょう。また、ドアノブやスイッチなど手で触れる部分は次亜塩素酸ナトリウムで拭き取り消毒をするとよいでしょう。

食品の保存・調理に注意が必要です。食品は新鮮なものを購入し、保存時は常温ではなく冷蔵・冷凍しておきましょう。

また、調理をする際は手洗いを行い、食品は中心部まで十分に加熱しましょう。なお、古い食品は食べずに処分することも大切です。

子どもの罹患率が高いロタウイルスによる胃腸炎は、経口のロタウイルスワクチンを接種することによって予防が期待できます。

ロタウイルスワクチンは定期接種のワクチンとして生後6週以降の乳児に接種が推奨されており、感染の予防になるほか、感染した際の重症化を防ぐことが可能です。

急性胃腸炎は自然治癒することもありますが、原因や重症度によっては治療が必要な場合もあるため、気になる症状がある場合には病院の受診を検討しましょう。

また、下痢や嘔吐などの症状が続くと水分が多く排出され、脱水症状が起こる危険があります。そのため、水分補給を十分に行いましょう。ただし、吐き気により口から水が飲めない場合は、早急に病院の受診を検討しましょう。

なお、下痢の症状が強い場合でも自己判断で下痢止め薬を使うことは控えましょう。下痢止め薬を服用すると原因物質の排出が遅れ、症状が長引いてしまう可能性があるためです。

急性胃腸炎の多くは感染性胃腸炎といわれており、なかでもウイルス性胃腸炎は人から人へうつる確率が高いといわれています。

ノロウイルスが流行しやすい冬場やロタウイルスが流行しやすい春先などは、手洗いをはじめとする予防を慣行しましょう。また、汚染された食品により胃腸炎が生じることもあるため、年間を通して食中毒の予防に努めましょう。

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