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子どもの便秘は何が原因なの?~日常生活でできる対策と受診の目安~

子どもの便秘は何が原因なの?~日常生活でできる対策と受診の目安~
伊藤 友弥 先生

あいち小児保健医療総合センター 救急科 医長

伊藤 友弥 先生

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便秘とは、排便が数日に1回程度に減少する、毎日排便があっても少量しか出ない、便が硬いなど、排便がスムーズに行われない状態を指します。便秘の明確な定義はなく、排便の頻度や量には個人差があります。便に関する症状以外に、おなかの張り、腹痛、食欲不振、吐き気や嘔吐などの症状が見られることもあります。

子どもにおける便秘の原因の多くは偏食や小食、ストレスといった生活習慣によるものです。しかし、中には病気が原因になっている場合もあるため注意が必要です。

子どもも大人と同様に、偏食や小食といった不適当な食事、不規則な生活、水分の摂取不足、ストレスなどの生活習慣によって便秘になることが多くあります。ストレスにおいては、通学の開始など環境が変化する時期に便秘になりやすいといわれています。

排便する際にはおなかに力を入れていきみ、肛門(こうもん)を開いて便を出しますが、小さな子どもはこの排便機能が未熟で小学校高学年になってようやく大人並みになるとされています。そのため、年齢によっては排便機能が未発達なことが原因で便秘になっている可能性も考えられるでしょう。

また、便を出すのが怖い、遊びを優先させたいといった気持ちや、漏らして怒られたという記憶、恥ずかしさから自宅以外での排便を我慢してしまうことも便秘の原因となります。

まれではありますが、病気が原因で便秘になることもあります。子どもの便秘の原因として考えられる病気には、甲状腺機能低下症高カリウム血症全身性エリテマトーデスなどがあります。通常このような病気を発症している場合、体のだるさや無気力感、脱力感、関節の痛みなどの病気に応じた全身症状が伴います。

そのほか、ヒルシュスプルング病があります。これは腸管の運動を支配する神経節細胞が生まれつき欠如し、便秘やおなかの張り、吐き気や嘔吐などの症状が現れる病気です。生まれつきの病気のため、ほとんどは新生児期に症状が現れますが、まれに幼児期以降に症状が見られることもあります。

また、特定の薬を服用してから便秘になった場合、薬の副作用による薬剤性便秘が疑われます。便秘を引き起こす可能性のある薬には、てんかんなどで用いる抗けいれん剤、うつ病で用いる抗うつ剤、自律神経の病気で用いる自律神経作用剤、主にがんの痛み止めとして用いる医療麻薬などがあります。便秘になった場合でも、自己判断での薬の中断は危険なので、まずは医師や薬剤師に相談しましょう。

便秘の症状には個人差がありますが、排便の回数が少なく便がコロコロになる、毎日排便はあるが量が少ない、便失禁(下着に便が付いてしまう程度)がある、おなかの張りや腹痛、吐き気や嘔吐、食欲不振、不機嫌などの症状が見られます。

一方、血便や下血がある、排便時に肛門を痛がる、肛門の形がおかしいなどの症状が見られることもあります。この場合、何らかの病気が原因で便秘になっている可能性もあるため注意が必要です。

大腸内に便がたくさん溜まっている場合には、まず浣腸や坐薬、摘便(肛門から指を入れて便を摘出する)、洗腸(肛門からチューブを入れて大腸内を洗う)といった処置を行い、便を除去します。そのうえで、浣腸や坐薬を続けて拡張した大腸が細くなるように促しつつ便の硬さを観察し、便を軟らかくしたり腸の動きを促したりする内服薬で治療を行っていきます。原因となる病気がある場合には、その病気に対する治療が必要です。

なお、内服薬については薬局やドラッグストアでも購入できますが、便秘の原因や薬の種類によっては症状を悪化させてしまう場合があります。そのため、市販薬は医師や薬剤師に相談してから使用したほうがよいでしょう。

便秘は生活習慣が原因となっていることが多いため、規則正しい生活、食事や排便習慣、ストレスの解消など、生活習慣の改善を図る取り組みが大切です。また、水分、食物繊維(海藻類、きのこ類、豆類、穀類、果物など)や乳酸菌をたくさん取るなど、食事から排便を促すことも効果的です。そのほか、おなかをマッサージしたりおなかや腰を温めたりして、腸の動きを活発にしてあげる方法もよいでしょう。マッサージは大腸の走行に添っておへその周りを“の”の字を描くように、ゆっくりとマッサージするのが効果的とされています。

ただし、便秘の原因によっては逆効果となる可能性があるので、改善が見られない場合は病院の受診を検討しましょう。

定期的な排便がなく、おなかが張って痛がる、吐き気や嘔吐がある、便失禁や血便、下血がある、排便時に肛門を痛がる、肛門の形がおかしいなどの症状がある場合、また生活習慣の改善や食事による対策を行っても効果が見られない場合には、早めに小児科や小児外科などへの受診を検討しましょう。夜間や休日に激しい症状が見られる場合は、救急外来の受診や救急車を要請するなどの対応も考えます。

便秘の原因のほとんどは生活習慣によるものですが、慢性化することも少なくなく、慢性化するほど治るのに時間がかかってしまいます。病気が原因で便秘になることもあるため、症状が軽くても便秘が続いている場合は一度病院を受診して医師に相談したほうがよいでしょう。

治療は下剤や内服薬の服用が基本となりますが、便秘の原因に応じた適切な薬を使用しないとかえって症状が悪化することがあります。自己判断で市販薬を使用するのは控え、まずは医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

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