インタビュー

便秘症の定義と診断——診断では患者さんが訴える症状が重要となる

便秘症の定義と診断——診断では患者さんが訴える症状が重要となる
壬生 隆一 先生

みぶ博多駅前クリニック 院長

壬生 隆一 先生

この記事の最終更新は2016年04月14日です。

便秘には個人差があり、本人の訴えだけでは判断が難しいことも少なくありません。便秘になるとおなかが張ったり、痛んだり、食欲がなくなったりと不快な症状を伴うため、正しい診断に基づいて症状を取り除くことが必要です。みぶ博多駅前クリニックの壬生隆一先生に、便秘症の診断についてお話を伺いました。

器質性便秘というのは、大腸がんなど何かの病気によって腸が狭くなったり閉塞したりすることで生じるタイプの便秘です。一方、機能性便秘とは、大腸の働きが低下することで起こる便秘で、タイプによってさらに「弛緩性便秘」「けいれん性便秘」「直腸性便秘」などに分けられます。一般的に便秘というと、多くは機能性便秘のことを指しています。

便秘を診断する上で重要となるのは、まず患者さんが訴える症状です。いつから、どんな症状が起こっているのか、またどんな経過をたどっているのかなどについて詳しく内容を聞くことからはじまります。排便に関しては、毎日出ていても不快感や残便感を感じる人もいれば、数日出なくても平気という人もいるなど個人差が大きいため、判断が難しいことも少なくありません。一般的な便秘の定義は以下のように考えられています。

便秘症の定義

  • 1週間に2回以下と便の回数が少ない
  • 便が硬い
  • 便をうまく排出できない(5分以上を要する)
  • 残便感がある

また、機能性便秘を判別する際には以下のような点に注意することも必要です。

①腹部の状態

  • 腹部膨満感の状態
  • 腹圧の状態

②直腸肛門部の状態

  • 直腸内に便がたまっているか
  • 直腸や肛門が狭くなっていないかどうか
  • いきんだときに肛門がしまるかどうか
  • 直腸や肛門部の腫瘍の有無

③便の腸管移送時間の状態

現在、便秘症の診断には「Roma 3 criteria」という国際的な診断基準が用いられています。この基準では、一過性の便秘症状と区別するため、過去6か月以上、および直近3か月の間に基準で設けられた症状を満たしていること、つまり慢性的に症状が出ていることが必要とされています。Roma 3 criteriaで、客観的に評価できるのは排便回数と便の硬さで、排便回数は週に2回以下、便の硬さは「ブリストルの便形状尺度」を用いて判定されます。その他の症状については患者さんの自覚症状が基準となります。

Roma 3 criteriaによる分類では、便秘は過敏性腸症候群IBS-C)と(機能性)便秘の大きくふたつのタイプに分けられます。しかし、実際のところは判断が難しいこともあって、明確に区別できないのが現状です。ただ、目安としては、過敏性腸症候群の場合は排便の回数や便の硬さが変化するのに対して、(機能性)便秘の場合はあまり状態が変わらずに経過する、ととらえるとわかりやすいと考えます。便秘と過敏性腸症候群の違いは、下記に示すような違いがあります。

Roma 3 criteriaによる(機能性)便秘と過敏性腸症候群(IBS-C)の比較

①(機能的)便秘症

  • 排便時に強い怒責(下腹部に力を入れること)が必要である
  • 便が硬い
  • 残便感がある
  • 排便回数が1週間に2回以下である
  • 軟便ではない
  • 過敏性腸症候群(IBS)ではない

②過敏性腸症候群(IBS-C)

  • 排便により症状が軽快する
  • 排便回数が変化する
  • 便の硬さが変化する
  • 軟便の割合は25%未満である
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