そもそも便秘と便秘症の定義は異なります。便秘は“本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”を指し、一方便秘症は“便秘によってさまざまな症状が現れ、検査・治療が必要となる状態”のことを指します。
便秘症の主な原因には、病気・薬剤・加齢・生活習慣などが関係しています。治療や改善方法は原因・病態によってそれぞれに異なりますが、病気・薬剤・加齢などが原因の場合はその病気の治療や機能を回復するための治療を行うことによって便秘の改善が期待できます。また、便秘症全体では規則正しい排便を促すための食事・生活習慣などを指導されることがあります。
そこで本記事では、便秘症を改善するための食事・生活習慣をテーマに詳しく解説します。
規則正しい排便を促すためには、食事を取るタイミング・量・食事の内容などに注意する必要があります。
1日3食を規則正しく取ることを意識しましょう。毎日の食事をおおよそ決まった時間に取ることによって、腸のはたらきが活発になると考えられています。特に朝食は抜く人もいますが、朝食をしっかりと食べることで胃腸のはたらきがよくなるといわれています。
食事の量が少なすぎると便として排出できるものが少なくなり、便秘症の原因となります。そのため、暴飲・暴食にならない程度で十分量の食事を取ることを意識しましょう。
栄養バランスの取れた食事を目指し、さまざまな食材を食べることを心がけましょう。特にビタミンや脂質などが足りていないと便秘症になりやすいと考えられているため、これらを含む食材を積極的に食事に取り入れるとよいでしょう。
便秘症の分類によっては食物繊維の摂取不足が原因の一つである可能性があります。
具体的には、機能性便秘(腸管の機能異常による便秘)のなかで大腸通過時間が正常にもかかわらず便秘が生じている場合(大腸通過正常型便秘症)は、食物繊維を1日に18〜20g摂取することによって便秘症の症状が改善することが期待されます。食物繊維は野菜やきのこ、海藻、こんにゃくなどに多く含まれます。
一方、便秘症の分類によっては食物繊維を摂取することにより、かえって症状が悪化する恐れのあるものもあるため注意が必要です。具体的には大腸通過時間が遅いために便秘症が生じている場合(大腸通過遅延型便秘症)や、直腸瘤や直腸の感覚が低下するなどの理由によって排便が困難になる便排出障害の場合などです。
このように、便秘症の分類によって改善策となる食事内容にも違いがあります。自己判断で改善方法を行うとより便秘症を悪化させる可能性もあるため、医療機関を受診して診断や生活指導を行うことが肝要です。
食事以外の生活習慣を改善することで便秘症の改善が期待できることもあります。以下では、生活習慣上の改善方法について三つお伝えします。
規則正しい排便を促すためには、生活そのものを規則正しく送る必要があります。
前述のとおり、食事をおおよそ決まった時間に取ることのほか、就寝時間・起床時間を定めることも効果的です。なお、睡眠不足はストレスなどの原因になり便秘症を悪化させる可能性もあるため、十分な睡眠を取ることも心がけましょう。
便意を感じたら我慢せずにトイレに行く習慣を身に着けましょう。便意を我慢する癖がつくと、便反射が鈍くなり便秘が生じやすくなることがあるためです。
また、高齢の方の場合は直腸の知覚が低下して便意を感じにくくなっているケースがあり、このような場合には1日2回朝食・夕食の30分後に便意がなくてもトイレに行くよう指導されることがあります。
場合によっては適度な運動をすることによって腸のはたらきが促進され、便秘症が改善することがあります。ただし、人によって異なるので医師の指導のもと必要に応じて適度な運動習慣を身に着けましょう。
そのほか、ストレスや過労は便秘症を悪化させてしまう可能性があります。そのため、ストレスや疲労を感じたときには、リラックスできる時間を作る、休養を取るなどの工夫をしましょう。
便秘症は原因・病態などによって分類され、治療・改善方法がそれぞれ異なります。そのため、便秘の症状が続く際には自己判断で改善方法を講じずに、まずは消化器内科の受診を検討しましょう。便秘症と診断された場合は、医師の指導のもと適切な改善方法を講じるようにしましょう。
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