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インタビュー

便秘の食事・生活習慣指導と薬物療法

便秘の食事・生活習慣指導と薬物療法
味村 俊樹 先生

自治医科大学 医学部 外科学講座 消化器一般移植外科学部門 教授

味村 俊樹 先生

便秘にはまず規則正しい生活や繊維質の多い食事が大切であるといわれます。しかし、食物繊維が不足しているために起こる便秘は一部でしかなく、その他のタイプでは食物繊維の摂取量を増やしても効果がないということはあまり知られていません。また、下剤の使い方についても誤解が多いといいます。便秘・便失禁など排便機能障害の研究・診療における第一人者である指扇病院副院長・排便機能センター長の味村俊樹先生に便秘の食事・生活習慣指導や薬物療法についてお話をうかがいました。

 

・規則正しい食事時間と睡眠時間

・適度な運動

・水分の摂取

・繊維成分の多い食事(※大腸通過遅延型や便排出障害の便秘には無効)

便秘の治療においては上記のような食事・生活習慣指導が行われることが多いのですが、その中でも特に強調されるのが食物繊維の摂取です。これまでの記事でご紹介した4つのタイプのうち、排便回数減少型1(大腸通過正常型)の場合には、食物繊維の摂取量が少ないために排便回数が減っていますから、必要量の食物繊維を摂ることは大切です。

しかし、排便回数減少型2(大腸通過遅延型)や便排出障害のように体の異常が原因となっている「本物の便秘」の場合には、食物繊維の摂取量を増やしても便秘の症状は改善しません。このことは下記のデータからも明らかです。

慢性便秘の食物繊維の治療に対する臨床応答
慢性便秘の食物繊維の治療に対する臨床応答

・酸化マグネシウム

・センノシド:センナや漢方薬の大黄(だいおう)の主成分

・ピコスルファートナトリウム(商品名:ラキソベロン®)

一方、アメリカでよく使われているのはポリエチレングリコールとラクツロースの2つですが、これらはいずれもエビデンスレベルが高い薬です。また、もっとも新しい便秘薬であるルビプロストン(商品名:アミティーザ®)は後から出て承認されているだけに高いエビデンスレベルの薬です。

非刺激性下剤は大腸を刺激せず、便が出やすい環境を作るものです。たとえば酸化マグネシウムは便に混じると浸透圧の関係で水分を引き寄せ、便を軟らかくして排便を促し、排便回数を増やします。つまり、体には作用せず便に作用する薬です。エビデンスレベルは高くありませんがよく効くことは間違いありませんし、安価で安全性も高い薬です。

ルビプロストン(商品名:アミティーザ®)も体には作用しますが大腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にしているのではなく、小腸でクロライドチャネルを活性化することで小腸内での水分の分泌を促し、大腸内の便を軟らかくします。DSS+カサンスラノール(商品名:ビーマス®)も同じように便を軟らかくする薬です。

非刺激性下剤は毎日服用しても問題はありませんし、むしろ毎日服用するべき薬です。便が出るときは自分の体で自然に起こる蠕動(ぜんどう)運動、すなわち大蠕動(だいぜんどう)によって出しており、非刺激性下剤は便が出やすい環境を整える役割を果たしています。一方、刺激性下剤は大腸に直接働きかけるため即効性がありますが、効きすぎることもあります。センノシドは刺激性下剤の代表的なものです。

典型的な良くない下剤の使い方は、普段は極力下剤を使わないようにして、溜まった便を刺激性下剤で一度に出すというものです。最初に出る便は硬くなっているため非常に出しづらく、しかも刺激性下剤が効いているため蠕動運動は活発になります。そのため1日に何度も排便があり、最初は硬かった便が下痢様の軟便から水様便になってしまい、場合によってはトイレに間に合わず便失禁を生じることもあります。

センノシドも使い方によってはよい薬です。私が行っている服薬指導では、朝から夜寝るまで1日排便がなかったら寝る前に2錠服用していただき、次の日に出たら服用をやめます。レスキューとして必要なときのみ刺激性下剤を使いながら、非刺激性下剤で排便回数を調節し、最終的には刺激性下剤を使わず非刺激性下剤だけでコントロールすることを目指します。

また2017年3月には便秘型過敏性腸症候群に対してリンゼス®️が保険収載されます。

ブリストル排便スケール
ブリストル排便スケール

うまくいかない方の場合には「排便日誌」をつけていただき、厳密に指導します。便が出ているのに刺激性下剤のセンノシドを使い続けていたり、排便回数が多くなっているのに非刺激性下剤の酸化マグネシウムの回数を減らして調整するのを忘れているなど、不適切な部分があれば直していただきます。

糖尿病高血圧の治療では、血糖値や血圧を測り、それに応じて薬を調整します。便秘もそれと同じように、ちょうどいい排便回数や便の硬さなど、その方の症状がうまくコントロール出来るように薬を調節するべきです。

 

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