
バイオフィードバック療法は、記事3「便秘の検査と診断」でご説明した「骨盤底筋協調運動障害」に対する総合的な治療プログラムです。現在は,治療法としては保険適用となっていませんが、約7割の患者さんに効果がある治療法として期待されています。味村俊樹先生にバイオフィードバック療法についてお話をうかがいました。
便秘に対するバイオフィードバック療法の適応症例は、骨盤底筋(こつばんていきん)協調運動障害であり、その目的は怒責時(排便のためにいきむとき)に外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)・恥骨直腸筋(ちこつちょくちょうきん)の弛緩状態を正常に保つことにあります。
骨盤底筋協調運動障害に対するバイオフィードの方法には、骨盤底筋弛緩訓練法(内圧計法・筋電計法)とバルーン排出訓練法があり、その訓練を通して有効な怒責方法(腹圧上昇)や有効な排便姿勢(前傾姿勢)もあわせて指導します。
骨盤底筋協調運動障害に対するバイオフィードバックの成功率は70%前後です。その有用性に関してはLevel I、推奨度Aという高いエビデンスレベル(科学的根拠)があります。
肛門直腸角が鋭角だと便が出にくいため、この角度を鈍角にする必要があります
前かがみになるだけでこの角度が直線に近くなり、便が出しやすくなります。骨盤底筋協調運動障害の場合は恥骨直腸筋がうまく弛緩しないため便が出にくいのですが、このような方たちにまず前かがみの姿勢をとるように指示するだけで、約半数の方はまだ治療を始めていないにもかかわらず便が出せるようになります。

排便造影検査で見ると明らかなように、肛門直腸角が直線に近い場合には、肛門さえ開けば重力で自然に便が落ちていくのです。また、腹圧をかける際には側腹筋(そくふくきん)と呼ばれるお腹の横の筋肉に力を入れることも大切です。
排便時の姿勢や腹筋の力の入れ方については口頭で説明することができますが、お尻の緩め方は患者さん自身でも見えない部分なので、なかなか加減がわかりません。そこで肛門筋電計を使って筋肉の動きを視覚化する必要があります。肛門筋電計は患者さんの体の電気的活動度を拾っているだけで、電気的に刺激を与えているわけではありません。したがって,バイオフィードバック療法における筋電計の役割は,治療自体というよりも,治療のためのリアルタイムの検査の要素が大きいとも言えます.


治療開始前は下図左側のようにいきむ動作(怒責)をすると腹筋にも少し力が入るのですが、同時に肛門も締まっています。患者さんにはモニターを見ながら、いきんだときに波形のピーク(山)ができないようにご自身でお尻の力の抜き方を工夫していただきます。どうすれば良いかは我々が言葉で教えることができないので、患者さん自身で自分の体をどう使うかを工夫していただくというのがバイオフィードバックです。
我々の排便機能センターではこのバイオフィードバックを外来で1回30〜45分程度行い、1ヶ月後にまた来ていただくようにしています。その間は自宅で訓練を続けていただきます。便意を感じてトイレに行ったときに5分程度、肛門の収縮・弛緩と筋電計の波形を思い浮かべながらいきむ動作を繰り返します。このサイクルを繰り返していくと、上図右側のグラフのようにいきんだときにお尻にはあまり力が入らず、腹筋にはうまく力が入れることができ、便を出せるようになってきます。
肛門筋電計を使ったバイオフィードバック療法では、実際に直腸内にあるものを出す訓練にはなりません。そこで直腸の中に風船を入れてバルーン排出訓練を行います。

最初はベッドに横になった状態でお尻を締めたり緩めたりして、お尻の動きを自覚していただきます。その感覚がわかるようになったら次は便座に座って、お尻を緩めながらいきんで風船を出すよう努力していただきます。
訓練の最初のうちは、最後に治療者が風船を引っ張って外に出し、排便ができたときの成功体験で感覚をつかんでいただきます。肛門筋電計によるバイオフィードバック訓練とこのバルーン排出訓練を繰り返すことで、風船を引っ張らなくても自力で風船を出せるようになります。
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