インタビュー

便秘の治療、バイオフィードバック療法とは

便秘の治療、バイオフィードバック療法とは
味村 俊樹 先生

自治医科大学 医学部 外科学講座 消化器一般移植外科学部門 教授

味村 俊樹 先生

この記事の最終更新は2016年04月25日です。

バイオフィードバック療法は、記事3「便秘の検査と診断」でご説明した「骨盤底筋協調運動障害」に対する総合的な治療プログラムです。現在は,治療法としては保険適用となっていませんが、約7割の患者さんに効果がある治療法として期待されています。味村俊樹先生にバイオフィードバック療法についてお話をうかがいました。

便秘に対するバイオフィードバック療法の適応症例は、骨盤底筋(こつばんていきん)協調運動障害であり、その目的は怒責時(排便のためにいきむとき)に外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)・恥骨直腸筋(ちこつちょくちょうきん)の弛緩状態を正常に保つことにあります。

骨盤底筋協調運動障害に対するバイオフィードの方法には、骨盤底筋弛緩訓練法(内圧計法・筋電計法)とバルーン排出訓練法があり、その訓練を通して有効な怒責方法(腹圧上昇)や有効な排便姿勢(前傾姿勢)もあわせて指導します。

骨盤底筋協調運動障害に対するバイオフィードバックの成功率は70%前後です。その有用性に関してはLevel I、推奨度Aという高いエビデンスレベル(科学的根拠)があります。

肛門直腸角が鋭角だと便が出にくいため、この角度を鈍角にする必要があります

前かがみになるだけでこの角度が直線に近くなり、便が出しやすくなります。骨盤底筋協調運動障害の場合は恥骨直腸筋がうまく弛緩しないため便が出にくいのですが、このような方たちにまず前かがみの姿勢をとるように指示するだけで、約半数の方はまだ治療を始めていないにもかかわらず便が出せるようになります。

排便造影検査で見ると明らかなように、肛門直腸角が直線に近い場合には、肛門さえ開けば重力で自然に便が落ちていくのです。また、腹圧をかける際には側腹筋(そくふくきん)と呼ばれるお腹の横の筋肉に力を入れることも大切です。

排便時の姿勢や腹筋の力の入れ方については口頭で説明することができますが、お尻の緩め方は患者さん自身でも見えない部分なので、なかなか加減がわかりません。そこで肛門筋電計を使って筋肉の動きを視覚化する必要があります。肛門筋電計は患者さんの体の電気的活動度を拾っているだけで、電気的に刺激を与えているわけではありません。したがって,バイオフィードバック療法における筋電計の役割は,治療自体というよりも,治療のためのリアルタイムの検査の要素が大きいとも言えます.

治療開始前は下図左側のようにいきむ動作(怒責)をすると腹筋にも少し力が入るのですが、同時に肛門も締まっています。患者さんにはモニターを見ながら、いきんだときに波形のピーク(山)ができないようにご自身でお尻の力の抜き方を工夫していただきます。どうすれば良いかは我々が言葉で教えることができないので、患者さん自身で自分の体をどう使うかを工夫していただくというのがバイオフィードバックです。

我々の排便機能センターではこのバイオフィードバックを外来で1回30〜45分程度行い、1ヶ月後にまた来ていただくようにしています。その間は自宅で訓練を続けていただきます。便意を感じてトイレに行ったときに5分程度、肛門の収縮・弛緩と筋電計の波形を思い浮かべながらいきむ動作を繰り返します。このサイクルを繰り返していくと、上図右側のグラフのようにいきんだときにお尻にはあまり力が入らず、腹筋にはうまく力が入れることができ、便を出せるようになってきます。

肛門筋電計を使ったバイオフィードバック療法では、実際に直腸内にあるものを出す訓練にはなりません。そこで直腸の中に風船を入れてバルーン排出訓練を行います。

最初はベッドに横になった状態でお尻を締めたり緩めたりして、お尻の動きを自覚していただきます。その感覚がわかるようになったら次は便座に座って、お尻を緩めながらいきんで風船を出すよう努力していただきます。

訓練の最初のうちは、最後に治療者が風船を引っ張って外に出し、排便ができたときの成功体験で感覚をつかんでいただきます。肛門筋電計によるバイオフィードバック訓練とこのバルーン排出訓練を繰り返すことで、風船を引っ張らなくても自力で風船を出せるようになります。

この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

実績のある医師

周辺で便秘症の実績がある医師

東京都立小児総合医療センター 消化器科 医員

やべ きよあき
矢部先生の医療記事

1

アレルギー科、血液内科、心療内科、神経内科、脳神経外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、矯正歯科、小児歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、感染症内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、児童精神科、総合診療科、病理診断科、血液腫瘍内科、血液腫瘍外科、透析内科、臨床検査科、救急科、新生児内科、内分泌・代謝科、児童・思春期精神科、呼吸器外科、臓器移植外科

東京都府中市武蔵台2丁目8-29

JR武蔵野線「西国分寺」南口  バス:総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き、西府駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 徒歩15分、JR中央線(快速)「国立」府中駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス10分、京王線「府中」国立駅行き、総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス20分、JR南武線「西府」西国分寺行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス20分

亀戸内視鏡・胃腸内科クリニック 院長

まるおか だいすけ
Web予約対応

内科、消化器内科、内視鏡内科、胃腸内科

東京都江東区亀戸2丁目36-12 エスプリ亀戸4階

JR中央・総武線「亀戸」北口 徒歩4分、東武亀戸線「亀戸」北口 徒歩4分

河口内科眼科クリニック 院長

かわぐち たかあき
Web予約対応

内科、眼科、消化器内科

東京都江東区白河3丁目1-3

東京メトロ半蔵門線「清澄白河」 徒歩3分、都営大江戸線「清澄白河」 徒歩7分

広尾クリニック 内科・消化器 院長

のむら こうすけ

精度の高い内視鏡検査で、健康を守りながら働きたい現役世代のニーズに応える

広尾クリニック 内科・消化器(東京都港区南麻布5丁目10-26 ヒューリック広尾ビル7階:東京メトロ日比谷線「広尾」3番出口 徒歩1分)の病院ページ。

Web予約対応

内科、消化器内科

東京都港区南麻布5丁目10-26 ヒューリック広尾ビル7階

東京メトロ日比谷線「広尾」3番出口 徒歩1分、「」都営バス 「有栖川記念公園」下車 徒歩4分 バス

上野消化器内視鏡クリニック 院長

みよし こうたろう

高水準の内視鏡検査を活用した信頼の医療、一人ひとりが納得できる説明を大切に

上野消化器内視鏡クリニック(東京都台東区上野6丁目16-18 あいおい都信ビル3F:JR山手線「上野」広小路口(中央改札) 徒歩2分)の病院ページ。

Web予約対応

内科、消化器内科、肛門内科

東京都台東区上野6丁目16-18 上野都信ビル3F

JR山手線「上野」広小路口(中央改札)  JR、地下鉄複数路線利用可 徒歩2分

関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が10件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「便秘症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    メディカルノートをアプリで使おう

    iPhone版

    App Storeからダウンロード"
    Qr iphone

    Android版

    Google PLayで手に入れよう
    Qr android
    Img app