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便秘の治療に使用する薬の種類とは〜市販薬で様子を見てもよいの?〜

便秘の治療に使用する薬の種類とは〜市販薬で様子を見てもよいの?〜
飯田 洋 先生

横浜市立大学医学部 医学教育学 講師

飯田 洋 先生

目次
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便秘とは“本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”と定義されています。このような便秘に対する治療は原因によって異なりますが、薬を使用することもあります。便秘の治療で使用される薬にはさまざまな種類があり、医師の判断のもと患者にあった適切な薬が選択されます。

そこで本記事では、便秘の治療で使用する薬の種類や、市販薬の使用について詳しく解説します。

便秘の治療に使用する薬には浸透圧性下剤や大腸刺激性下剤、直腸刺激性薬剤、上皮機能変容薬など、さまざまな種類があります。また、長期連用により耐性(効き目が悪くなる)が出現する薬や、妊婦など特定の人には注意を要する薬など、その特徴もさまざまです。そのため、便秘に対する薬の処方は医師の判断のもと、患者にあった適切な薬が選択されます。

腸内に水分を集めて便の水分量を増やし、便を柔らかくするとともに量を増やして排便を促す薬です。代表的な浸透圧性下剤には、酸化マグネシウムなどがあり、通常、服用してから数日間で効果が現れます。

長期的に使用しても耐性の心配が少ないとされ、幅広い便秘に使用されています。ただし、この薬は腎臓を通して排泄されるため腎障害がある人や高齢者は注意が必要です。

大腸の動きを促進して排便を起こす薬です。センノシド、センナ、ピコスルファートナトリウムなどが代表的で、効果の発現時間は8~10時間程度です。ほかにもビサコジルなどの肛門(こうもん)から入れる坐薬もあり、坐薬においては1時間以内に効果が現れます。

ほとんどの大腸刺激性下剤は作用が強く、長期連用で耐性が出現することがあるため、通常は頓服として使用して習慣的な使用を控える必要があります。また、センノシド、センナ、ピコスルファートナトリウムなどの大腸刺激性下剤は妊娠中の服用に関する安全性が明確になっていないため、妊婦においては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。

直腸刺激性薬剤には坐薬と浣腸があります。坐薬は炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水和物がよく使用され、肛門のすぐ上である直腸に刺激を与えることで排便を促します。浣腸においてはグリセリンが代表的で、便と直腸の滑りをよくしたり、直腸を刺激して排便をスムーズにしたりします。

効果の発現時間は坐薬が挿肛後5~20分、浣腸が注入後10分程度と即効性がある反面、連用によって自然な排便が難しくなったり耐性がついたりしてしまうため、連用を控える必要があります。また、挿入時に腸の粘膜を傷つけないように注意する必要があります。

小腸や腸粘膜上皮に作用して腸管内への水分分泌を増やし排便を促す薬です。ルビプロストンやリナクロチドがあり、主に慢性便秘や便秘型の過敏性腸症候群IBS)に対して使用られています。効果の発現時間は24時間以内です。

どのような薬にも副作用がありますが、上皮機能変容薬においては吐き気や胸の不快感、下痢などが報告されています。

便秘の治療に漢方薬を使用することもあります。便秘に効果がある考えられる漢方薬は、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)調胃承気湯(ちょういしょうざとう)潤腸湯(じゅんちょうとう)などさまざまで、便秘の原因や症状、体の状態などから適切な漢方薬が処方されます。漢方薬は総じて作用が緩やかで、副作用や習慣性は少ないとされています。

便秘薬の中には幼児期以前の使用を控えるのが望ましいものもありますが、そのほとんどは子どもも使用可能です。ただし、通常の場合薬の容量などは大人と子どもとで異なります。また、便秘の原因などによって適切な薬が異なるため、以前に親が病院でもらった薬を子どもに使ったりするのは控えましょう。

さまざまな種類の便秘薬が市販品として薬局やドラッグストアなどで販売され、中には処方薬と同様の成分が含まれているものもあります。手軽に購入できるため、まずは市販薬で様子を見てみようと考える人もいるでしょう。

しかし、便秘を効果的かつ安全に治すには原因に応じた適切な薬を使用する必要があります。また、便秘薬によっては妊婦や高齢者、腎機能障害がある人など特定の人に注意を要するものや、授乳中に使用すると赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性のある薬もあります。

したがって、自己判断で市販薬を使用するのは控え、市販薬で様子を見たいという場合には医師や薬剤師に相談してから使用するようにしましょう。市販薬でも効果が見られない場合や症状が悪化した場合などには市販薬の使用を中止し、病院を受診したほうがよいでしょう。

便秘の主な原因は生活習慣によるものです。便秘の治療に薬を使用することもありますが、生活習慣が原因であれば生活習慣を改善することが治療の基本となります。便秘の原因となる生活習慣には、不適切な食事、水分摂取不足、不規則な生活や排便習慣、運動不足、ストレスなど多岐にわたります。

たとえ、薬を使用して大腸にたまった便を排出したり大腸の動きを促進したりして一時的に治っても、原因となる生活習慣が改善されなければ再発してしまいます。そのため、少食や偏食であればバランスのよい食事を十分に取る、水分摂取不足なら水分を多めに取るよう心がける(体重60kgの一般成人の場合、飲み水として1日1.2Lが必要)、運動不足なら適度な運動を取り入れるなど、心当たりのある生活習慣の改善に取り組むようにしましょう。

便秘薬にはさまざまの種類がありますが、便秘の原因に応じた適切な薬を使用しないとかえって悪化してしまう場合があります。また、薬の種類によって特定の人においては注意が必要なものもあります。そのため、処方された薬は用法・用量を厳守して適切に使用することが大切です。また、自己判断で市販薬を使用することは逆効果となる可能性も考えられるので、まずは医師や薬剤師に相談してから使用するのが望ましいでしょう。

なお、薬を使用してから今までになかった不調が現れるようになった場合には、薬の使用を中止して処方を受けた病院に相談しましょう。

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