ひるしゅすぷるんぐびょう

ヒルシュスプルング病

大腸・小腸

目次

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概要

ヒルシュスプルング病とは、消化管の一部に神経が適切に分布していないことから発症する、先天的な消化管疾患のひとつを指します。消化管の神経発達は赤ちゃんが子宮の中にいる時から始まっていますが、この神経分布がうまく行われなかった場合に病気が発症します。

便秘が主な症状になりますが、症状の程度により、新生児期早期から診断されることもあれば、もう少し体が大きくなってからの幼児期などにも指摘されることがあります。

日本においては年間200件前後の診断例があり、発生率は5,000人に1人であると報告されています。神経分布の不具合の程度によりヒルシュスプルング病は分類されますが、10%程度の方が難病指定を受けるほどの重篤なタイプのヒルシュスプルング病を抱えています。

原因

消化管は、自律神経と呼ばれる神経系の働きで消化活動が調整されています。 「神経堤細胞」と呼ばれる神経の塊が消化管には存在しており、この神経のおかげで消化管は自律神経からの調整を受けることが可能になります。

しかしヒルシュスプルング病では、一部の消化管において神経堤細胞が存在しておらず、その結果自律神経運動ができなくなってしまいます。神経の発達は、赤ちゃんがお腹の中にいる時から始まっています。ヒルシュスプルング病では肛門から大腸が影響を受けることが多く、一部症例においては小腸に至るまで神経堤細胞が存在していないこともあります。

ヒルシュスプルング病における神経分布の調節には数多くの遺伝子が関与しており、これら遺伝子に異常があると病気が発生すると考えられています。具体的には、RET遺伝子やEDNRB遺伝子、EDN3遺伝子などです。

ヒルシュスプルング病のうちおよそ2割の症例において家族歴を認めることがあります。この場合は両親いずれかにおいてヒルシュスプルング病を持っていると、お子さんにも同じ病気が発生する確率が高まります。残りの8割の症例においては、特別な遺伝形式を取らず、突然発症例であると考えられています。

症状

典型的なヒルシュスプルング病の症状は、新生児期から始まる便秘です。神経堤細胞の調整がない消化管は、糞便をうまく運ぶことができなくなるため、便秘としての症状が出現します。

消化管内部の糞便がうまく排泄できない状態になると、嘔吐を認めたりお腹が張ったりします(イレウスと呼びます)。さらに病状が進行すると、消化管に炎症が生じて細菌が血液中に侵入し全身症状を示すようになりますし、消化管そのものが破れてしまうこともあります。

それほど重篤な症状でない場合は、新生児期・乳児期の診断を受けずに慢性的な便秘を示すお子さんもいます。長期的に続く便秘にともない、食欲不振や成長障害をきたすお子さんもいます。

検査・診断

ヒルシュスプルング病は、便秘、お腹の張りなどの症状をきっかけに疑われ、診断のためにより特異的な検査を行います。ヒルシュスプルング病では消化管の動きが悪い部位については消化管が細くなり、その上流部位の消化管が拡大します。

この状態をより明確に確認するために、おしりから造影剤を入れる注腸造影と呼ばれる画像検査が行われます。 また、通常は肛門を刺激することで反射的におしりの穴を締めたり緩めたりする性質がありますが、ヒルシュスプルング病ではこの反射が弱くなっています。このことを確認するために、直腸肛門内圧測定検査と呼ばれる検査も行われます。

そのほか、神経堤細胞が存在しているかどうかを顕微鏡的に直接確認するために直腸の粘膜を調べることがあります。この目的のために、直腸の粘膜の一部を採取する生検検査が行われることがありますし、手術で摘出された検体を用いて行われることもあります。

治療

新生児期早期から認めるヒルシュスプルング病では、お腹の中に溜まっている糞便やガスを体外に排泄させるための対症療法が取られます。

具体的には、浣腸を行ったり、おしりの穴から管を入れてガス抜きをしたりすることがあります。こうした行為は消化管に溜まった糞便やガスを排泄するという意味合い以外に、不要な感染症を防ぐ目的もあります。 これらの処置で症状が改善することもありますが、根治的な治療のためには手術を行うことが必要です。

手術の方法は、どの範囲で神経堤細胞が障害を受けているかによっても異なりますが、基本は神経堤細胞が存在しない腸管を切除して、その上部の消化管を肛門につなげることになります。症例によっては人工肛門が一時的にせよ必要になることもあります。

イレウスが進行して感染症が発症した場合には、抗生物質による治療が必要になります。また、広範囲に渡る消化管が障害を受けている場合には、手術後に残存する腸管がとても短くなることがあります。この場合には、正常な成長に必要な栄養を十分量口から摂取できない状態になることもあります。

通常よりもカロリーや栄養バランスの充実した経腸栄養剤が使用されますし、長期的に点滴での栄養・水分補給が必要となる場合もあります。長期的な点滴加療が必要と判断される場合には、血管治療を容易にするために、体内に点滴アクセス用の装置が埋め込まれることもあります。

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