子どもの急な腹痛について、記事1〜4を通してあいち小児保健医療総合センター救急科医長の伊藤友弥先生にお話しを伺ってきました。今回は番外編として、子どもの急な腹痛に対する素朴な疑問にお答えいただきます。また、東海3県をカバーする同センター救急科トップとして、小児救急の未来に対する思いをお話しいただきました。
幼い子どもの場合は、大人が「お腹が痛いの?」と聞くと、オウム返しに「お腹が痛い」と答えることがあります。しかし、痛がっている部分がお腹とは限らないかもしれません。どこか別の部位が痛い可能性もあるでしょう。
その時の本人の全身状態に合わせます。もし胃腸炎を疑う場合は、油っぽいもの、乳製品は控えめにしてもいいかもしれません。基本的には、子どもが食べやすいものをあげるとよいでしょう。
確実な統計はありませんが、印象として100人に1人くらいです。腹痛のほとんどの原因は、ウイルス性胃腸炎や便秘です。ただし、最初の受診で「便秘による腹痛だろう」とされても、後から違う症状が出る場合や症状が持続・悪化する場合は注意が必要です。(詳細は記事2『子どもの急な腹痛 軽症な腹痛と重症な腹痛の違いとは』)
子どもが何かしらの症状で救急を受診したときは、医療者が親御さんに、「今回は受診されましたが、実は自宅でもケアができます」と教えることができる貴重な機会です。つまり、子どもの救急受診は、親御さんに対する良い情報提供の場になり得るのです。
実際にあいち小児保健医療総合センターでは、子どもが救急を受診して軽症だった場合、親御さんに対して「今回はこのタイミングで受診されましたが、実はご家庭で対処ができた状態です。次に同じような症状が出た時には、自宅で経過を見てみましょう」などを観察ポイントの説明と共にフィードバックをすることを心がけています。
親御さんが心配になり子どもを夜中に病院に連れてくることはよくあります。しかし軽症だった場合などは、「このような危険な症状がなければ、次は焦って夜中に来なくてもゆっくり寝かせてあげて大丈夫でしょう」など教育的なお話もします。これは、最初に受診する救急の現場ならではのことであり、家庭での看護力をサポートする重要な機会だと考えています。
私は厚生労働省で働いた際に、小児救急体制の整備や周産期医療関係の仕事に主に取り組んでいました。その際の経験を、現在、あいち小児保健医療総合センターを軸とした地域医療に生かしたいと考えます。私のように、臨床と行政の両方の経験があるケースは、まだまだ少ないと感じています。
私が大事にしているのは、バランスのよい視点です。臨床の1対1の視点・地域での視点・全国に対する視点をうまく組み合わせることは、小児救急の医療体制をよりよくしていくために重要です。そして、子どもたちによい医療を提供するのはもちろん、家庭での看護力という面から親御さんをサポートしていくために体制を整備していきたいです。
あいち小児保健医療総合センターは、愛知・岐阜・三重という東海3県をカバーしており、重症な子どもを積極的に受け入れています。救急科は成人救急、災害医療、集中治療などを学んできた多様なメンバーで構成されており、集中治療科(PICU)とも密接に連携をして診療を行っています。今後も皆で力を合わせて、地域の子どもや家族のために力を尽くしていきます。
現在は情報過多になっていますが、情報は質のよいものから悪いものまで玉石混交です。親御さんはメディアからの情報を吟味するのと同様に、医療に関する情報も吟味して考えてみましょう。
例えば、子どもが腹痛の場合、「腹痛」とインターネットで調べて、いきなり「怖い病気ではないか」と思わないように意識します。腹痛があっても緊急性の高いサインがなければ大半は心配ありません。疾患名のみ記憶せず、その内容も吟味して判断しましょう。そのために、医療者側も勿論サポートしていきます。受診する親御さん側も受身になりすぎず、「自分が情報を選ぶ」という意識や「自分も子どもの医療に参加している」という気持ちをぜひ持っていただきたいと思います。
「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。
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