空気の通り道(気道)が狭くなり、吸ったり吐いたりしづらい場合と、肺での酸素の取りこみがうまくいかない場合があります。息苦しそうな場合は、夜間でも受診してください。
気道が狭くなり呼吸がしにくくなる場合と、肺でのガス交換(酸素を取りこみ二酸化炭素を出す)がうまくいかない場合があります。息を吸うのがつらそうで肩を上げて力を入れて息をする(クループ)、吸うときに肋骨のあいだがへこむ・ゼーゼー息が吐きづらい・吐く息が長い(ぜんそく)、息が速い(肺炎や肺水腫)などが見られます。酸素不足で顔色が悪くなり、息苦しいため横になって眠れず抱っこをせがんだり、座ったままウトウトしたりします。呼吸器の病気だけでなく、心臓や神経・筋肉の病気でも見られます。
いろいろな病気で息苦しくなりますが、一番心配な状態は、のどから気管までの空気の通り道が1つしかない部分が狭くなり、息を吸いづらくなっているときです。息苦しそうならば夜間でも受診しましょう。
生後1~2カ月の赤ちゃんや、生まれつき病気がある子どもは風邪でも早めの受診が必要です。以前にもゼーゼーしたことがあり様子がわかっている場合は、水分をとり、胸や背中をトントン軽く叩いてたん出しをします。
ものがのどに詰まって息ができないときは、すぐに前かがみにして背中をドンドン叩いたり、身体を逆さにしたりします。1〜2歳の子どもののどにちょうど入る大きさのおもちゃや食べ物、気道に吸い込まれやすいピーナッツは与えてはいけません。
(青梅市立総合病院 小児科 部長 横山 美貴先生)
風邪、胃腸炎などで体内の水分が減少すると脱水症が起こります。重症化しないように水分と塩分の適切な摂取を心がけましょう。症状が重くなると医療機関の受診が必要になります。
下痢や嘔吐、発汗などで体内の水分(体液)が失われたり、摂取すべき水分の量が減少したりして、体液が欠乏した状態を脱水と言います。体重の5%以上の脱水があると症状が起こります。軽度の場合は不機嫌、おしっこ(尿)の回数や量の減少、唇や口の中の粘膜の乾燥、泣いたときの涙の減少、などの症状が見られます。少し状態が悪くなるとそれらの症状が強くなり、重症になるとおしっこが1日1〜2回しか出ないようになる、眠りがちになる、皮膚にしわが寄る、目がくぼむ、などの症状が目立つようになります。
水分と塩分の補給を適切に行う必要があります。ごく軽症であれば湯冷まし、スポーツドリンク、お茶、スープなどを少量ずつ、多めの回数でとります。ただ、これらの飲み物は電解質(ナトリウムなど)の量が十分ではないため、中等症の場合には市販されている、あるいは病院で処方される経口補水液で水分とともに電解質の補給を行います。1リットルの水に小さじ6(30ml)の砂糖と小さじ半分(2.5mL)の塩を混ぜたものに、適宜レモンなどで味をつけたものでも代用できます。
嘔吐が続いて飲むのが難しい場合やおしっこの量が減ってくる場合、経口補水液を飲んでも改善しない場合など、症状が重い場合には、輸液(点滴)の必要がありますので早めに医療機関を受診しましょう。
(東京大学医学部附属病院 小児科 講師 張田 豊先生 )
便秘とは、便の回数が減り、腹痛などの自覚症状を伴ってきた状態を指します。症状がひどい場合や何度もくり返す場合は、医療機関を受診したほうがよいでしょう。
通常、食物は小腸で消化吸収されたあと、大腸で水分が吸収されて固まった便になります。便が大腸から直腸へ移動すると便意が起こります。そして、自分の意思で肛門を緩めると便が体外に出され、排便が完了します。この過程のどこかに異常があると便秘になります。
便秘は、甲状腺機能低下症や食物アレルギーのような病気でも起こりますが、多くは母乳不足や水分・野菜不足、心理的ストレス、トイレを我慢する習慣、トイレトレーニングの失敗、肛門が切れること(肛門)による排便への恐怖などが原因と考えられます。
便秘以外の症状がなくて元気な場合には、赤ちゃんでは、腹部のマッサージや、綿棒による肛門の刺激、果汁や砂糖水を飲ませるなど、家庭でできる便秘対策を行いましょう。幼児期以降の子どもでは、水分や野菜を十分にとらせるようにして、朝食後に便をする習慣をつけさせたり、便意を我慢しないように教えることが大切です。外に出て体を動かす習慣や、腹筋を鍛えるような運動を行うこともよいでしょう。
これらのことを行ってもスムーズに出ない場合や、便秘以外の症状が見られる場合、元気がない場合は、医療機関を受診しましょう。便秘の原因を調べるとともに、栄養指導や薬による治療などを行う必要があります。
(医療法人社団堅江会はたクリニック 院長 秦 堅佐工先生)
便秘、胃腸炎などが原因で腹痛が起こります。症状がひどい場合(顔色が悪い、眠れない、飲食すると吐いてしまう、血便が出るなど)は、医療機関を受診しましょう。
腹部の臓器に炎症、出血、むくみ(浮腫 ふしゅ)などが起こることにより腹痛が起きます。また、胃腸に通過障害(腸閉塞 ちょうへいそく)が起こって痛むこともあります。病気の種類によって症状は違いますが、年少児では「不機嫌・声を出して泣く・顔色が悪くなる」などのように、一見腹痛が疑われない症状が出ることがあります。年長児ではおなかの痛いところを教えてくれることもありますが、おなか以外の原因で具合が悪いときにも「おなかが痛い」と訴えることもあるため注意が必要です。腹痛と同時に、発熱、嘔吐、下痢(血が混じることもある)が見られることもあります。
まずはじめに、便が出ているか出ていないかを必ず確認してください。便が出ていない場合は、浣腸をしてあげることで腹痛がよくなることが多いです。
一方、おなかが強く張っているときや右下腹部が強く痛むときは、急性虫垂炎 ちゅうすいえん(盲腸 もうちょう)の場合がありますので、浣腸はせずに医療機関を受診してください。また、浣腸しても痛みが続く、血便が出る、元気がない、顔色が青くなってきた、さらに何回も吐く、下痢を伴うという症状が出ている場合は、早めに医療機関を受診しましょう(お家で便がとれた場合は、病気の診断の参考になりますので、とった便を持参してください)。
(財団法人太田綜合病院附属太田西ノ内病院 小児科 部長 生井 良幸先生)
赤ちゃんは生まれて間もない頃から大きな音にビクッと反応し、生後2カ月くらいから目でものを追い、生後3カ月すぎに首がすわると音のする方向に顔を向けるようになります。
●目の異常:眼球は、生まれてきたときにほぼ完成されていますが、脳や神経の発達は不十分なため視力は低い状態です。視力や両眼視の完成は5歳くらいですが、生後4カ月をすぎてもものをじっと見ない、目がふらふら動く、目つきがおかしいなどの場合は注意が必要です。
●耳の異常:生後3〜4カ月で首がすわっても音のする方向を見ようとしない、1歳すぎで簡単な言葉の命令に応じない、2歳で言葉が出ないなどの場合は、音への反応に注意する必要があります。耳に異常が起こり難聴(なんちょう)になると、言葉の発達にも影響します。
日常生活で、赤ちゃんが見えているのか、聴こえているのかという不安を感じている場合は、乳児健診などの際に小児科医に相談しましょう。健診では、月齢に合わせて異常がないかを判断しますが、騒音があったり、気が散るような会場では、軽い場合には判断が難しいこともあるため、日ごろ気づいている保護者から気になることを申し出ましょう。
視力や聴力がそのままでは日常生活に支障が出ると予想される場合、原因を究明して、それに合わせた治療や矯正、補正の開始時期など、十分な検討が必要になってきます。発達時期を逃さずに適切な時期に開始できるよう、早く気づいてフォローしていきましょう。
(澤田こどもクリニック 院長 澤田 雅子先生)
胎生期から乳児期の子どもの栄養環境が、成人期あるいは老年期における生活習慣病の発症リスクに影響を与えるとする学説のことを「DOHaD(ドーハド)」と呼びます。DOHaDとはDevelopmental Origins of Health and Diseases の略です。1980年代にイギリスの医師であるBarker(バーカー)らが提唱したため、「Barker説」とも呼ばれます。その後世界中で行われた数多くの疫学的な検討により、この学説の正しさが支持されています。Barker説のおもな概念は、「胎児期と乳児期に低栄養環境におかれた個体は、その後に過剰な栄養を与えられると肥満、高血圧、2型糖尿病などの生活習慣病に罹患しやすくなる」という考えです。現在のわが国の男女を合わせた子どもの平均出生時体重は3,000gを下回っており、約30年前に比べると男女とも200g以上減少しています。このような状況が続くと、わが国の子どもが成人になったときに、生活習慣病にかかる人が増えることが心配されます。小さく産んで大きく育てることには危険性があることも知っておく必要があります。
(五十嵐 隆先生)
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