マイコプラズマが引き起こす感染症で最も多いのは、マイコプラズマ肺炎です。マイコプラズマ肺炎の治療は、ほとんどの場合抗菌薬を使って行われ、その中でも特にマクロライド系と言われる抗菌薬が有効とされています。しかしながら、近年、マクロライド系抗菌薬では対処できないタイプのマイコプラズマが増えてきていると言われています。マイコプラズマ肺炎の治療の注意点について、川崎医科大学小児科学教授の尾内一信先生にうかがいました。
マイコプラズマ肺炎は細菌感染なので、抗菌薬が高い効き目を発揮します。そのため、早く症状を落ち着かせるためには抗生物質を使います。特に「マクロライド系抗菌薬」は効果があります。しかし、一方で2000年頃からマクロライド耐性のマイコプラズマが徐々に増えてきていおり、最近は、抗菌薬で死なないマイコプラズマ(耐性菌)が発生して問題となっています。1999 年以前には、マクロライド系抗菌薬で死なないマイコプラズマ(耐性株)はいないとされていましたが、2000 年以降に検出された30%以上のマイコプラズマはマクロライド耐性株と判定されています。
そのため、今はマクロライド系を使ってもなかなか効果がないということもあり得ます。そのようなときには効果のある薬に切り替えないといけません。
「マクロライド耐性マイコプラズマ感染症」では、ニューキノロン系の抗菌薬とかテトラサイクリン系の抗菌薬を使うことがあります。しかし、テトラサイクリン系の抗菌薬は、年齢が低い方に使ってしまうと歯の着色などの副作用が出たり、骨の形成に影響が出ることがあります。そのため、8歳未満ではニューキノロン系の抗菌薬を使って治療していきます。
大人ならば、歯の着色などの副作用はほとんど顕在化しません。そのため、マクロライドを投与して熱が下がらなければテトラサイクリンやニューキノロンを使っていきます。
多くの細菌性肺炎の場合、入院して治療することも多いでしょう。けれども、「ウォーキングニューモニア」であるマイコプラズマ肺炎の患者さんは「外来で可能なくらいの体力がある」方が多く、ほとんどの場合は家で経過をみながら治療をすることが可能です。前述のように抗菌薬がよく効きますので、家で薬を最後まで飲み続けて途中でやめないことが大切です。最後まで飲んだあとには症状がよくなったかを確認するため外来を受診してもらい、もし症状が改善しなければ違う抗菌薬を内服してもらうこともあります。
一番の注意事項は、「抗菌薬を最後まで飲んでください」ということです。また、水分もしっかりと摂ってもらう必要があります。脱水状態になると痰が粘りやすくなるため出しづらくなります。もし症状がひどく悪化するようなことがあれば病院の受診を指示します。出席停止期間については定められていませんが、有効な抗菌薬を服用して症状が改善してくる概ね5日くらいと説明しています。
出席停止期間の詳細については、「マイコプラズマ肺炎の出席停止期間は?―予後・予防接種・流行についての知識」をご参照ください。
川崎医科大学 名誉教授、川崎医療福祉大学 医療福祉学部 子ども医療福祉学科 特任教授
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