子どもの肺炎のほとんどは、風邪の延長線上にある病気か、マイコプラズマ肺炎です。
多くの場合、肺炎による咳は、原因に関係なく2〜3週間ほど続きます。
今回は、子どもの肺炎の咳について、千葉市立海浜病院小児科の阿部克昭先生に詳しくお話を伺いました。
風邪の延長線上にある肺炎の場合は、咳、痰(たん)、鼻水が数日続いた後に発熱してくるか、発熱とほとんど同時に咳、痰、鼻水が始まって3日以上たっても改善がみられないことが多いです。肺炎に限らずですが、多くの咳は夜間に強くなる傾向があります。
肺炎球菌による肺炎の多くは「風邪の延長線上にある病気」ですが、ときどき発熱だけが数日続いた後に、咳をし始めることがあります。
このような肺炎では、39℃以上といった高熱が出てぐったりしてしまうことも多くあります。
マイコプラズマ肺炎以外に乾いた咳が特徴となる肺炎は、子どもではあまりありません。
マイコプラズマ肺炎は、多くの場合発熱が先行し、続いて乾いた咳、そこから数日経過して痰の絡む咳にかわってくることが多くなります。
エイズの合併症*として有名なニューモシスチス肺炎も乾いた咳が出ますが、発症頻度は非常に低いです。極めてまれな生まれつきの免疫不全症に合併した場合に、子どもでもみられることがあります。
合併症…ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状
子どもの肺炎のほとんどは、急性の経過です。いきなり発熱、咳、痰が出ます(鼻水、咳、痰が数日続いた後に発熱することもあります)。咳喘息は月単位で咳が長引き、感染症を疑われて抗菌薬などの薬をいろいろ試したがおさまらない、というときに疑う病気です。
2歳未満でのRSウイルスなどが原因となる急性細気管支炎では、肺炎を合併していることも多く、その場合喘息との区別は難しくなります。
一方で、2歳以上の年長児でゼイゼイして呼吸が苦しい、というときには喘息の診断がつくことが多くなります。喘息自体で熱は出ませんが、喘息発作は気道感染症(気管支炎・肺炎)に誘発されやすいため、肺炎と喘息発作が合併していることもしばしばあります。
例を挙げて説明すると、日焼けも皮膚の炎症です。日焼けをすると、日に当たるのをやめても数日間は皮膚が過敏になります。その状態で誰かに軽く腕を叩かれたり、お風呂の温度が少し高めだったりするだけでも飛び上がるほど痛くなります。
気管支炎や肺炎の場合も同じように、気管支・肺胞の粘膜に炎症があり、敏感になっています。そのため、少しの刺激でも咳が出てしまうのです。
痰のもとになる粘液は、気管支の壁の粘膜から出ています。この粘液に、細菌やウイルスなどの病原体と、病原体と戦うために出てきた白血球が混ざったものが痰です。
咳をして痰を出すことで、病原体をからめとって体の外に追い出す役割を果たしています。
上記の項目で、日焼けと炎症の話をしました。日に当たるのをやめても日焼けがすぐには治らないのと同様で、肺炎(気管支炎も)の原因である病原体がいなくなっても咳が続きます。どの原因であっても2〜3週間は続くことが多いと思っていてください。
多くの肺炎は風邪の延長線上にある病気であり、風邪と肺炎のときの咳の仕方にそれほどの差はありません。発熱にともなって咳がひどければ、肺炎の可能性があるとはいえます。
子どもの肺炎はきちんと治療すればよくなる可能性が高い病気です。あまり神経質にならず、熱と咳が長引くときや、長引く咳に続いて発熱したときは肺炎を疑い受診しましょう。