インタビュー

子どもの肺炎はうつる?うつらない?

子どもの肺炎はうつる?うつらない?
小川 英輝 先生

国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 元フェロー、あいち小児保健医療総合セン...

小川 英輝 先生

石黒 精 先生

国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教...

石黒 精 先生

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この記事の最終更新は2018年06月04日です。

 

子どもが肺炎になってしまった場合、うつるかうつらないかは、その肺炎の原因や個人の免疫によって変わります。

子どもの肺炎はどの種類がうつるのか、国立成育医療研究センター感染症科の小川英輝先生に詳しくお話を伺いました。

主な肺炎の病原体は、飛沫感染や接触感染で伝播(でんぱ)します。

飛沫感染は、会話や咳などによって病原体を含んだ小さな粒子が飛散し、他者の口や鼻の粘膜に触れることで、感染が広がります。

いわゆるウイルス性の風邪の多くは、この飛沫感染でうつります。咳によって粒子は1〜2メートル程度飛ぶといわれています。風邪をひいているときにマスクをするのは、会話や咳によって、飛沫が飛ばないようにするためです。

風邪をうつさないためには正しくマスクを装着し、咳をするときに口元を覆うなどの咳エチケットを行うことが重要です。

おもちゃを舐めている日本人の赤ちゃんか子ども

RSウイルスやアデノウイルスなどは飛沫感染だけでなく接触感染でもうつります。接触感染とは、病原体が机やドアノブ、つり革・手すりなどの環境に付着し、その汚染された環境を触ることで体に付着した病原体が、何らかのきっかけで眼や鼻、口の粘膜に接触して感染することをいいます。

特に子どもでは、おもちゃを触ったり舐めたりするので、汚染されたおもちゃを共有することよって感染症が広がってしまいます。そのため、感染予防には手洗いが大切ですし、環境の清掃なども重要になります。

結核麻疹水痘は空気感染します。空気感染とは、飛沫核という微粒子に乗って菌が拡散することです。接触感染よりも遠くまでウイルスや細菌が運ばれてしまうので、直接的な接触がなくても同じ空間を共有しているだけで感染してしまうリスクがあります。

肺炎になるかは別ですが、風邪がうつる可能性はあります。

ウイルスは唾液などの分泌物でうつるため、キスでもうつる可能性があります。お互いに風邪症状がなければ問題ないと思いますが、症状がなくてもウイルスに感染していることもあります。少なくとも、風邪の症状が出ているときは、子どもとのキスは避けた方が無難だと思います。

マイコプラズマ・ニューモニエという細菌に感染することで、肺炎を発症する可能性があります。会話や咳などによって唾液を介して他者に感染するため、学校など人がたくさん集まるところで流行することが多いです。

マイコプラズマ肺炎に感染すると抗体という免疫物質が作られますが、長続きしないため、何回もかかる可能性があります。

クラミジア・ニューモニエという細菌に感染することで、発症する可能性があります。マイコプラズマと同様に、学校などの人が集まるところで流行することがあります。ただし、肺炎クラミジアはマイコプラズマ肺炎ほど一般的ではなく頻度も低い感染症ですので、特別な理由がない限りは検査も行わないことが多いです。

クラミジア肺炎も免疫が長続きしないことが知られており、繰り返し感染することがあります。

結核は空気感染する菌として有名です。現在でも特定の地域や高齢者施設などで散発的に流行することがあります。

子どもの結核は非常にまれですが、結核と診断されている患者さんと濃厚な接触歴がある場合や、周囲の地域で流行が見られる場合には、子どもでも結核を疑って検査を行う必要があります。

潜伏期間は無症状ですが、細菌やウイルスが体内で増殖している期間です。潜伏期間内では、咳などの症状がなければ基本的にうつりません。

マイコプラズマ肺炎や肺炎クラミジアは潜伏期間が長いため、いつ感染してしまったのか、わからないことが多いです。そのため、子どもの周りでこれらの肺炎が流行していないかをチェックしておくことが重要です。

RSウイルスインフルエンザウイルスなどの有名なウイルスは風邪の原因ですが、肺炎を起こすこともあります。これら以外にも、肺炎を起こすウイルスはたくさんあります。

唾液などを介してうつりますので、ウイルス性肺炎の方と接触すると風邪をうつされてしまうかもしれません。しかし、必ずしも同じように肺炎になるわけではなく、多くは発熱や鼻汁・咳などの風邪症状にとどまります。

肺炎を起こす細菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌)の多くは、鼻腔内に常在菌として存在していますが、症状はありません。細菌性肺炎の患者さんから、唾液や鼻汁を介して細菌がうつるかもしれませんが、必ずしも肺炎を発症するわけではありません。

ただし、鼻腔内の新たな常在菌として獲得する可能性はあります。鼻腔内にいるだけであれば、通常は大きな問題にはなりませんが、中には薬剤耐性や毒性が強い菌もいるので、うつされない事に越したことはありません。細菌性肺炎の人と接するときには、ウイルスと同じような風邪予防が重要になります。

また、細菌性肺炎と診断されている患者さんでも、ウイルス感染症を合併していることがあるので、風邪をうつされてしまう可能性があることに注意してください。

耐性菌…抗菌薬に対して抵抗力を持ち、抗菌薬が効かなくなった細菌

誤嚥(ごえん:食物などが気管に入ってしまうこと)により、口腔内や鼻腔内の細菌が気管内に入り、感染症を発症することあります。そのため、誤嚥性肺炎は人にはうつりません。

声帯より奥の気管内は菌が常在しない無菌的な場所になりますが、鼻腔内や口腔内にはたくさんの菌がいます。

自分自身が持っている常在菌でも、無菌部位である気管内に唾液などが垂れこむことで、菌が侵入し、増殖することで感染症を起こします。嚥下が不得意な子どもや高齢者で多い肺炎の原因です。

レジオネラという細菌に汚染された水滴を吸入することで感染し、人から人に移ることはありません。温泉施設(24時間循環風呂)や加湿器、腐葉土を介して感染することが報告されています。

多くの温泉施設などは適切なマニュアルに従った衛生管理を遵守しているため、よく起こる肺炎ではありませんが、急性発症の重症な肺炎では考慮する必要があります。

病原体を他者に感染させないようにするには、マスクや咳エチケットを中心とした「飛沫感染予防」が重要です。子どもは咳エチケットができないため、風邪をひいているときはなるべく人ごみを避けて、感染を広げないために配慮することも重要です。

また、子どもはおもちゃなどを触ったり舐めたりするので、手洗いや環境の清掃を中心とした「接触感染予防」も重要です。

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  • 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 元フェロー、あいち小児保健医療総合センター 所属

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  • 国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)

    石黒 精 先生

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