感染症とは、細菌やウイルスなどが体に入り増殖することによって起きる病気です。感染症には風邪、インフルエンザなど比較的軽症なものから結核、敗血症など症状の重いものまでさまざまな種類があります。細菌とウイルスは同じく感染症を引き起こす病原体として捉えられがちですが、実は全く異なる構造を持っています。この違いを正しく理解して治療に臨むことが大切です。
今回は細菌とウイルスの違いについて、千葉市立海浜病院小児科部長兼感染症内科の阿部 克昭先生にお話を伺いました。
細菌とウイルスは、どちらも人間に感染症を引き起こす微生物です。感染症とは細菌やウイルスなどの病原体が体に入り増殖することによって、さまざまな症状をもたらす病気です。
細菌とウイルスはその大きさや増殖能力の有無など、さまざまな観点から違いを表すことができます。なかでも決定的な違いとしては、細菌は生物であり、ウイルスは生物とはいい切れないところです。
細菌は下記3つの理由から「生物」であるといえます。
細胞とは生物を形成する基本単位となるもので、私たち人間を含めたすべての生物が細胞によって構成されています。単細胞生物を除いたすべての生物は複数の細胞によって成り立っており、複数の細胞は基本的には細胞膜や細胞壁によって1つ1つが区切られています。細菌はウイルスより大きく、光学顕微鏡によって観察することができます。
細菌の細胞は、人間を含めた動物・植物の細胞とは大きく異なります。細菌でも動植物でも遺伝情報はDNA*という物質の構造に記録されていますが、動植物ではこのDNAがタンパク質に巻き付いて染色体という構造を作り、その染色体が核という部分に収まっています。核を持つ細胞でできている生物を「真核生物」といいます。一方で細菌の細胞には核がなく、DNAがその他の物質とともに細胞膜内をただよっています。このような細胞を持つ生物のことを「原核生物」といいます。
また、細菌の細胞の多くは植物と同じように細胞膜・細胞壁によって区切られていますが、マイコプラズマなどの一部の細菌では、例外的に細胞壁のないものもあります。
DNA……生物の遺伝情報を引き継ぐ役目を持つ生体物質。4種類の核酸という物質が決まった配列で並ぶことで、文字で書かれた文章のように遺伝情報を記録している。
細菌が原因となる感染症には下記のようなものが挙げられます。
<代表的な細菌性感染症>
細菌感染症のなかでも百日咳・梅毒・結核などは原因となる菌が明確で、それに感染することで特徴的な病気にかかります。しかし、なかには同じ1つの細菌でもどこに感染するかによって、呼吸器感染症・尿路感染症・敗血症・髄膜炎などと異なる病気を引き起こすものもあります。また、感染症を起こす危険性のある細菌でも、感染する臓器や個人の免疫力によっては無症状で保菌*されることもあります。
保菌……病原体、細菌などを体のなかに持っていても症状を示さないこと
ウイルスが生物であるかどうかは研究者によって意見の別れるところです。しかし下記の理由から「生物である」といい切れないことは事実です。
ウイルスは細胞がなく、細菌よりさらに単純な構造です。タンパク質でできた「カプシド」という殻のなかに遺伝子情報となる核酸が収められています。また、インフルエンザウイルスなど一部のウイルスには、カプシドの外に「エンベロープ」という膜がついているものもあります。
またウイルスは細菌よりも小さく、光学顕微鏡でみることはできません。電子顕微鏡で観察することができます。
ウイルスは自力で増殖することができません。しかしウイルスは動植物の細胞のなかに入りこむことができます。どの生物のどの種類の細胞に入り込めるかは、ウイルスの種類によって異なっています。動植物の細胞に入り込んだウイルスは、その細胞の機能を使って自身のコピーを増やしていきます。
ウイルスが原因となる感染症の代表例は下記のとおりです。
<主なウイルス性感染症>
ウイルス性感染症は、水疱瘡、おたふくかぜなど特徴的な病気を起こすものがよく知られています。また、いわゆる「風邪」を引き起こすウイルスとしてはライノウイルス、コロナウイルスなどが代表的です。いくつかのウイルスに同時に感染することによって、風邪の症状があらわれることもあります。
鎌ヶ谷総合病院 小児科 部長
関連の医療相談が10件あります
百日咳とは
子供が春頃から、鼻水などや、風邪などよく繰り返しているのですが、その度に小児科、耳鼻科と通院し、お薬をもらいながら経過見ているのですが、 なかなか咳がすっきりと治りません。 ずっとひどいわけではないのですが、 確かに鼻水が増えた時や、熱が出た後は咳が強くなります。もちろんそれは通常として理解しているのですが、 何ヶ月も弱い咳が基本的にはあり、たまに強弱があるという経過です。 小児科でも元々アレルギー鼻炎気味ではあり、現在は気管支喘息のお薬ももらっています。 ふと、百日咳があたまをよぎったのですが、百日咳だと、ずっと症状が続きますか? 最初何週間か咳が強くなるとみたことあります。 ですが、うちの子供は最初の1週間が強く出て、そのあとは頻度は減ります。 父親も一度風邪をひくと毎回咳が長引き、呼吸器内科もかかっていますが、特に百日咳の指摘もなく検査もないようです。
三日前から、のどの痛み、せき
妻は現在抗がん剤治療中です。 三日前から37~38度の熱とのどの痛み、せきがあります。 市販の風邪薬を服用しても良いでしょうか?
白い痰がよく出ます
84歳になる母が10年程前からよく痰を吐き出します。 昔は茶色っぽいものでしたが、現在は白いネバネバした痰です。 要介護5であり自分で寝返りがうてないため、 ティッシュにだすのが面倒くさくて夜中は飲み込んでしまうこともあるそうです。 ・何科で相談すればよいですか? ・痰が詰まって窒息することは考えられますか? 良いくすり、または痰を出す方法はありますでしょうか? ・病気は考えられますか? よろしくお願いいたします。
COPDについて
COPDについてです。 20代で喫煙歴は8年ほどあります。 一日平均5本程度です。 八月に出産して最近タバコを再開しました。 数年前から気になっているのですが、寒い日の朝に息を深く吸うととても強い咳が出ます。痰は出ません。 また、昼間や夜間は出ません。 調べるとCOPDの初期症状と書いてありすごく心配しています。 昨年肺年齢を測ったときに、12歳ほど上の年齢が出ました。 一週間前に別の症状でレントゲンと心電図を撮りましたが異常なしです。 COPDの可能性は高いでしょうか? また、運動時に強い息切れはなく、普通に活動できます。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「百日咳」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。