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腸管出血性大腸菌感染症

最終更新日
2020年11月06日
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2020/11/06
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

腸管出血性大腸菌感染症とは、下痢などの症状が起こる大腸菌感染症の1つです。

通常、腸管にもともと存在している大腸菌(腸管常在大腸菌)は、腸管以外の臓器では膀胱炎や胆嚢炎といった病気を引き起こしますが、腸管の中では特に問題を起こすことはありません。しかし、腸管内で下痢などの症状を起こす大腸菌のグループがあり、これを広い意味で“病原性大腸菌(下痢原生大腸菌)”と呼んでいます。

この病原性大腸菌は一般的に5種類に分類されていますが、このうち特に重症な状態となりやすく問題となっているのが腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli; EHEC)です。

腸管出血性大腸菌感染症は、小児(特に10歳以下)の発症者が多く、溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome; HUS)や脳症を併発すると命に関わるケースもあります。

原因

腸管出血性大腸菌感染症の原因となる腸管出血性大腸菌は、ベロ毒素と呼ばれる毒素を産生しています。すなわち腸管出血性大腸菌はベロ毒素を産生する病原性大腸菌です。ベロ毒素はVT1とVT2という2種類に分けられます。

また、病原性大腸菌はO抗原(大腸菌の細胞壁のリポ多糖体の最外層部)によっていくつもの種類に分けられます。このうち、集団感染を起こして世界的に問題となった、腸管出血性大腸菌の代表的なO血清型がO157です。日本ではそのほかの腸管出血性大腸菌としてO111血清型、O26血清型も比較的多く報告されています。

腸管出血性大腸菌の感染は、何らかの経路で菌に汚染された飲食物や感染者の糞便で汚染されたものを口にすることで起こります。熱に弱く、75℃で1分間加熱すれば死滅しますが、低温条件に強いため冷凍庫では生き残ると考えられています。

また、酸性条件にも強いため胃酸の中でも生き残ります。感染が成立するために必要な菌の量はわずか100個程度とされており、感染者から周囲へと広がりやすいという特徴があります。

症状

O157血清型を含む腸管出血性大腸菌感染症は、無症状の場合から生命に関わる重篤な場合まで症状はさまざまです。一般的に2~8日(多くは3~5日)の潜伏期の後に下痢や腹痛が現れます。血便を伴うことが多く、発熱(多くは軽度)もみられます。ときに激しい腹痛を伴うこともありますが、それら腹部の症状だけで重症となることはありません。

しかし、溶血性尿毒症症候群(発症率1~10%)や脳症を発症すると重篤な状態となり、命に関わるケースもあります(死亡率2~5%)。これらは下痢などの腹部症状がでてから5~7日後に発症することが多いとされています。

血液中に入り込んだベロ毒素によって赤血球が破砕され、臓器の血管壁の細胞が傷害されると血管内に血栓(血の固まり)が作られます。この血栓によって血の流れが滞ると貧血や血小板減少を引き起こし、やがて腎臓機能の低下や脳症も起こします。

脳症では頭痛、けいれん、傾眠(けいみん)(意識の状態が悪くなりうとうとした状態となること)、不穏(そわそわとして落ち着かない様子となること)などさまざまな症状が現れます。

検査・診断

腸管出血性大腸菌の検査では患者さんの便を採取して培養を行い、ベロ毒素を産生している大腸菌を検出することで診断を確定します。また、培養検体や便を用いてO157抗原やベロ毒素を直接検出する検査方法もあります。これは迅速に行うことのできる検査ではありますが、感度など検査の正確性がやや劣り、診断を確定するためには便の培養検査等が行われます。

治療

腸管出血性大腸菌に感染して下痢などの症状が出た場合には、安静にして体を休め、水分を十分に補給し消化のよい食事を摂取することを心がけます。激しい腹痛や血便があり、水分の摂取が困難な場合には点滴による輸液が行われることもあります。抗菌薬の投与を行うこともありますが、必須ではありません。乳酸菌製剤など整腸剤は積極的に使用しますが、下痢止めの薬は腸内容物を停滞させベロ毒素の血中への吸収を助長し症状を長引かせたり、溶血性尿毒症症候群や脳症を発症したりする可能性を高めるため使用しないほうがよいとされています。

また、溶血性尿毒症症候群や脳症に対する治療は、基本的には対症療法(出てくる症状に対してそれを和らげることを目的とする治療)であり、溶血性尿毒症症候群や脳症に特化した特別な治療方法はありません。入院のうえで全身管理を行い、尿量を維持したり血圧の管理を行ったりしていきます。透析治療や輸血などを行う必要がある場合もあります。溶血性尿毒症症候群の回復後には、まったく後遺症が残らない場合も多いですが、肝臓や腎臓などに障害が残る場合もあります。

予防

対策としては、何らかの経路で菌に汚染された飲食物や感染者の糞便で汚染された物を口にすることから感染を起こすので、食品を十分に加熱する、 調理後の食品はなるべく食べきるなどの注意が大切となります。

また、手洗いを徹底することが大切です。糞便や菌に汚染されたものには素手で触れず、処理の際には手袋やマスク、エプロンなどを着用し、処理に使用した物や道具は密閉して捨てることが必要です。

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