インタビュー

O-157による腸管出血性大腸菌感染症の予防

O-157による腸管出血性大腸菌感染症の予防
松本 哲哉 先生

国際医療福祉大学 医学部感染症学講座 主任教授

松本 哲哉 先生

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この記事の最終更新は2018年03月17日です。

大腸菌の一種であるO-157の一部は、ベロ毒素という非常に強い毒素を出すことがあります。ベロ毒素は腸管にさまざまな症状を引き起こし、重症化した場合、命にかかわることもあります。O-157による腸管出血性大腸菌感染症の予防について、国際医療福祉大学医学部感染症学講座の松本哲哉(まつもと てつや)先生にお話を伺います。

O-157は基本的に食品から感染することが多いです。夏の室温(25℃〜35℃くらい)でO-157は増殖しやすいため、食品の温度管理を徹底することが重要です。買ってきた食品をきちんと冷蔵庫で保存する、生肉を切った包丁やナイフでそのまま野菜を切らないなどの点に注意するとよいでしょう。まな板や包丁を熱湯で消毒するのもおすすめです。

O-157は、75°で1分間加熱すれば死滅します。よって、肉の表面をしっかりと焼いてあれば、感染のリスクはかなり低くなります。しかしながら、ミンチ肉や合成肉(バラバラにした肉をまとめたもの)は肉の表面だけでなく内部にも付着している可能性があるため、内部までしっかりと火を通すことが必要です。

また、焼肉店などでは、生肉と焼いた肉でトングを使いわけることも重要です。前提として「生肉は汚染されている」と考えながら行動することが大切です。

  • 食品は冷蔵庫で保存する
  • 生肉を切った包丁やナイフでそのまま野菜を切らない
  • まな板や包丁を熱湯消毒してから使う
  • 肉の表面をしっかりと焼く
  • 焼肉店では、生肉と焼いた肉でトングを使いわける

O-157は便のなかにいるため、トイレを汚染させるリスクがあります。トイレの汚染を介した感染を予防するためには、便座はもちろんのこと、蛇口やトイレのドアなどを触ったあとはきちんと石鹸で手洗いをすることが重要です。また、O-157の感染予防にはアルコール消毒も有効です。

O-157は感染者の便に出るため、トイレを使用したあとの手洗い・消毒は徹底しましょう。また、タオルの共有はやめて、ペーパータオルを使用することを推奨します。しかし、実際には一般の家庭で完全に感染を防ぐことは難しいです。

家族がO-157による腸内出血性大腸菌感染症に感染し、子どもや高齢者が同居している場合、可能な限り感染者との接触を遮断することが望ましいです。なぜなら、子どもや高齢者はO-157による腸内出血性大腸菌感染症が重症化しやすいためです。

先生

O-157による腸管出血性大腸菌感染症に限らず、感染症の病原体は目にみえません。感染の原因となる汚染された食品はもちろん、環境も、私たちの目では判断することはできないのです。そのような状況で感染を防ぐためには、感染の可能性があるものを「汚染しているもの」として扱うことが重要です。

その行動の1つ1つが、O-157を含めた病原体による感染症の予防につながります。

記事2『O-157による腸管出血性大腸菌感染症の原因・感染経路』では、O-157による腸管出血性大腸菌感染症の原因と感染経路についてご説明します。

  • 国際医療福祉大学 医学部感染症学講座 主任教授

    日本内科学会 認定内科医日本感染症学会 感染症専門医・指導医日本臨床検査医学会 臨床検査専門医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター日本臨床微生物学会 日本臨床微生物学会認定医

    松本 哲哉 先生

    1987年に長崎大学医学部を卒業後、同附属病院第2内科へ入局。1993年に長崎大学大学院を修了し、東邦大学医学部微生物学講座にて助手を務めたのち、2000年より米国ハーバード大学へ留学。微生物学を専門とし、第一線で活躍する。2018年より現職。

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