【インタビュー】
インフルエンザの治療法 安静と睡眠が治療に大切
公開日 2015 年 05 月 13 日 | 更新日 2017 年 05 月 07 日
- インフルエンザ(こども)
- インフルエンザ


神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授
岩田 健太郎 先生
冬に大流行するインフルエンザ。治療といえばタミフル®などの抗インフルエンザ薬を思い浮かべると思います。しかし、実は、治療の基本は抗インフルエンザ薬ではありません。神戸大学感染治療学教授の岩田健太郎先生にインフルエンザの治療についてお聞きしました。
インフルエンザ治療の基本は安静と十分な睡眠
インフルエンザ治療の中心は抗インフルエンザ薬ではありません。もちろん、重症化リスクが高い患者さんに抗インフルエンザ薬をお勧めすることもありますが、基本的にはケースバイケースです。まずは安静にして睡眠を十分にとること、高熱によって脱水症状にならないよう、しっかりと水分補給をすることが治療の基本となります。また、漢方薬を内服してもらうこともありますが、一方で抗生物質が必要なシーンはほとんどありません。
熱が高くつらいときには解熱剤を飲むこともあります。解熱剤を飲むときはカロナール®などのアセトアミノフェンを用います。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は脳症のリスクがあるため飲んではいけません。NSAIDsとはバファリン®やボルタレン®などのことを指し、鎮痛薬や解熱剤などに用いられています。
インフルエンザ治療に市販の総合感冒薬を使うことも
症状が重い時に、病院に行って2時間待って……というのはとても辛いものです。病院まで行くのが面倒な場合には、市販の総合感冒薬を使うのもよいでしょう。自分の娘もインフルエンザになったことがありましたが、その際も、普通の市販の小児用総合感冒薬を治療に使いました。ただしその際に選択する総合感冒薬も、NSAIDsが入っていないものを選ぶことが大切です。
最近の小児用の総合感冒薬にはほとんどの場合、NSAIDsは入っていません。大人用には入っているものもありますが、これも果たして入れる必要があるのかどうかは疑問です。NSAIDsは、インフルエンザ脳症の問題だけでなく、腎臓など様々な問題がありえます。そもそも、NSAIDsが必ず必要になるのは関節痛、がん疼痛などの慢性疾患の場合です。急性のウイルス性疾患では、NSAIDsを飲む必要性も、NSAIDsの使用が正当化されるシーンもほとんどないと考えてよいでしょう。
記事1:インフルエンザとはどんな病気?―インフルエンザウイルスの有無を議論することには意味がない
記事2:インフルエンザワクチンの効果と副作用
記事3:お風呂に入っても大丈夫?―インフルエンザワクチンを打った後に気になる3つの疑問
記事4:インフルエンザワクチンを打つべき人とは
記事5:インフルエンザの予防接種ーいつどんな病院で受ける?
記事6:インフルエンザの治療―抗インフルエンザ薬は症状改善を1日早める
記事7:インフルエンザ-タミフル®の予防投与についての考え方
記事8:インフルエンザの検査とは 検査なしでも診断書はもらえる
記事9:インフルエンザの予防について
記事10:インターネット上の医療情報についての考え方―医療における「正しさ」は難しい
記事11:高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型について
記事12:インフルエンザの基礎知識
記事13:インフルエンザの治療法 安静と睡眠が治療に大切
記事14:インフルエンザの治療―4つの抗インフルエンザ薬に対する考え方
記事15:インフルエンザの治療-漢方薬について

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授
岩田 健太郎 先生
日本の感染症診療の第一人者およびオピニオンリーダー。医学だけでなく哲学から社会科学まで幅広い分野において造詣が深く、多くの著作で知られる。臨床医としては「臨床とは常に正解があるものではなく、ケースバイケースでありさまざまな選択肢を持ちながら一人一人それぞれにあった治療を考える」姿勢で、科学者としては「常にフェアな立場でさまざまな事象をみる」姿勢で医学と向き合い続けている。
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