病院では、医師が必要と判断したときに、「インフルエンザ迅速診断キット」を使用して診断します。鼻の穴に棒を入れて、鼻の奥をこすり、鼻の中の液をとって、そのなかにインフルエンザウイルスがいるかどうかを調べます。鼻の奥をこする際に、多少の痛みを伴います。検査の結果は15分ほどでわかります。
注意したいのが、検査のタイミングです。抗インフルエンザ薬を内服する場合は、発症から48時間以内に飲まないと効果が得られません。しかしその一方で、発症したばかりの頃は、ウイルス量がキットで検出できる量に至っておらず、本当はインフルエンザでも陰性と出てしまうことがあるのです。発症6時間で3~4割、発症12時間で1~2割の児について、インフルエンザであっても陰性と出てしまうというデータもあります。
熱が出てすぐに検査をするというのはお勧めしません。検査を行う時間については、医師と相談して決定することが望ましいでしょう。また、受診する際は、インフルエンザの疑いがある場合は別室に隔離することもあるので、受付時に症状をきちんと伝えることが大切です。
抗インフルエンザ薬には内服薬(オセルタミビル)、吸入薬(ザナミビル、ラニナミビル)、注射薬(ペラミビル)があります。投与法、投与量は年齢や体重、児の状態によっても違います。医師の処方を守って使用しましょう。
入院の必要がない症例では、基本的には治療薬は必須ではありません。意外かもしれませんが、インフルエンザの多くは治療せずに自然に治る病気だからです。一般的には2、3日で解熱し、3~7日間で自然治癒するとされています。
抗インフルエンザ薬の現時点で言われている効果は、発熱期間を1日程度短縮すること、中耳炎の合併率を下げることです。抗インフルエンザ薬を不必要に投与するデメリットは、副作用の問題、抗インフルエンザ薬耐性株といった薬が効かないインフルエンザを作ってしまう可能性があること、新型インフルエンザなどが流行した時に薬が不足してしまうことなどが挙げられます。
抗インフルエンザ薬の投与によって、重症化や脳炎・脳症などの怖い合併症を起こしにくくできるかどうかは残念ながらはっきりしていません。
登校基準については、2012年度より出席停止基準が変更され、「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで」と定められています。
オセルタミビルの効果は上述した通りです。服用すべきかどうかという点に関しては、絶対的な投薬の必要はありません。重症化のリスクのある患者さんや、入院を必要とする場合などには使用を積極的に検討しています。
また、オセルタミビル内服の有無で脳症などの重篤な合併症の予防効果は認められていません。
オセルタミビルは一般的には安全な医薬品ですが、主な副作用として腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状があります。その他、非常にまれな副作用として、アレルギーや肝障害、腎障害、皮膚障害、血球の減少、精神神経症状などは添付文書(薬の説明書)上の記載があります。動悸、血圧低下、息苦しい、皮膚の発赤、意識がぼんやりする、普段と違うとっぴな行動をとるなどがあれば、使用をやめてすぐに受診するようにして下さい。
また、インフルエンザになり、オセルタミビルを内服していたこどもが転落・飛び降りなどの異常行動をとるということが過去に相次ぎました。
それらの異常行動とオセルタミビルとの因果関係は事実上はっきりしていません。事実関係がないとも言い切れないことより、原則として10歳以上のこどもにはオセルタミビルの使用を差し控えるように言われています。
ただし、副作用などによって他の抗インフルエンザ薬の使用ができないときは、服用した際のリスクや、こどもをひとりにしないといった注意点を説明して、相談の上処方することはあります。
国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)
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