例年12~4月頃に流行するインフルエンザは、38℃以上の高熱や体のだるさ、咳、鼻水などの症状が現れることで知られています。特に子どもは中耳炎の合併や熱性けいれん、気管支喘息などの誘発につながることがあるほか、ときにインフルエンザ脳症に発展することもあるため、インフルエンザの発病・重症化を予防する予防接種を受けることが重要です。
この予防接種は大人の場合は、1回の接種で予防効果が期待できますが、13歳未満の子どもの場合は、大人と異なり2回接種する必要があります。では、なぜ子どもは2回受ける必要があるのでしょうか。1回の接種では効果はないのでしょうか。
厚生労働省では、13歳未満の子どものインフルエンザ予防接種は2回行うことを推奨しています。これは、子どもの場合にはインフルエンザワクチンを2回接種したほうが、より高い抗体価*の上昇が見られるといわれているためです。また、13歳以上であっても持病などが理由で免疫が抑制されており、インフルエンザにかかりやすく重症化しやすいと判断される方の場合には、医師の判断で予防接種を2回行うことがあります。実際のインフルエンザワクチンの接種量は年齢別に次のように定められています。
*抗体価…ウイルスに反応できる抗体の量
13歳未満の子どもがインフルエンザの予防接種を1回しか受けられなかった場合でも、予防接種をしないよりは発病や重症化のリスクを下げられると考えられます。また、世界保健機関(WHO)によれば、9歳以上の子どもは1回の予防接種が適切だといわれています。
2回接種することが難しい場合は1回の接種でも多少の効果が期待できると考えられますが、より高い予防効果を得るためには可能な限り2回予防接種を受けることが望ましいといえます。
インフルエンザの流行時期は毎年12~4月頃といわれています。そのため12月中旬までには予防接種を完了させておくことが望ましいでしょう。予防接種を2回受ける場合は、1回目との間隔を2~4週間あける必要があるため、これを踏まえて1回目の予防接種をなるべく早く受けることを検討しましょう。
子どもに限らず、インフルエンザは予防接種を行っても、感染を完全に予防することはできません。ただし、予防接種をすることで発病を一定程度予防できるほか、重症化を予防することができるといわれています。
特にインフルエンザワクチンはインフルエンザの重症化を防ぐ点で有効と考えられています。インフルエンザは発病しても1週間程度で軽快することが一般的です。しかし、ときに重症化して肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症が現れることで、入院が必要となったり、命に関わる状態になったりすることもあります。インフルエンザワクチンを接種することによって、これらの重症化が予防できると考えられています。
インフルエンザの予防接種は新型コロナウイルス感染症の感染や重症化を防ぐ効果はありません。
ただし、2020~2021年にかけての冬は例年通りインフルエンザが流行するだけでなく、新型コロナウイルス感染症が流行することが予想されており、同時流行によってインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の鑑別が難しくなることやインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の合併による重症化などが懸念されています。そのため、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行に備えて、日本感染症学会などよりインフルエンザの予防接種が強く推奨されています。
これまでに解説したことからも、13歳未満の子どもの場合は、インフルエンザの予防接種を2回接種することが望ましいです。1回の接種でも多少の効果を示すことが期待されますが、より十分な発病・重症化を予防するためにも、適切な期間で予防接種を受けることが大切です。
特に2020~2021年の冬はインフルエンザだけでなく、新型コロナウイルス感染症の流行も懸念されています。2020年の夏、南半球のオーストラリアでは通常インフルエンザの流行期に相当する季節でしたが、インフルエンザの流行はほとんど見られませんでした。これは、世の中が新型コロナウイルスの流行によって、一般的な感染症予防対策が徹底していたためだと考えられ、日本でも同様のことが起こる可能性が指摘されています。
したがって、日本でも引き続き感染症対策を心がけるとともに、インフルエンザウイルスの重症化を可能な限り防ぐため、さらに2つの感染症の同時流行に備えて、インフルエンザの予防接種を受けることは極めて重要であるといえるでしょう。
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