概要
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザに伴って発症する、意識障害やけいれんなどを主な症状とする病気です。
インフルエンザを発症した後に、意識や言葉、行動などに異変が生じ、ときに生命に関わることもあります。そのため、インフルエンザ脳症を発症した場合は、入院による集中的な治療が必要とされます。
インフルエンザ脳症は、主に3-13歳くらいのお子さんにみられる病気として知られていますが、大人が発症するケースもあります。
原因
インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった後に、脳に異常な炎症が起きることで発症すると考えられています。具体的には、炎症によって脳がむくんだ状態になり、脳が腫れたことによって頭の骨に囲まれた脳内の圧力が上昇して、さらに脳にダメージを与えると考えられています。
インフルエンザウイルスは、すでにインフルエンザにかかっている人の唾液や鼻水などを近くで吸い込む、あるいは触った手を介して感染します。
症状
インフルエンザ脳症の主な症状は、意識障害、けいれん、異常な言動・行動の3つです。
意識障害
具体的には以下のような症状がみられます。
- ぼーっとする
- 人の名前や自分のいる場所が分からない
- 今日が何月何日なのかが分からない
- 眠ってしまう
など
重症の意識障害の場合、呼びかけたり刺激したりしても起きないことがあります。
けいれん
全身または体の一部がぴくぴく、ガクガクと動くことです。けいれんが15分以上続く場合や、繰り返す場合は特に注意が必要です。
異常な言動・行動
異常な言動や行動とは以下のようなものです。
- 幻覚が生じる
- 意味の通らない言葉を喋る
- ろれつが回らない
- 突然恐怖や怒りを表す
など
インフルエンザ脳症では、発熱も高い割合でみられます。また、成人のインフルエンザ脳症は小児より少ないものの、症状の重症度においては軽視できないと考えられています。
検査・診断
問診と診察、意識障害などの神経所見からインフルエンザ脳症を疑ったときには、頭部CT検査、脳波検査などを行います。頭部CT画像からは、以下の特徴が確認されます。
- 本来なら白くみえるはずの脳全体または一部が灰色にみえる
- 脳と脊髄のつなぎ目である脳幹がむくんでいる
- 脳幹のまわりのスペースが狭くなっている
- 白質と灰白質の境が分かりづらい(皮髄境界不鮮明)
脳波では、異常が見られることが多いです。これらの検査以外に、可能な場合は、脳MRI検査を行うこともあります。
また、意識障害の原因となる他の病気と見極めるために、必要に応じて血液検査、尿検査、可能であれば髄液検査を行うこともあります。インフルエンザウイルスの診断には、主にインフルエンザウイルス迅速抗原検査、可能な施設ではより鋭敏なPCRなどの核酸増幅検査が行われます。
治療
インフルエンザ脳症は、ときに生命に関わる危険な病気となりうることもあります。そのため、まずは生命を守るために全身状態の管理を行う必要があります。具体的には、集中治療室などに入院して、呼吸や循環のサポート、けいれん、体温などの全身管理します。
原因となるインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス薬を使用します。また、炎症による脳浮腫を改善するために大量のステロイドを用いたパルス療法を行い、患者さんの免疫系が活性化することを防ぎます。けいれんが生じたときにはけいれんを止めるための薬物治療を行ったり、炎症によって脳の圧力が高まった場合には、脳圧をみるモニターをつける手術をしたり、脳圧を下げる点滴治療や全身管理を行います。
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