インタビュー

インフルエンザの治療――漢方薬について

インフルエンザの治療――漢方薬について
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

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この記事の最終更新は2015年06月03日です。

インフルエンザに対しては、漢方薬を用いることもあります。なかでもよく使う麻黄湯(まおうとう)は、体をあたためることによりインフルエンザの治癒を早めます。またインフルエンザに限らず、ウイルス感染症にかかったときには、あえて体をあたためることにより治す方法もあるといいます。今回は、神戸大学感染治療学教授の岩田 健太郎先生に、ご自身が実践しているかぜの治し方も含めてお話しいただきました。

そもそも漢方診療は、体質、体力、抵抗力、症状の現れ方などの“(しょう)”が全てです。インフルエンザウイルスはいてもいなくても関係ありません。漢方では、ウイルスの種類で治療が決まるわけではないのです。

しかし、典型的なインフルエンザは表証(急性期)、実証(体力充実)、寒証(悪寒)になるので、麻黄湯がよく合っています。ちなみに、自分は麻黄湯を使うと決定しているときにはインフルエンザの迅速検査は行いません。検査は痛いですし、その後の処方が変わらないのであれば、行う意味はありません。

麻黄湯を使うかどうかは検査が決めてくれるわけではなく、証が決めてくれます。検査の結果が陽性でも陰性でも、麻黄湯を使うときは使うのです。

麻黄湯は、体をあたためることによりインフルエンザの治癒を早めます。このため麻黄湯を出すときは、効果が目減りしてしまうので、解熱剤であるアセトアミノフェンはあえて使いません。そして必ず「熱は上がりますよ」という説明をします。

必ずしもエビデンスがあるわけではありませんが、自分は、ウイルス感染症に関してはあえて熱を上げることによる治療をよく行います。これは布団をかぶって暖かくして汗をかかせる治療です。特に子どもの場合には、あたたかくして熱を上げるほうが早くウイルス感染症が治ります。

これも陥りがちな勘違いですが、「体温計をなおす」ことが治療の目的ではありません。体温計で測ったときの熱を平熱にするよりも、早く病気を治すことが大切です。たとえ一時的に熱がぐっと上がってしまったとしてもウイルス感染症を早く治すことができる、本人が一番楽になるのが大切なことです。

自分はよく海外出張に行きますが、海外では地域によって漢方が妙な誤解を生んでしまうこともあり、漢方薬を持って行きにくい場合があります。このため海外でかぜになってしまったときは、布団をかぶって暖房をしっかりかけて、できる限り厚着をしてかぜを治します。

先日、海外出張したときにかぜをひいてしまったことがありました。このときには飛行機の中で一人だけ厚着をして寝て、5時間で治すことができました。あたたかくするだけでも、十分に麻黄湯と同じ効果を得られるのです。

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