インタビュー

高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型について

高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型について
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

時折、鳥への感染が報道される「高病原性鳥インフルエンザ」。とにかく「よく分からない」というイメージがあります。実際にはどのような特徴があるのでしょうか? 神戸大学感染治療学教授の岩田健太郎先生に、高病原性鳥インフルエンザについてお聞きしました。

高病原性鳥インフルエンザとは?

高病原性鳥インフルエンザとは、H5N1型のインフルエンザのことを指します。ヒト―ヒト感染はしないものの、非常に死亡率が高く、東南アジアで流行しています。死亡率が高いことの原因としては、普通のインフルエンザは上気道感染が中心なのに対して、下気道まで感染しやすく、肺炎を起こしやすいという特徴があります。また、これまで経験していないインフルエンザであるため免疫が全くできていないことも、死亡率が高い原因として挙げられます。ただし、単純に流行国が途上国であるため、医療水準が弱いこともその一つの要因としては考えられます。

高病原性鳥インフルエンザの症状は?

先述したように、普通のインフルエンザは上気道症状中心ですが、高病原性鳥インフルエンザは下気道症状を伴いやすく、肺炎を起こしやすいのが特徴です。そのため重症化しやすく、死亡率も高くなります。

高病原性鳥インフルエンザの治療は?

高病原性鳥インフルエンザについては、はっきりとした治療法がわかっておらず、コンセンサスも全く得られていません。治験もありませんし、これからいろいろと試してみましょう、という状況です。ただし、死亡率の高いものにはありとあらゆるものを使うのが基本になります。このようなときにこそ、ラピアクタ®なども使う可能性があります。

高病原性鳥インフルエンザにかかった後の生存期間は?

高病原性鳥インフルエンザにかかった後の生存期間は、先述したようにとても悪いです。普通の季節性インフルエンザとは比較できないくらい悪く、死亡率も高くなっています。

高病原性鳥インフルエンザ、パンデミックの危険性は?

高病原性鳥インフルエンザのパンデミックについては、「可能性があると言えばある」というものです。この手の質問に対しては、可能性がないと言うことはできず、また正直なところ、その可能性がどれくらいあるのかも分かりません。過去に事例がないものに関しての未来予測というものは非常に難しいものです。とはいえ、全ての可能性を想定内にしておくべきですし、起きたら起きたでなんとかできるようにしておくべきです。

H5N1型インフルエンザに関してはインドネシア、カンボジアで流行しています。その他にもH7N7など含めた様々なタイプのインフルエンザがオランダ、タイ、ベトナム、中国、台湾などの国で確認されていますし、アメリカ、ヨーロッパでも出ています。日本でもいつ出てもおかしくないと言えます。日本に飛んでくる鳥の中にH5N1型が入っていることも時折あります。

高病原性鳥インフルエンザに対してどのように対応していくかという厚生労働省の計画は、すでに立っています。日本で鳥インフルエンザが出た時を想定した法律もできていて、指定感染症として扱っています。

ひとくちメモ:いわゆる「新型インフルエンザ」という言葉について

ヒトに感染するインフルエンザの中で、従来にない抗原を持った新しいインフルエンザのことを「新型インフルエンザ」と呼んでいます。もともとは、トリやブタに感染していたインフルエンザウイルスがヒトへの感染性を獲得することが発端となっています。

ところで、よく日本ではこの「新型インフルエンザ」という言い方をします。しかし、2009年に大騒ぎになった新型インフルエンザ(ブタインフルエンザ)は、今ではもう季節性のインフルエンザになってしまいました。この時、世界では「パンデミックインフルエンザ」という言い方をされていたのに、日本でだけ「新型」インフルエンザという言葉が使われていました。そもそも、いつか新型ではなくなるものに対して、新型インフルエンザという言葉を使ってしまうと、よく分からなくなってしまう危険があります。そのため、この記事ではあえて新型インフルエンザという言葉は使わずに、「高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型」をテーマにしました。

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