インタビュー

インフルエンザ――予防投与についての考え方

インフルエンザ――予防投与についての考え方
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

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この記事の最終更新は2015年03月13日です。

インフルエンザが流行する季節……学校や職場など、周囲でインフルエンザにかかる人が出ることはよくあります。そんなとき、オセルタミビルの予防投与が話題にのぼります。本当に予防投与は効果があるのでしょうか?リスクはないのでしょうか?神戸大学感染治療学教授の岩田健太郎先生にお聞きしました。

オセルタミビルの予防投与には、インフルエンザ感染症を防ぐ効果があると考えられます。そのほか、ザナミビルも用いることがあります。ラニナミビル、ペラミビルについては予防投与に用いることはありません。

通常の予防投与は10日間です。透析センターなどであればもう少し長く飲む場合もあります。しかし、どれくらい長く飲めるかというのは実は定説がありません。何日間なら安全に飲めるというデータは不十分なのが現状です。ただ、おそらく何か月も飲む薬ではないと思います。

「予防投与をするべきとき」は一概にはいえず、ケースバイケースです。もちろん、周囲や家族がインフルエンザになったときに限定すべきだというのは間違いありません。
はっきりと予防投与をしたほうがよいのは、病棟でインフルエンザ感染症が発生(アウトブレイク)したときです。このようなときは病棟の患者さんや看護師さんなどのスタッフにオセルタミビルを予防的に飲んでもらうことがあります。
そのほか、どうしてもインフルエンザになりたくないときには予防的にオセルタミビルを飲むのも1つの手段としてはありえます。先日娘がインフルエンザになったとき、自分自身はどうしても休めなかったため、オセルタミビルを飲みました。
たとえば、受験前に家族がインフルエンザにかかってしまったとします。そのようなとき、オセルタミビルを飲むというのは1つの選択肢としてありえます。「今はどうしてもインフルエンザにかかりたくない」人にはオセルタミビルの予防投与をすることにも価値があります。「どうしても」の度合いによって予防投与の価値は異なると考えるべきです。

オセルタミビルには中枢神経の副作用があるかもしれないというのは1つの事実です。世の中には100%安全な薬はありません。オセルタミビルを飲んだ子どもがビルから飛び降りたという事例もありました。ただし、これはインフルエンザ脳症のせいかもしれません。先ほどの受験の話でいえば、オセルタミビルの中枢神経系への影響が受験のパフォーマンスに影響を及ぼすリスクもあります。

インフルエンザとオセルタミビルのリスク、ベネフィットをよく考えながら飲むことが大切です。世の中全てが薬害だという考え方はよくないし、それといってインフルエンザ感染症を無視するのもよくないです。

基本的にはインフルエンザは短期決戦型でスカッと症状が出て、スカッと治ってしまう病気であり、かかってもほとんどの人は回復してしまうような病気です。オセルタミビルを飲むリスクを考えて、かかってしまう可能性を残すというのも1つの選択肢なのです。

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