日本国内では新型コロナワクチンの3回目接種が承認され、また季節性インフルエンザの流行シーズンに入り、インフルエンザワクチンの接種も推奨されています1。そのようななか、HPV ワクチンの積極的勧奨再開が了承されたニュースが話題になりました。このようなワクチンには種類があり、種類によって特徴や接種回数、接種間隔、費用などが異なります。今回は各々のワクチンの種類や接種間隔について解説します。
新型コロナワクチンやインフルエンザワクチン、HPVワクチンなどワクチンは成分によって、不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン、生ワクチン、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンやウイルスベクターワクチンなどに分けられます。
病原体の毒性を弱めたものを材料にして作られており、少ない回数で免疫を得ることができます。麻疹、風疹ワクチンなどが分類されます。
感染する力を失わせた病原体や、病原体の部品を材料にして作られており、一般的に複数回接種する必要があります。インフルエンザワクチンは不活化ワクチン、HPVワクチンは組換えタンパクワクチンに分類されます。
ウイルスを構成するスパイクタンパク質の設計図となる遺伝情報をもとに、ヒトの細胞内でウイルスのスパイクタンパク質を作り、そのスパイクタンパク質に対する抗体が作られることで免疫を獲得し感染症を予防します。日本で承認を受け供給されているファイザー社や武田/モデルナ社の新型コロナワクチンはmRNAワクチンに分類されます2。
無毒化されたアデノウイルスなどに、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝情報を組み込んだワクチンです。アストラゼネカ社の新型コロナワクチンは、ウイルスベクターワクチンに分類されます2。
ワクチンのなかには、不活化ワクチンのように複数回接種して初めて有効性が確立するものもあります。このようなワクチンでは十分な効果を得るために、一定の間隔で複数回ワクチンを接種します。
たとえばHPVワクチンは不活化ワクチンなので、合計3回接種する必要があり、接種間隔は2回目が初回から約3か月後、3回目は2回目から約6か月後の間隔で約1年以内に全て完了することが勧められています。なお、異なるワクチンを同時期に接種する場合、種類によっては間隔が決まっているものもあるため注意が必要です。
では、新型コロナワクチンを接種しながら、インフルエンザワクチンやHPVワクチンを接種する場合はどのようなスケジュールで接種するとよいのでしょうか。
現在、日本国内で接種できる新型コロナワクチンは、ファイザー社、武田/モデルナ社、アストラゼネカ社の3種類です。厚生労働省によると、新型コロナワクチンを接種した場合、そのほかのワクチンは、たがいに2週間以上間隔を空けることとされています3。
また、12歳以上が接種対象となっているファイザー社のワクチンについては、1回目と2回目の接種間隔は3週間、モデルナ社のワクチンについては4週間と定められています。つまり、新型コロナワクチンの接種を始めると、2週間の間隔を確保するため、HPVワクチンやインフルエンザワクチンの接種はしばらく待たなければなりません。
これから新型コロナワクチンを接種する方は、できれば接種を始める2週間前にHPVワクチンやインフルエンザワクチンの接種を済ませておくほうが望ましいです。すでに新型コロナワクチンの接種を終えた方は、2回目接種の2週間後からHPVワクチンやインフルエンザワクチンを打ち始めることができます。
HPVワクチンを1回または2回接種している人が、新型コロナワクチンの接種のために一時中断する必要が出てくる場合もあるかも知れません。しかしこの場合、もしHPVワクチンの接種を1~2か月遅らせたとしても、大きな影響はないと考えられます。接種間隔が変わっても大丈夫かどうか不安だという人は、接種を受けた病院・クリニックなどで相談してみてください。
なお、アストラゼネカ社の新型コロナワクチンは、4~12週間の間隔で2回接種することとなっています4。この場合、前後2週間の間隔を空ければ、途中にHPVワクチンやインフルエンザワクチンの接種をはさんでも問題ありません。インフルエンザワクチンとHPVワクチンなど、不活化ワクチンや組換えタンパクワクチン同士であれば接種間隔に制限はありません5。
原則自己負担ですが、接種費用が市区町村によって公費負担されているところもあるため、お住まいの市町村や医療機関にお問い合わせください。
年齢に関係なく無料で接種が可能です。
原則無料で接種できるのは、定期予防接種の対象である小学校6年生~高校1年生の学年相当の女子のみです。
HPVワクチンは3回接種する必要があり、全3回接種するのに通常6か月かかります。このため全3回を無料で接種する場合は、高校1年の11月末までに1回目を接種すれば、接種間隔を短縮することで間に合います。対象の期間以降では自費での接種となってしまうので、上記のワクチンの接種スケジュールを参考にしつつHPVワクチンを接種しましょう。
これから新型コロナワクチンやインフルエンザワクチン、HPVワクチンの接種を検討している方は、かかりつけの医療機関に接種スケジュールについて相談してみてください。また、高校1年の方で接種スケジュールの調整が難しい場合でも、市町村によってはHPVワクチン接種期限を延長したり助成がでる自治体もありますので、お住まいの市町村にお問い合わせください。
参考文献
慶應義塾大学 医学部 産婦人科学教室
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