子宮頸がんは早期に発見することができれば手術治療を行うことができます。なかでも広がりが少ない初期の子宮頸がんであれば、子宮を温存した治療が可能です。また妊娠時に子宮頸がんが発見された場合にも母体の容体と胎児の発育度合いに合わせて適切な治療を行うことができます。
本記事では子宮頸がんの手術治療について解説します。
がんの手術治療の基本は“がんをすべて取りきること”です。そのため子宮頸がんの手術の場合にも、がんの広がりに応じて余白をつけて切除することが大切です。子宮頸がんの手術には子宮を温存できる手術と、子宮を全摘する手術があります。
子宮頸がんの手術治療の場合、がんの程度が比較的軽度であれば子宮を温存した治療方法を行うことが可能です。
円錐切除術とは子宮頸部をくり抜くようにして病変を取り除く手術です。子宮を全摘する手術とは異なり、腟のほうから介入していくため、開腹の必要もありません。また子宮そのものを残してがんを切除できるため、妊娠・月経などの子宮の機能はそのままにがんを治療することができます。
しかし病変が広範囲にわたり、頸部の切除部分が広くなりすぎるとさまざまな弊害が起きることもあります。たとえば妊娠・出産期に子宮頸部が胎児を支えきれなくなることで流産・早産を招いたり、閉経後の患者さんにこの治療を行うことで、頸部が閉じてしまったりすることがあります。
子宮全摘の手術方法は子宮体がんと同じで、摘出の範囲によって大きく3つに区分されます。
<子宮全摘の手術方法>
がんの広がりが子宮だけにとどまり、かつ浸潤がごくわずかなIA1期の場合には“単純子宮全摘出術”が行われます。その一方、がんの浸潤が著しい場合には“広汎子宮全摘出術”といって子宮の他に腟を3cm程切除し、子宮周辺の卵巣・卵管も広く切除します。“準広汎子宮全摘出術”はちょうど単純子宮全摘出術と広汎子宮全摘出術の中間的な存在で、子宮と浸潤している部分を切除します。
子宮を全摘する手術を行う場合、もちろん妊娠・月経などの機能はなくなってしまいます。しかし、初期の場合はホルモンを分泌する役割のある卵巣は温存されますので、ホルモンバランスが崩れてしまうことはほとんどありません。
前述のように、子宮頸がんの手術には病変部分だけをくり抜く円錐切除術と、子宮全体、あるいはその周辺の組織などまで摘出する単純子宮全摘出術があります。
円錐切除術は、子宮頸がんの前病変である子宮頸部の異形成(がんではないが異型の細胞が認められるもの)のある患者さんに対しては診断・治療的に行われますが、浸潤の浅いIA1期の患者さんに対しては診断目的に行われます。今後の妊娠希望が強い患者さんの場合、円錐切除の結果によっては子宮温存可能な場合もあります。また最近では比較的小さなIB1期までの子宮温存の希望が強い患者さんに対して、広汎子宮頸部摘出術という、子宮体部を残して子宮頸部だけを広範囲に切除するという術式も選択できるようになってきました。
広汎子宮全摘出術はⅠA2期以上の患者さんに多く行われます。子宮頸がんは進行すればするほど子宮の外への浸潤が広くなり、より広範囲を切除する治療が選択されるようになります。また、子宮全摘出術を行っても治療が不十分であった場合には放射線治療を併用することもあります。
さらにⅢ期以降の患者さんに至っては手術でがんを取りきることが難しいため、放射線治療、全身投与の抗がん剤治療が適応となります。
厚生労働省は妊娠が発覚した方への子宮頸がんの検診を徹底しています。検診の結果、万一妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、がんの容体と妊娠の周期を考慮して治療にあたります。
もしがんの状態がさほど進行しておらず、治療に急を要さないようであれば(上皮内がんまでであれば)、子宮頸がんは比較的進行が遅いため、お産後に治療を行うことも可能です。しかし、浸潤が予想されるような進行したがんの場合にはさまざまな配慮が必要です。
妊娠中にがんの浸潤が疑われる場合は円錐切除術を行うこともあります。この治療によって詳しい病期を知ることもできます。妊娠初期の患者さんであれば、まだ胎児が小さく出産まで時間がかかりますので、その結果、子宮温存が困難と判断されるくらい進行している場合は、妊娠継続は不可能で、子宮頸がんの治療を優先せざるを得ません。またその一方で胎児の発育が進み、保育器などでの育成が可能になる妊娠28〜30週目以降の患者さんの場合には、出産を早め、胎児を外に出してから母体の治療を行うこともあります。
しかし、妊娠15〜25週目辺りで胎児の発育状態が中途である場合には、「がんの治療をこれ以上待てるのか」「胎児の状態は安全なのか」を考慮し、場合によっては妊娠を終了させ、治療を行うこともあります。
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