インタビュー

労作性狭心症の原因・検査・治療法――患者さんの特徴とは

労作性狭心症の原因・検査・治療法――患者さんの特徴とは
メディカルノート編集部 [医師監修]

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この記事の最終更新は2017年07月24日です。

狭心症には「冠攣縮性狭心症」と「労作性狭心症」という2つの種類が存在します。労作性狭心症とは動脈硬化によって心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部に錆のようなものが溜まり、血流の流れが悪くなってしまう状態です。運動(労作)によって息が上がると発作が起こってしまうことから、このような名がつけられています。

今回は労作性狭心症の概要についてご説明します。なお、冠攣縮性狭心症については記事1『冠攣縮性狭心症の原因と症状‐胸の痛み(胸痛)と発作はなぜ起こる?』をご覧ください。

階段を登って疲れている人

労作性狭心症は運動することによって、発作が起こってしまう狭心症です。一般的に「狭心症」と耳にしてイメージされるのはこちらの労作性狭心症です。

人は運動をすると心臓の動きが活発になり、安静時よりも多くの酸素が必要になります。しかし、労作性狭心症の患者さんは冠動脈の一部が狭くなっており、運動後心臓に十分な酸素を送ることができません。そのため、運動後酸素不足となり発作が起こってしまいます。ここでいう発作とは、心臓が酸素不足を起こし、5〜10分間にわたって胸が痛くなったり苦しくなったりすることです。

労作性狭心症の罹患には大別して2つの原因があります。

<労作性狭心症の原因>

血管が細くなることを「狭窄」といい、冠動脈の狭窄は血管の動脈硬化によって起こります。動脈硬化とは血管が硬くなり血流が悪くなることです。血流が悪くなるとパイプの内側にコレステロールなどからなる粥腫(じゅくしゅ)が錆びのように溜まってきます。粥腫は最初比較的柔らかいのですが、徐々にカルシウムが沈着し、やがて石灰化を引き起こすと硬くなります。粥腫が石灰化すると血管の壁はさらに柔軟性、弾力を失ってしまい、最終的にその部分が狭窄となってしまいます。石灰化した血管を持つ方の実に30〜40%はその部分に狭窄を起こしているといわれています。

動脈硬化は、高血圧、ストレス、運動不足などさまざまな要因が集まって起こりますが、最も大きな原因は老化です。男性では50〜60代、女性では60〜70代を迎えると、個人差はありますが徐々に動脈硬化が起こってきます。

また一度起こった動脈硬化は自然によくなるということはありません。むしろ原因となっている生活習慣を改め、管理していかない限り、段階的に悪化してしまうことも特徴です。

危険因子とはその疾患を誘発する要因のことを指します。労作性狭心症を引き起こす危険因子として代表的なものは下記の通りです。

<労作性狭心症の危険因子>

労作性狭心症の危険因子は、動脈硬化の危険因子とも類似します。加齢に伴い罹患しやすくなる疾患や健康を害す生活習慣などによって動脈硬化が起こり、それによって労作性狭心症にも罹患しやすくなります。

労作性狭心症は治療をせず放っておくと、粥腫(じゅくしゅ)がさらに溜まり粥腫の崩壊とともに血栓形成が起こり血管の閉塞を来し心筋梗塞に発展します。労作性狭心症と心筋梗塞の違いは、狭窄部分の血流の有無です。

狭心症の段階では確かに血液の流れは悪くなっているものの、かろうじて流れていますので、心臓に酸素が少なからず供給されています。しかし、心筋梗塞の場合には不安定化した粥腫と血栓形成が重なり、血管を完全につまらせてしまうため、血の流れがそこで止まり、心臓に全く酸素が供給されなくなってしまいます。

心筋梗塞に罹患してしまうと心臓が壊死し、度合いがひどければその方の生命を脅かすこともあります。ですから動脈硬化、狭心症の段階でしっかり検査を受け、正しい治療を受けることが大切なのです。

労作性狭心症の場合、冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄すると発作の症状が出るといわれています。初期症状では、階段を登るなど軽い運動で発作が生じ、しばらくすると落ち着きます。

狭窄の度合いが80%、90%とひどくなると、少し動いただけでも発作が起こるようになり、さらにひどくなればじっとしていても発作が起こり、苦しくなってしまいます。このように狭窄がひどくなり、心筋梗塞の一歩手前まで差し掛かった狭心症のことを「不安定狭心症」と呼びます。

高齢者

労作性狭心症動脈硬化が始まる50〜70歳代以降の方に多くみられます。動脈硬化は男性のほうが早く始まる傾向があり、そのため狭心症の発症年齢も男性は50〜60代以降、女性は60〜70代以降と、男性の方がやや早いという特徴があります。

労作性狭心症の検査方法は複数ありますが、近年最もよく行われているのは心臓CT検査による画像診断です。労作性狭心症の検査については記事3『狭心症(労作性狭心症)の検査と治療-継続的な治療薬の服用が必要となる』で詳しく述べていますので、そちらをご覧ください。                                                

労作性狭心症は主に投薬、カテーテル治療、バイパス手術によって治療されます。薬物療法については記事3『狭心症(労作性狭心症)の検査と治療-継続的な治療薬の服用が必要となる』、カテーテル治療やバイパス手術については記事4『心臓手術とはー心臓カテーテル治療(PCI)とバイパス手術のメリット・デメリット』で詳しくお話ししています。

診療

労作性狭心症は罹患しやすい年齢になったら、どなたでも罹り得る疾患です。特に疾患、生活習慣などに危険因子を持つ患者さんは、症状が現れる前の段階できちんと検査をうけ、結果に応じた疾患の治療、生活習慣の改善などを行うことが大切です。

幸い日本では充実した健康診断を受けることができますので、検査結果をうまく活用すれば、狭心症そのものだけでなく、危険因子を早期発見、コントロールすることも可能です。

一方、すでに労作性狭心症の症状が出ている方の場合、危険因子の改善を行うことで進行を食い止めることは可能ですが、今出ている症状を治療なしで改善することはまず難しいでしょう。

そのためすでに症状のある方は医師の指導に従い狭心症の治療を受けながら、危険因子の管理も行うことが望ましいです。

労作性狭心症の症状である発作は運動後に現れますが、5〜10分経過すると自然に治まってしまいます。そのため、症状が軽いうちは病院を受診せず、その結果、悪化して不安定狭心症に発展してから受診する患者さんが非常に多いです。

しかし、狭心症の治療は早く取り掛かればそれだけ予後もよくなります。気になる症状がある方には早めの受診をお勧めします。

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