ろうさせいきょうしんしょう

労作性狭心症

最終更新日:
2020年08月21日
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2020/08/21
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概要

労作性狭心症とは、心筋(心臓を構成する筋肉)に酸素と栄養を送る“冠動脈”の一部が狭窄(きょうさく)する(狭くなる)ことで、運動中など心筋の酸素必要量が多くなるときに一時的に心筋が酸欠状態に陥る病気のことです。普段は自覚症状がないものの、階段の上り下りや軽い運動後など心臓のはたらきが活発になる際に、胸の痛みや締め付け感、吐き気などの症状が引き起こされます。通常は安静にして心拍数が落ち着けば数分で症状は落ち着いていきますが、冠動脈の狭窄が強くなると、このような“胸痛発作”が頻繁に起こるようになります。そして、最終的には冠動脈が完全に詰まって心筋が壊死(えし)する“心筋梗塞(しんきんこうそく)”に進行することもあるため、注意しなければならない病気のひとつです。

冠動脈が狭窄する主な原因は高血圧脂質異常症糖尿病などの生活習慣病喫煙習慣などによる動脈硬化であり、発症した場合は治療とともに生活習慣の改善も必要となります。

原因

労作性狭心症の根本的な原因は、心筋に酸素と栄養を送る冠動脈が動脈硬化によって狭窄することです。冠動脈が狭くなったからといって急激に症状が現れることはありません。しかし、階段の上り下りなど“労作”が生じると、心臓は全身により多くの血液を送ろうと活発に活動するようになります。そのため“労作”の後は心筋が活発にはたらき、多くの酸素と栄養が必要な状態になるのです。その際、冠動脈の動脈硬化で心筋に十分な血液が行きわたらない状態になると、一時的に心筋が酸欠状態に陥り“胸痛発作”を引き起こします。

冠動脈が動脈硬化を引き起こす原因は、高血圧脂質異常症糖尿病などの生活習慣病喫煙習慣、肥満などが挙げられ、多くはこれらのリスクがいくつも積み重なって発症します。

症状

労作性狭心症は階段の上り下り、重たいものの持ち上げ、坂道の歩行などの軽い運動をすると胸の痛みや圧迫感が生じ、安静にすれば数分以内で症状が治まるのが特徴です。

胸の痛みは心臓のある左前胸部にとどまらず、左肩、腕、首、顎、歯、上腹部などにも響くように放散するのが特徴で、なかには胸の痛みは感じないものの、別の部位の痛みのみを感じるといったケースもあります。これらの痛みの程度は人によって異なりますが、重度なケースでは冷や汗が出るほどの苦痛を感じることも少なくありません。

また、痛みや圧迫感のほかに吐き気や息苦しさ、めまいなどが生じることがあり、典型的な“胸痛発作”の症状が現れないことも多々あります。

検査・診断

労作性狭心症が疑われるときは次のような検査が行われます。

心電図検査

心筋の動きを電気的に捉えて、体表面から波形として記録する検査です。

心電図検査では心筋が酸素不足の状態に陥ると特徴的な波形が記録されるため、労作性狭心症の診断に必須となる検査です。

ただし、労作性狭心症は労作時でなければ心筋の酸素不足は起こらないため、安静時に記録する通常の心電図のほかにも運動した後に心電図を記録する“運動負荷心電図検査”を行うのが一般的です。

心臓CT検査

造影剤(血管が描出しやすくなる薬)を注射しながら心臓のCT画像を撮影することで、冠動脈の状態を描出することができる検査です。冠動脈は三次元で描出することができ、狭窄している部位や程度などを評価することができます。

冠動脈造影検査

脚の付け根や手首などの太い動脈からカテーテル(医療用の細い管)を挿入して心臓まで至らせ、そこから造影剤を注入することで冠動脈を描出する検査です。心臓CT検査よりも冠動脈の状態を詳細に調べることができます。ただし、体への負担が大きな検査であるため全ての患者に行われるわけではなく、カテーテル治療などを行う必要があるなど重症なケースで実施されます。

心臓超音波検査

心臓の動きや機能などを調べる検査です。労作性狭心症は胸痛発作を繰り返していくなかで心臓の機能が低下することも多いため、心臓の状態を評価するために行われます。

治療

労作性狭心症では重症度に応じて次のような治療が行われます。

薬物療法

冠動脈の狭窄が比較的軽度な場合には、冠動脈を広げたり心臓の活動性を低下させたりする薬を用いた薬物療法が行われます。また、冠動脈の動脈硬化の進行を予防するには、抗血小板薬の内服のほかに原因となる生活習慣病を改善するための薬が必要です。

カテーテル治療

冠動脈の狭窄が強く心筋梗塞に移行するリスクが高い場合には、カテーテル治療が行われます。カテーテル治療は、脚の付け根や手首などの太い動脈にカテーテルを挿入して冠動脈まで到達させ、狭窄した血管をバルーン(医療用の風船)で膨らませて広げたり、血管の内部に血管を広げる“ステント”を留置したりするなどの治療が行われます。

治療後はステントの周囲に血栓(細かい血の塊)ができるのを予防するため長く抗血小板薬を服用しなければなりませんが、最近はその期間も短くなりつつあります。体への負担は極めて少なく低侵襲(ていしんしゅう)治療といわれています。労作性狭心症を根本から改善することが可能です。

バイパス手術

カテーテル治療が困難な部位に狭窄が起きていたり、狭窄が複数か所にわたっていたりする場合に行われる治療です。

胃や腕、脚などから採取した血管や人工的に作られた血管で冠動脈が狭窄した部位の迂回路を形成します。大掛かりな手術が必要になるため、体への負担は非常に大きくなりますが、労作性狭心症を根本的に改善することができます。最近は、ロボット支援手術や、MICSと呼ばれる小さな切開で行う治療が可能になり、低侵襲治療が可能になってきています。

予防

労作性狭心症の根本的な原因は、冠動脈の動脈硬化です。

そのため、労作性狭心症を予防するには食事や運動習慣などの生活習慣を整え、喫煙習慣などを改める必要があります。また、定期的に健診などを受けて、動脈硬化の原因となる生活習慣病の有無を確認し、生活習慣病を発症しているときは適切な治療を続けていくことも大切です。

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