健康診断とは、現在の健康状態を調べ、病気の早期発見や予防につなげるためのものです。

健康診断にはさまざまな種類があり、たとえば事業者に実施が義務付けられているものを“一般健康診断”と呼びます。これには職場で定期的に受ける定期健康診断、就職の際に実施する雇入れ時の健康診断、特定の業務に就いている人が受ける特定業務従事者の健康診断、6か月以上海外で勤務する人が受ける海外派遣労働者の健康診断などがあります。

また、職場で健康診断を受ける機会がない個人事業主、自営業、専業主婦の人などは、お住まいの市区町村が実施する健康診断を受けることができます。

  • 定期的な健康チェックを行っていない人
  • 手軽に自分の健康状態を調べたい人
  • 新しい会社の入社前に健康診断を受ける必要がある人

職場で実施する定期健康診断は職種にかかわらず1年以内ごとに1回、雇入れ時の健康診断は入社前あるいは入社後に受けることになります。

また、特定の業務(労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務)に従事している人は、対象業務への配置替え時とその後は6か月以内ごとに1回、海外で勤務する人は赴任前と帰国後に健康診断を実施することが義務付けられています。

国民健康保険および後期高齢者医療保険に加入している人は、各市区町村と後期高齢者医療広域連合が行う健康診断を任意で年1回受けられます。この健康診断は、39歳以下、40~74歳、75歳以上に分けて実施されます。

健康診断の種類によって検査内容は異なりますが、主な検査として身体検査、血液検査、尿検査、胸部X線(レントゲン)検査、心電図検査があります。

身体検査

身長や体重、腹囲の計測、血圧測定のほか、聴力や視力の検査を行います。

血液検査

採血を行い、血色素量や赤血球数(貧血検査)、GOTやGPT、γ-GTP(肝機能検査)、LDLコレステロールやHDLコレステロール、血清トリグリセライド(血中脂質検査)、空腹時血糖やHbA1c(血糖検査)などの数値を調べます。

尿検査

尿検査では、尿の中にタンパク質や糖、血液などが出ていないかを調べることで、腎臓や肝臓、泌尿器の病気や機能異常の可能性を推し量ることができます。

自宅で尿を採取し検尿容器に入れて当日提出する場合と、当日に医療機関で採尿を行う場合があります。

胸部X線(レントゲン)検査

X線を用いて肺や心臓など胸部の臓器の状態を調べる検査です。肺炎や肺結核、気胸、胸水、心肥大などの病気の発見を目的として行われます。

肺が膨らんでいない状態では肺全体が画像に映し出されなくなるため、撮影時には息を吸い込み、しっかりと止めることが大切です。

心電図検査

心臓が鼓動を打つときに生じる微細な電気の強弱を波形グラフとして記録し、波形の大きさや脈のリズムなどから心臓の異常を調べる検査です。不整脈や虚血性心疾患をはじめ、さまざまな心臓の病気の診断に役立ちます。

生理中の人や、妊娠中あるいは妊娠の可能性がある人でも健康診断を受けることができますが、尿検査など一部の検査に影響が出たり、妊娠中の場合はX線の被ばくによる胎児への影響が心配されたりするため、事前に医療スタッフに申し出るようにしましょう。

前日・当日の食事が血液検査の結果に影響を与える場合があります。血液検査の項目に空腹時血糖がある場合には、検査の10時間程度前までに食事を済ませ、空腹時血糖がない場合には3時間半程度前に食事を済ませるようにしましょう。

また、激しい運動後に尿検査を行うと尿にタンパク質が出やすくなるため、前日・当日は激しい運動を避けましょう。

当日の服装については、胸部X線(レントゲン)検査などに影響するボタンや金属、ビーズなどがない無地のシャツを着用し、着替えのしにくいワンピースやストッキングは避けたほうがよいでしょう。ネックレスやイヤリングなどのアクセサリーはつけずに受診するか、事前に外しておくとスムーズです。

受付から健診終了までの時間は、健康診断の種類や医療機関の混雑状況などによって変わってきますが、トータルで2時間程度と考えられます。

また、健康診断の主な検査である身体検査、血液検査、尿検査、胸部X線検査、心電図検査のうち、血液検査では採血で針を刺すときに多少の痛みを伴います。

費用については、職場で行う健康診断の場合は会社の全額負担となります。各市区町村と後期高齢者医療広域連合が実施する健康診断においては無料の場合が多いものの、自治体によって自己負担額が発生することもあるため事前に確認しておくとよいでしょう。

なお、一般的な医療機関において自費で受ける場合の費用は、おおよそ10,000円前後と想定されます。

健康診断の結果は、後日に健康診断書が郵送されるか、当日あるいは後日に再度受診して健康診断書を受け取ることになります。受診する場合には、健康診断書を見ながら医師からの説明を受けることもあります。

医療機関によって健康診断書の様式が異なりますが、各検査の数値や所見などに加え、判定として“正常(異常なし)”“要経過観察”“要再検査”“要精密検査”“要治療”などと記載されていることが一般的です。

何らかの異常の疑いがある場合には“要再検査”、詳しい検査を必要とする所見があった場合には“要精密検査”、明らかな病気があり治療を必要とする場合には“要治療”と判定されます。

このような判定となった場合は放置せず、医療機関を受診して精密検査や適切な治療を受けるようにしましょう。

受診する医療機関は任意ですが、どこに行けばよいか分からない場合には健康診断を受けた医療機関を受診するとよいでしょう。必要に応じて専門の医師や医療機関を紹介してくれます。

健康診断の目的は、自覚症状がない初期のうちに異常を発見することや、病気の予防につなげることにあります。職場などで健康診断を受ける機会がない人も、市区町村が実施する健康診断を定期的に受けて、自身の健康状態を把握することが大切です。

また、再検査の必要がない場合であっても、異常値に近づいている検査項目があれば原因となる生活習慣を見直すようにしましょう。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。