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「お酒を飲まない」人でも脂肪肝になる?! NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)について知ろう

公開日 2016 年 09 月 20 日 | 更新日 2018 年 09 月 21 日

「お酒を飲まない」人でも脂肪肝になる?! NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)について知ろう
島 俊英 先生

済生会吹田病院副院長/消化器・肝臓病センター

島 俊英 先生

脂肪肝と聞くと「お酒をたくさん飲んだり、ご飯を食べ過ぎたりする人がなるもの」と考える方は多いのではないでしょうか。しかし、脂肪肝にはさまざまな種類や発症の仕方があり、お酒を飲まない方や太っていない方でも発症する可能性があります。なかでもNASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、お酒を飲まなくても肝硬変や肝がんという重症な病気に進行する可能性がある肝障害です。NASHは現在、医療者を含めた社会にまだ十分認知されておらず、見逃されてしまっていることも多いと思われます。今後はNASHについて、医療者はもちろん、一般の方も知っておく必要があります。NASHとはどのような病気であり何が課題なのでしょうか。NASH治療・研究済生会吹田病院副院長の島俊英先生にお話しいただきます。

脂肪肝とは―「肝臓に脂肪がたまりすぎた」状態

NASHについてお話しする前に、まずは脂肪肝の病態についてご説明しましょう。

脂肪肝とは肝臓に中性脂肪が蓄積し、フォアグラのようになった状態を指します。

脂肪肝の原因は、一般的には食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、肥満などといわれていますが、なかには非肥満者でも脂肪肝を発症する可能性があります。特に危険なのは、短期間で急な体重増加がみられた方です。たとえば身長160㎝で体重54kg (BMI 21)という痩せ型の場合でも、最近に5㎏以上の急激な体重増加があった場合は脂肪肝のリスクが高まります。

つまり、肥満ではない方でも脂肪肝になる可能性は十分にあり、「私は太っていないから脂肪肝にはなりません」とはいえないのです。まずはこのことをよく知っておいてほしいと思います。

NASHとは―お酒を飲まないのに脂肪肝になる?

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は脂肪肝のなかでも肝硬変や肝がんを発症するリスクが高い病気のことを指します。お酒を飲まない方が発症するという特徴を持ち、初期段階の脂肪肝を主な症状として、進行すると肝臓線維化やがん化が起こる場合があります。

NASHの原因―肥満や加齢が大きな要因となる

私たちが2015年に欧文誌「Hepatology Research」で発表した後に、736例へ解析対象を増やした最新の研究では、NASHの発症に影響を及ぼす因子として挙げられるのは、下記のようなものであることが明らかになっています。

nashの原因 

こうしたことから肥満や加齢、そして特に男性では高血圧といった要因を持っていると、NASHを発症しやすいといえるでしょう。

そのほか一部の薬剤の使用、成長ホルモン分泌不全症、膵頭十二指腸切除後といった要因も、NASH発症の要因になることが知られています。

また、近年ではNASHの発症にいくつかの遺伝子が関連していることが明らかになってきました。吹田病院では遺伝的な面からもNASHの解明を進めています。

▼NASH発症に関連する遺伝子の研究については記事3『NASH研究の最前線を解説―NASH・NAFLDと生活習慣病との関連や、原因遺伝子の解析は?』で詳しくご紹介していきます。

NASHの患者数・男女比

日本消化器病学会NAFLD/NASH診療ガイドライン2014によると、NASHの有病率はこれまでどの国や地域でも正確に把握されてきていません。近年では世界的に3~5%と推定されるようになってきています。

また同ガイドラインによると、NASHの有病率に男女で差があるかについては、研究報告が少ないため不明とされています。しかし非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率と同じ(女性よりも男性でより高頻度に発症する)傾向を示しているとの報告もみられています。NASHの有病率の男女比については今後より正確な調査が必要といえるでしょう。

さらに年齢分布については報告数が少なく、正確な報告が少ないために一定の見解が示されていないものの、日本においては男性では中年層、女性では高齢層に多いとする報告もなされています。私が診療をしている感覚としても、男性では30~40代の比較的若い方が多く、女性では閉経後の高齢層が多いと思います。

「NASHから肝硬変になる患者さん」はどれぐらいの割合?

肝硬変の成因別実態2014という書籍で紹介されているデータを紹介しましょう。第50回肝臓学会総会の際に泉並木先生が主催した全国統計に、吹田病院も参加していましたが、この統計では26,293例の全国の肝硬変が集計され、C型肝炎が53%を、アルコール性が18%を占め、その他の肝硬変が11%であることが明らかにされました。恐らくこの「その他の肝硬変」の11%のほとんどが、NASH肝硬変と推測されます。

NASHは進行して肝硬変になると肝生検を行っても脂肪滴が消失したBurn out NASHと言われる状態になり、原因不明の肝硬変(cryptogenic cirrhosis)と診断されることが多いのが実態です。従って、NASH肝硬変の正確な統計を取ることは困難ですが、恐らく、肝硬変の1割程度がNASHからの肝硬変と推測されます。

「NASHから肝がんになる患者さん」はどれぐらいの割合?

東大の建石先生が、犬山シンポジウム参加施設の33,782例の肝がんを集計し、論文に発表しています。それによると2010年の肝がんの成因は

  • B型肝炎が約15%
  • C型肝炎が約60%
  • 非B非C肝炎が約25%

という割合でした。この非B非C肝炎の主たる疾患はアルコール性とNASHと考えられますが、Burn out NASHに進行するとNASHと診断できなくなるので、正確な統計は困難です。おそらく、NASHからの肝がんも全体の1割程度ではないかと推測しています。

以上のように、NASHからの肝硬変、肝がんは1割程度で多くないと考えられます。しかし、C型肝炎は診断が容易であり、診断された患者に対して定期的に検査、治療が行われているので肝がんでも早期に見つかることが一般的です。NASH肝硬変、肝がんの問題点は、“たかが脂肪肝”と放置された患者さんの一部がこのような病態になるので、腹水がたまった進行した肝硬変や、手が付けられない進行肝がんで見つかることが珍しくありません。かといって、2000万人もいる脂肪肝全員に肝がんのスクリーニングを行うわけにもいきません。このことから、いかに肝硬変、肝がんに移行する危険のあるNASH患者をみつけられることができるのかということが重要な課題となっています。

NASHの症状―「自覚症状がない」ことが特徴

肝疾患では総じて自覚症状がなく、NASHにも目立った症状は現れません。気がついたときには進行してしまっているというケースも多くみられます。

NASHとNAFLD・NAFLの違い

肝臓の障害を表す名称として、NASH以外にもNAFLD、NAFLなどがありますが、それぞれNASHとは何が異なるのでしょうか。まずそれぞれの正式な名称をみてみましょう。

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・NAFLD(ナッフルディー)  非アルコール性脂肪性肝疾患

・NAFL (ナッフル)      単純性脂肪肝

・NASH(ナッシュ)        非アルコール性脂肪肝炎

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NAFLDは、アルコールを原因としない脂肪肝疾患の総称です。このNAFLDのなかにNAFLとNASHが含まれます。

NAFLDのうちの多くはNAFL(単純性脂肪肝)であり、NAFLは炎症や線維化を伴わない脂肪肝です。一方、NAFLDのなかには炎症や線維化を伴うものがあり、これがNASH(非アルコール性脂肪肝炎)とよばれます。

NASHの分類・進行・経過―肝硬変への進行や生存率

NAFLDはどのように分類される?

現在、NAFLDの分類としては、Matteoni分類が広くこの分野で用いられています。Matteoni分類ではNAFLDをタイプ1~4の4種類に区別しています。

【Matteoni分類】

この表はタイプ1からタイプ4と数字が大きくなるにつれて肝臓の状態は悪くなっていきます。たとえば、表におけるタイプ4は肝臓の線維化が起こっている状態ですから、肝硬変や肝がんに進行するリスクが最も高いと考えられます。

また、Brunt分類(ブラント分類)という指標では、このタイプ4の線維化の程度をさらに細かく分けています。

【Brunt分類】

Brunt分類(ブラント分類)

Brunt分類(ブラント分類)におけるステージ3は前肝硬変(肝硬変になる直前の段階)、ステージ4は肝硬変になっている状態です。これらの場合は、将来的に肝不全や肝がんに至る可能性が高いため、肝疾患によって死亡するかもしれない段階といえます。ステージ3になる前の段階できちんと診断して治療していくことが重要になっていきます。

NASH→肝硬変→肝がんになる確率と、その5年生存率は?

肝臓学会が編集している「NASH・NAFLDの診療ガイド2015」には、NASHの5~20%が、5~10年の経過で肝硬変に進行すると記載されています。またそのようにして発症した「NASH肝硬変」が肝がんになる確率は5年で11%と記載されていますが、引用論文が少なく、まだ、正確な予後は明らかでないと思われます。日本におけるNASH患者は、肝硬変、肝がんが死亡する確率が高いと思われますが、まだ予後に関しては十分な統計データが集積されていないのが現状です。

NASHの予防―肥満改善・継続的な運動がカギ

体重管理については、体重だけをみるのではなく、脂肪と筋肉の比率を重視して行うことを推奨します。吹田病院ではNASHの疑いで肝生検を受けた方の体組成を測定していますが、そのなかには、体重だけをみればやや重い程度(軽度肥満)であるものの、筋肉が少なく脂肪は通常よりもはるかに多いという方が一定数います。このような方の場合は体重だけを測っても肥満に該当しないので、見落とされてしまいがちです。体重管理の際には体組成、体脂肪、筋肉量も同時にチェックするようにしましょう。

また、筋肉量が増えれば代謝も上昇し、肥満改善につながります。ですから、併せて運動を行うことがお勧めです。

肝がんへ進展させないために―病診連携とは?

NASHの予後は非常に重要な点です。吹田病院では、NASHの患者さんが将来どのような病気に罹るリスクが高まるのかという点にも着目しています。つまり、将来的に肝硬変や肝がんなどの肝疾患に至るのか、あるいは心血管病変を起こすリスクが高まるのかという点です。

繰り返しになりますが、NASHでは肝がんや肝硬変を発症するリスクが高まります。そのため、済生会吹田病院では病診連携(びょうしんれんけい:町の診療所と大規模病院が連携すること)という形をとりサポートを行います。つまり、日頃の管理は地域が行い、専門的診断・治療は吹田病院が診るという形の機能分化による病診連携です。

肝がんは早期発見が重要ですが、規模の小さい診療所やクリニックではがんのチェックが難しいので、地域の診療所には一般的な生活習慣病の治療や日常的な投薬をお任せして、肝がんの発見・治療については吹田病院が全面的な責任を請け負って管理にあたります。NASHの患者さんにはおよそ半年~1年に一度のペースで吹田病院に来院していただき、血液検査やエコー検査を行って肝がんを発症していないか、またNASHが悪化していないかを確認します。

また、吹田病院で行った検査の結果は診療所の先生にも共有して、患者さんの状態が悪くなっていれば手紙で投薬内容を提案することもあります。

引き続き記事2『自覚症状がないNASHを早期診断するために―済生会吹田病院の研究と取り組み』では発症に気付きにくいNASHの「検査」について、島先生にご解説いただきます。

 

NASH(島俊英先生)の連載記事

肝疾患(肝臓がん、ウイルス性肝炎、NASH)を専門とする。日本でトップクラスのNASH研究を手掛ける済生会吹田病院副院長の現在は、臨床データや国際的な報告、公的統計データなどをもとに、NASH病態の解明および侵襲性の低い診断方法の確立に尽力している。

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