概要
脂肪肝とは、脂質の1つである中性脂肪が肝臓内に多く蓄積した状態です。
脂肪肝には、飲酒量が多い人に起こるアルコール性肝疾患と、アルコールを摂取していないが生じる非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)があります。非アルコール性脂肪肝疾患の発症にはメタボリックシンドロームとの関連性などが指摘されています。非アルコール性脂肪肝疾患は、肝臓に慢性的な炎症が持続することで肝臓が硬くなる線維化を経て肝硬変へと進行する非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)と、線維化がなく肝硬変へ進行しない非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver: NAFL)に分けられます。10〜20%が非アルコール性脂肪肝炎、80~90%が非アルコール性脂肪肝です。
脂肪肝は無症状のまま経過し、健康診断などで初めて指摘されることもあります。脂肪肝を非アルコール性脂肪肝(NAFL)と思い込んで放置すると、肝炎から肝硬変、肝がんなどへと重篤な病気に進行することがあります。
また、脂肪肝は生活習慣に関連して発症することが多いと指摘されています。肝硬変などに進行していない脂肪肝の段階であれば、生活習慣を改めることで肝臓の状態が改善することが充分期待できます。アルコールの飲み過ぎを控え、体重管理などを心がけることが大切です。
また、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)と非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)の英語表記について、“alcoholic”および“fatty”は不適切用語と見なされるとの議論が欧米で起こり、2023年から NAFLD、NASH ではなく、metabolic dysfunction associated steatotic liver disease (MASLD)、metabolic dysfunction associated steatohepatitis(MASH)という用語を使用することが推奨されるようになりました。
原因
アルコール性肝疾患はお酒の飲みすぎによって生じます。一方、非アルコール性脂肪性肝疾患は、一般的に肥満やメタボリックシンドロームなどを原因として生じるといわれています。そのほか、やせ過ぎ、薬剤、遺伝性代謝疾患、妊娠といった特殊な原因によって脂肪肝が生じることもあります。
症状
脂肪肝は、明らかな自覚症状が現れにくい状態です。脂肪肝が進行して初めて食欲不振やだるさなどの自覚症状が現れるようになります。
脂肪肝の状態が進行すると、肝炎や肝硬変、肝がんなどの病気を発症することがあります。これらの病気が悪化するとむくみや黄疸、腹水などの症状が出現します。また、肝臓への血液の流れが滞るようになると、胃や食道を通る静脈に血液が流れて静脈瘤とよばれる瘤が形成され、破裂すると大量出血をきたす場合もあります。
脂肪肝は進行すると重篤な症状が現れる可能性がある状態です。無症状であっても、健康診断などで指摘された場合は放置せず治療を受けましょう。また、脂肪肝の患者は、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすいことが知られており、心血管系の病気に対しても注意が必要です。
検査・診断
血液検査で異常がみられた場合には、肝臓の状態を調べるために超音波検査などの画像検査が行われます。また、そのほかの肝臓の病気が疑われる場合には肝臓の細胞を採取する肝生検が行われることもあります。肝生検で得られた細胞を顕微鏡で詳しく調べることで、病気がどれくらい進行しているかを調べることができます。
治療
脂肪肝はその種類によって治療方法や生活で注意すべき点が異なります。アルコール性脂肪肝の場合、アルコール摂取量を減らすことが必要です。また、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)で肥満やメタボリックシンドロームなどが原因となっている場合は、運動療法を取り入れて減量すること、食事摂取量を調整することも治療につながります。なお、肥満の程度が強い場合には、食事の吸収を抑えられる手術を行うことがあります。
脂肪肝の治療では、日々の生活習慣を改善することが求められます。一度生活スタイルを改善しても、すぐに元に戻ってしまうと再び脂肪肝に陥ってしまうこともあります。こうしたリバウンドを避けるためにも、運動などを楽しみつつ、無理のない範囲で継続することが重要です。
脂肪肝の段階であれば、肝臓を健康な状態に戻すことも十分可能です。脂肪肝を指摘されたときには、早期に医療機関を受診して治療を始めましょう。
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