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肝機能障害とは? 肝機能低下を引き起こす原因と症状
肝臓は、生体にとって必須の働きを担う重要な臓器の1つです。その主な働きは、代謝と解毒です。糖・たんぱく質・脂肪を体内で使える形に変えて貯蔵し、必要な臓器に分配するとともに、有害な物質を分解し身体...
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肝機能障害とは? 肝機能低下を引き起こす原因と症状

公開日 2017 年 06 月 04 日 | 更新日 2017 年 06 月 05 日

肝機能障害とは? 肝機能低下を引き起こす原因と症状
竹原 徹郎 先生

大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、医学博

竹原 徹郎 先生

肝臓は、生体にとって必須の働きを担う重要な臓器の1つです。その主な働きは、代謝と解毒です。糖・たんぱく質・脂肪を体内で使える形に変えて貯蔵し、必要な臓器に分配するとともに、有害な物質を分解し身体に影響を及ぼさないよう排泄する働きがあります。その一方、肝臓は、沈黙の臓器と呼ばれるほど症状が現れにくい臓器の1つです。

肝機能障害とは、検査において肝臓の異常を表す数値がでることを指し、その結果として、肝機能が障害され何らかの困った症状が現れることをいいます。肝機能障害の原因は多岐にわたるといいますが、どのようなものが原因になり得るのでしょうか。今回は、大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学の教授である竹原 徹郎先生に肝機能低下を引き起こす原因や症状をお話しいただきました。

肝臓の仕組みと働き-主な働きは代謝、解毒、胆汁の生成・分泌

肝臓は、胃の右隣にある臓器で、胸部と腹部を区別する筋肉である横隔膜(おうかくまく)のすぐ下に位置しています。右上腹部のほとんどを占めるほど大きな臓器であり、1,200~1,500gほどの重さがあります。このため、肝臓は、人間のからだのなかで最も大きな臓器の1つといわれています。その主な働きは、代謝、解毒、胆汁の生成・分泌になります。

特に重要な働きは、代謝と解毒

肝臓の働きのうち、特に重要なものは、代謝と解毒です。代謝とは、糖・たんぱく質・脂肪を体内で使える形に変えて貯蔵し、必要な臓器に分配する働きをいいます。体内で工場のような役割を果たすとイメージしていただくとよいかもしれません。次に、解毒とは、体に不要になったものを分解し排泄する働きを指します。たとえば、アルコールや薬、老廃物などの有害な物質を分解し、身体に影響を及ぼさないよう排泄することです。これは、体内の不要なものを処分する焼却炉のような役割とイメージしていただくとよいでしょう。

肝臓

胆汁の生成・分泌

さらに、肝臓には、胆汁の生成・分泌という働きがあります。胆汁とは肝臓で生成された老廃物を流すと同時に、脂肪の消化吸収を助ける消化液でもあります。

このような肝臓の機能がなくなると、人間は生きてはいけません。肝臓は、生体にとって必須の働きを担う重要な臓器であるといえます。

肝機能障害の種類-肝機能障害には2つの意味がある

肝機能障害という言葉には、2つの意味があります。まず、血液検査において、肝臓の異常を表す数値がでるケースを広く肝機能障害と呼びます。次に、その結果として、肝機能が障害され何らかの困った状態になることも肝機能障害と呼びます。肝機能障害とは、これら2つを意味しており、混同され使用される例も少なくありません。つまり、実際に何らかの困った症状が現れているか否かに関わらず、肝機能障害を表すような異常な数値がでた場合には、広く肝機能障害と認識します。

肝臓の異常を表す数値が意味する肝機能障害

一般的に健康診断でいわれている肝機能障害は、前者であり、患者さん自身には何の症状も現れず、血液検査で肝炎の指標となるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の数値の異常がでることを指します。

肝臓は、非常に余力が強い臓器です。たとえば、肝臓の一部がなくなった場合であっても、基本的に何の症状も現れないといわれています。健康な方であれば、3分の2ほどの肝臓がなくなっても影響はなく、さらに、残った肝臓が元のサイズに戻り何事もなかったかのように暮らしていくことができるケースさえあるのです。そのため、肝臓の細胞が障害を受けたとしても必ずしも何らかの症状が現れるわけではありません。

肝機能障害の症状-黄疸・倦怠感・腹水など

ほぼ無症状だが、風邪に似た症状が現れることも

肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、少々の障害を受けていても症状が現れにくいことが特徴です。障害の程度が強い場合には、急性肝炎などの疾患名がつくことがあります。この場合、患者さん自身は身体の怠さや食欲不振など、風邪に似たような症状を自覚し、時に黄疸(おうだん:全身の皮膚や粘膜に過剰に色素が沈着した状態)を呈することもあります。肝機能障害が進行し、肝不全という状態になると、さらに腹水が溜まったり意識が低下するなどの症状がでてきます。強い肝障害が急激に起こりこのような状態になった場合を急性肝不全、肝障害の程度は強くないけれども長期に肝障害が続いた結果このような状態になった場合を慢性肝不全と言います。前者の典型的な疾患が劇症肝炎、後者の典型的な疾患が肝硬変(非代償期)です。

だるそうな患者さん

肝機能障害の原因

肝臓の病気の主なものとして、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD(Nonalcoholic Fatty Liver Disease)があります。それぞれ、肝炎ウイルス、飲酒、栄養過多が原因になります。さらに、自己免疫性の肝炎や薬剤などが原因で、肝臓が悪くなることもあります。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎のなかで、慢性肝障害の原因にもなり患者数の多いのが、B型肝炎とC型肝炎です。また、急性肝炎の原因となるものに、A型肝炎ウイルスやE型肝炎ウイルスがあります。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは、よく知られているように血液から感染しますが、A型肝炎ウイルスやE型肝炎ウイルスは食物や水など口から感染する点が特徴です。

アルコール性肝障害

アルコールは、肝臓に悪影響を及ぼすといわれており、過度なアルコールの摂取はアルコール性の脂肪肝や線維化、そして肝硬変など肝機能障害の原因になるケースがあります。脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった状態を指し、線維化が進み肝臓が硬くなり機能が著しく減退すると肝硬変になります。アルコールは、男性であれば1日に20〜30gほどが適量といわれており、それ以上の摂取は肝機能障害を引き起こす可能性があるといわれています。

アルコール

非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD(Nonalcoholic Fatty Liver Disease)

非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD(Nonalcoholic Fatty Liver Disease)とは、アルコール以外の原因で脂肪肝になるケースを指します。肥満や過剰な栄養の摂取は、アルコールと同様に肝脂肪につながり、肝硬変の原因になるといわれています。また、糖尿病に罹患している方も同様に、脂肪肝から肝炎になる可能性があります。

自己免疫性の肝炎や薬剤が肝機能障害につながり得る

ほかにも、自己免疫性の肝炎など、免疫の異常により肝機能障害が起きることがあります。また、肝臓は、薬剤を分解し処理する働きがあるのですが、この働きがうまく機能しないことがあり、薬物性の肝機能障害になるケースがあります。薬物性の肝機能障害は、進行すると重篤な肝不全の状態になることがあり、場合によっては死にいたることもあります。この薬剤とは、必ずしも疾患の治療のために服用するものばかりとは限りません。健康のために有効であると考えて飲んでいるサプリメントなどの健康食品も肝機能障害につながることがあります。

肝機能障害になりやすい方とは?

肝機能障害になりやすい方を、先ほどのASTやALTの上昇など、数値上の異常と考えると、肝臓に障害を起こすような肝炎ウイルスに感染している方は、肝機能障害になりやすいといえるでしょう。また、肝臓に影響を及ぼすほど過度の飲酒をしているような方も肝機能障害を起こしやすいといえます。さらに、近年では、このような肝炎ウイルスの感染や過度なアルコール以外にも、肥満や栄養の過剰な摂取、糖尿病などが原因で肝機能障害になる方が増えています。そのため、特に体重が多い肥満の方は、注意が必要でしょう。

肥満の患者

ウイルス性肝炎のキャリア(持続感染)で注意すべきこと

ここでは、肝機能障害の主たる原因の1つであるウイルス性肝炎において、特に注意すべきことをお話しします。ウイルスキャリアという言葉がありますが、これは一般には肝炎ウイルスに感染しているものの肝炎症状は現れていない状態を指します。肝炎ウイルスは持っているけどALTは正常な状態と考えてもらったらよいのですが、いくつか注意が必要です。ALTは正常でも既に肝硬変になっている場合があります。このような場合は、普通の意味でのキャリアとは、大きく異なると言わなければなりません。

感染している肝炎ウイルスにより対応は大きく異なる

肝炎ウイルスのキャリアである場合、そもそもどの肝炎ウイルスに感染しているかが非常に重要です。それは、肝炎ウイルスにより特徴が異なるからです。たとえば、C型肝炎ウイルスに感染している方のうち、約4分の1はALTが正常だと言われていますが、このような方でも多くの方が実際には肝臓の線維化が進んでいることが知られています。

一方、B型肝炎ウイルスのキャリアには、2種類あります。まず、B型肝炎ウイルスに感染していてウイルスはたくさんいるけれども、肝炎がまだ起こっていない状態の患者さんに使われます。さらに、保有しているウイルスがかなり少なくなっていて、肝炎症状が出ていない患者さんもこのように呼ばれます。前者と後者では、対応や治療が異なります。

感染している肝炎ウイルスの量など、個別の対応が重要

このため、ウイルスのキャリアという大まかな認識よりも、患者さんが今どういう状態なのか個別に把握することが非常に重要になるでしょう。自分を肝炎ウイルスのキャリアであると認識している方は、そもそもどの肝炎ウイルスに感染しているか、そして肝臓はどのような状態にあるのか把握しておくことが重要です。自分がどのような状態であるか適切な診断を受けるとともに、重篤な状態を避けるためには具体的な対処法を知ることが有効となるでしょう。

 

肝機能障害(竹原 徹郎先生)の連載記事

1984年に大阪大学医学部卒業後、1993年に医学博士を取得。1998年米国マサチューセッツ総合病院 消化器内科 研究員を経て、2007年に大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 准教授、2011年には同学の教授に就任。主に、ウイルス肝炎、肝癌、細胞死・免疫研究を専門としている。

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