げきしょうかんえん

劇症肝炎

最終更新日:
2023年04月26日
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2023/04/26
更新しました
2017/04/25
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概要

劇症肝炎とは、急性肝炎が急速に悪化して肝細胞が急激に壊れることで、発症から8週間以内に黄疸(おうだん)、出血傾向、肝性脳症などの症状が起こる病気です。

肝臓は体に必要な物質を合成したり、有害な物質を解毒したりするはたらきを持っていて、これらのはたらきを担っているのが肝細胞です。急性肝炎も肝細胞が壊れる病気ですが、肝細胞は再生する能力を持っているため、急性肝炎を発症してもほとんどは自然に治ります。

しかし、劇症肝炎では肝細胞の急激な破壊によって再生が追いつかないため、適切な治療を行わないと致命的になることが少なくありません。病状が進むほど致死率が高くなることから、早期発見・早期治療が重要となります。救命のために肝移植が必要になる場合もあります。

急性肝炎から劇症肝炎に進展する頻度は約1%で、日本における劇症肝炎の患者さんは年間400人程度と推定されています。また、劇症肝炎は新生児から高齢者まで、男女関係なくあらゆる年齢層に起こり得ます。

原因

劇症肝炎の原因には、ウイルス性肝炎薬物性肝障害自己免疫性肝炎などがあります。

ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスを原因としており、発症している人だけでなくキャリアの人(症状はないが感染が持続している人)も劇症肝炎になる場合があります。ウイルスの種類には主にA型、B型、C型、D型、E型がありますが、これらのうち劇症肝炎の原因としてはB型がもっとも多く、全体の約40%を占めるとされています。

薬物性肝障害と自己免疫性肝炎は併せて約10%を占めています。原因が分からないものの割合は全体の約30%にのぼります。なぜ一部の人が劇症肝炎に進展するかについては、まだ十分に解明されていません。

症状

劇症肝炎の初発症状としては、発熱、全身倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振などが多くみられます。また、肝機能の低下に伴って高度の黄疸(眼球の白目部分や皮膚、尿が濃褐色になる)が生じ、さらに進行すると肝性脳症が現れます。

肝性脳症とは、肝機能の低下によって肝臓で毒素(アンモニアなど)が十分に解毒されず、血液中の毒素が脳に到達することで脳機能が損なわれる病気です。肝性脳症の主な症状としては意識障害があり、症状の程度に応じてI~V度に分類されています。

軽度のI度やII度では昼夜の逆転や多幸気分、抑うつ状態、時間や場所が分からなくなる、異常行動、羽ばたき振動(鳥が羽ばたくように手が震える)などがみられます。III度以上では興奮状態になったり、意識がぼんやりしたり、より重症になると昏睡状態(こんすいじょうたい)に陥ります。

劇症肝炎では腎臓や肺、心臓、消化管などの他臓器の障害や、血液が固まる血液凝固の異常、細菌感染なども高頻度に起こるため、発熱や呼吸困難、むくみ、下血(黒色便もしくはタール便)、出血しやすい・血が止まりにくいなどの症状が現れることもあります。

検査・診断

症状の出現から8週間以内にII度以上の肝性脳症が生じ、かつプロトロンビン時間(PT)が40%以下になった場合に劇症肝炎と診断します。

PTとは、血液が固まるまでの時間を示す検査値です。肝機能が低下すると、血液中の血液凝固因子が少なくなり血液が固まるまでに時間がかかるようになることから、PTの確認を行います。

また、肝機能の低下に伴ってASTやALTの低下や、総ビリルビンの上昇を認めるため、採血をしてこれらの数値も調べます。

劇症肝炎では肝臓の萎縮や腹水などを認める場合もあります。したがって、腹部超音波検査(エコー検査)やCT検査といった画像検査も行います。

治療

劇症肝炎では、原因に対する治療と、肝臓を守るための治療の2つが重要となります。

劇症肝炎の原因としてもっとも多いB型肝炎の治療では、核酸アナログ製剤であるエンテカビルの経口投与や、インターフェロン アルファを併用した抗ウイルス療法などを行うのが一般的です。薬物性肝障害自己免疫性肝炎では、点滴により副腎ステロイド薬を短期的に大量投与します。

また、肝臓の機能が低下すると体に必要な物質が十分に合成されず、有害物質を解毒できなくなってしまいます。そのため、原因にかかわらず血漿交換療法や血液透析療法を行い、体外に血液を循環させて、体に必要な物質を補充し有害物質を除去します。劇症肝炎では高い頻度で全身の臓器に障害が起こることから、全身管理や合併症に対する治療も重要です。

このような治療を行っても肝機能が回復しない場合には、肝移植を行います。肝移植は脳死者の肝臓を用いる場合と、近親者の肝臓の一部を用いる場合の2通りがありますが、日本では後者が広く行われています。

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