じこめんえきせいかんえん

自己免疫性肝炎

肝臓

目次

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概要

自己免疫性肝炎 (autoimmune hepatitis: AIH) とは、そのほとんどが慢性に経過する肝炎を呈し、肝細胞が障害されていく難治性の肝疾患です。何らかの自己免疫が発症に関与していると考えられています。自覚症状がほとんどなく、適切な治療を行わずに肝炎が進行してしまうと、肝硬変や肝不全へと進展してしまう危険性があります。

女性の患者さんの数が男性の6~7倍にのぼるといわれており、女性に多い病気です。また、どの年齢においても発症しうる病気ですが、日本においては中年以降の女性に発症しやすく、50~60歳代で発症する例が多いといわれています。

原因

自己免疫性肝炎の発症にいたる詳細なメカニズムについては、現在のところわかっていません。しかし、自己抗体が陽性を示すと共に免疫グロブリンが高値を示すこと、また、他の自己免疫疾患を合併している例が多く認められることなどから、自己免疫の関与が強く示唆されています。

自己免疫に加え、遺伝的要因や環境要因などさまざまな要素が関与し発症にいたると考えられています。遺伝的要因に関しては、日本における患者さんの約60%において白血球型のひとつであるHLA-DR4が陽性であることが報告されています。一方、欧米においてはHLA-DR3とHLA-DR4陽性例が多いとされています。

しかし、具体的な責任遺伝子の特定にはいたっておらず、HLA-DR4が陽性でない患者さんの存在も指摘されることから、何らかの環境要因の関連が考えられています。

症状

自己免疫性肝炎のほとんどの例では、慢性に肝炎が経過します。肝臓は沈黙の臓器といわれるように、自覚症状が現れにくいことが知られています。自己免疫性肝炎の場合も例外ではなく、無症候性であることもめずらしくありません。

症状があったとしても、全身の倦怠感や易疲労感(疲れやすくなること)、食欲不振など一般的な肝炎でも認められるものであり、自己免疫性肝炎に特異的というわけではありません。気づかれないまま肝硬変へと進展してしまっている例では、浮腫(ふしゅ)(むくみ)や腹水などが認められる場合もあります。

通常、慢性的な経過をたどる自己免疫性肝炎ですが、近年では全身倦怠感や黄疸(おうだん)(肝臓や血液の異常で皮膚や粘膜が黄色くなること)を伴いながら急激に発症する例も報告されています。この急性発症型の自己免疫性肝炎の場合、急速に肝炎が進行して肝機能が悪化し、肝不全にいたる例もあります。

検査・診断

自己免疫性肝炎は自覚症状がない場合も多く、健康診断などの血液検査で偶然に発見されることもめずらしくありません。血液検査では、肝細胞の障害の程度を示すALT (GPT) 、AST (GOT) (トランスアミナーゼ) の上昇が認められます。

トランスアミナーゼの値が上昇している場合には、肝炎や肝障害を引き起こす他の病気と区別するために、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していないかどうかを確認します。

肝炎ウイルスが陰性であることを確認した後、自己抗体のひとつである抗核抗体の有無を調べるとともに、免疫グロブリンの測定を行います。自己免疫性肝炎の場合には、抗核抗体の出現、ならびにγグロブリン、とりわけIgGが高値を示すことが知られています。ただし、急性発症型の自己免疫性肝炎の場合、抗核抗体が陰性である場合やIgGが低値の場合もあるため注意が必要です。

血液検査以外にも、脂肪肝や他の肝胆道疾患と区別するために腹部エコーが行われます。また、肝生検により組織学的な評価が必要になる場合もあります。肝生検において特徴的な組織像が認められない場合には、治療薬である副腎皮質ステロイドを投与し、実際に効果があるか確認することもあります。

治療

自己免疫性肝炎の治療は、副腎皮質ステロイドによる薬物療法が基本となります。多くの患者さんで有効性が示されており、肝機能の改善が認められます。しかし、治療を中止した場合には再燃が認められるケースも多く、基本的には生涯にわたり薬を服用する必要があるとされています。

ステロイドによる副作用を最小限に抑えるため、肝機能の状態をみながら徐々に薬の量を減らしていき、検査数値が安定する最低量のステロイドを長期間内服します。ステロイドを減量する際には、ウルソデオキシコール酸を併用することがあります。軽症な患者さんの場合には、ウルソデオキシコール酸が単独で使用されることがあります。

また、副腎皮質ステロイドに抵抗性がある場合や合併症や副作用のために使用が難しい場合には、免疫抑制薬であるアザチオプリンが用いられることもあります。