インタビュー

自己免疫性肝炎の検査と診断——検査が必要な場合とは?

自己免疫性肝炎の検査と診断——検査が必要な場合とは?
石橋 大海 先生

国際医療福祉大学 名誉教授

石橋 大海 先生

この記事の最終更新は2016年04月11日です。

自己免疫性肝炎は治療薬の有効性が高いため、治療の早期開始が重要です。治療が遅れたり、適切な治療を行わなかったりした場合には、肝不全や肝硬変肝がんへと進行してしまうこともあるといいます。福岡山王病院で難病治療に取り組む石橋大海先生に、自己免疫性肝炎の診断についてお話を伺いました。

慢性的に経過する肝炎のことで、肝細胞が徐々に障害されていく難治性の肝疾患のひとつです。

自覚症状が現れないことが多く、健康診断などで偶然に発見されることも度々みられます。発症についての詳しいメカニズムはわかっていませんが、白血球の型を示す蛋白質で,リンパ球に病原体の情報を伝達する役割を担っているHLAのひとつのDR4が陽性の患者さんが60%ほどを占めています。

発症のリスクとして考えられていることとしては、ストレスや紫外線、あるいはウイルス感染(A型肝炎ウイルス・EBウイルス・サイトメガロウイルス・麻疹ウイルス)などが挙げられ、ある種の薬物なども誘因であると報告されています。つまり、このような誘因によって,不活化されていた免疫が活性化し,自己抗原に対して働くのではないかと考えられているのです。

検査が必要となってくるのは、黄疸や全身倦怠感など何らかの症状が現れ、肝炎が疑われる場合です。しかし,健診等で,偶然に肝機能検査に異常がみられることもあります。

血液検査では、自己免疫性肝炎で特徴的にみられるトランスアミラーゼなど肝機能検査を行います。トランスアミラーゼ値が上昇している場合には、他の原因による肝炎や肝障害を起こす他の疾患との鑑別が必要となるため、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスのチェックを行います。脂肪肝や他の肝胆道疾患を鑑別するために,腹部エコーも必要です。

B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスがどちらも陰性であれば、次に行うのが抗核抗体と免疫グロブリンの測定です。肝障害における血清タンパクの異常を推測するZTTやγグロブリン、IgGといった数値が高値で、なおかつ抗核抗体が陽性である場合には自己免疫性疾患の可能性が非常に高くなります。

しかし、自己免疫性肝炎においては診断確定のための検査マーカーが存在しないため、場合によっては肝生検が必要となることもあります。また、肝生検で特徴的な組織像がみられない場合には、実際に治療薬である副腎皮質ステロイドを投与してみて、効果が明瞭であれば自己免疫性肝炎ということになります。ただし、急に病気が現れる急性発症の場合には、自己抗体が陽性になっていなかったり、γグロブリンが低値だったりということもあるので注意しなければなりません。

  1. 症状が現れて肝炎が疑われるとき
  2. 肝機能検査で肝炎と診断されたとき
  • 特にウイルスマーカーが陰性
  • γグロブリン高値
  • ZTT高値
  • IgG高値
  1. 血液検査
  2. 腹部エコー
  3. 肝生検
  4. 副腎皮質ステロイドを投与してみる

診断で大切なことは、他の肝疾患との鑑別を正確に行うということです。

ウイルス性肝炎アルコール性肝障害、薬物などによる薬物性肝障害や脂肪性肝疾患、そしてサイトメガロウイルスやEBウイルスといった肝炎以外のウイルス感染による肝障害をまずは除外することが重要です。特に、薬物性の肝障害と非アルコール性脂肪性肝疾患においては、抗核抗体などの自己抗体が陽性になることがあるため、鑑別には十分な注意が必要となります。

自己免疫性肝炎の確定診断は、診断マーカーがないため、診断基準を用いて診断を行います。以下に示すようなスコアリングの基準が用いられます。

  1. 他の原因による肝障害が否定される
  2. 抗核抗体陽性あるいは抗平滑筋抗体陽性
  3. IgG高値
  4. 組織学的にinterface hepatitisや形質細胞浸潤がみられる
  5. 副腎皮質ステロイドが著効する

典型例 : 上記項目で①を満たし、②~⑤のうち3項目以上を認める

非典型例 :上記項目で①を満たし、②から⑤の1~2項目を認める

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