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A型肝炎

肝臓

目次

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概要

A型肝炎ウイルス (hepatitis A virus: HAV) に感染し、肝臓に炎症が生じた状態を指します。A型肝炎ウイルスに感染すると、急性肝炎を起こすことがあり、ときには劇症肝炎と呼ばれる重篤な肝炎を発症することもあります。一方、長期に渡って慢性肝炎を引き起こすことはなく、一度感染して完治すれば一生涯にわたる免疫を獲得します。

A型肝炎ウイルスは糞便中に含まれており、A型肝炎ウイルスに汚染された水や食べ物を摂取することで感染します。そのため、衛生状況がA型肝炎の流行に深く関連しており、衛生環境の整備されていない発展途上国を中心として流行が確認される傾向にあります。

A型肝炎ウイルスに対しては、2013年以降、1歳以上の子どもに対して国内でも予防接種が可能となりました。感染のリスクがある場合には、予めの接種を検討することが推奨されています。

原因

A型肝炎は、糞便に存在するA型肝炎ウイルスに感染することで起こります。糞便中に含まれるA型肝炎ウイルスは、水や氷、野菜、果物、海鮮類(カキ等)などに付着しており、これらを不衛生な状況で摂取することから感染します。また、性行為(特に男性同士)でも感染することがあります。

A型肝炎ウイルスは胃酸の中においても安定であるため、ウイルスを摂取した後の胃酸による効果は期待できません。また、熱に対しても安定な傾向であり、感染予防の観点からは、しっかりと長い時間煮沸することや水で洗い流すことが大切です。

症状

A型肝炎の症状は、一過性の炎症で終わる「急性肝炎」によるものです。また極まれに「劇症肝炎」と呼ばれる重篤な状態になることもあります。

A型肝炎の潜伏期間は、平均1か月であり、いわゆる他の一般的な風邪ウイルスと比べると長い傾向にあります。そのため、感染のきっかけとなった食物を特定することは困難なことが多いです。

初期の症状としては、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、気分不快、発熱、頭痛などです。これらの症状が、1〜2週間程度持続した後に、肝炎により特徴的な黄疸の症状が出現し始めます。具体的には、皮膚や眼球の白い部分が黄色くなることに加え、尿の色が暗色になることもあります。黄疸の症状は、典型的には1か月程度の経過で治まります。

これらのA型肝炎の症状は成人によくみられますが、小児においては半数以上において認めません。そのため、単なる不調としか捉えられないこともありえ、特に衛生概念のない年齢では感染が流行するリスクとなります。

劇症肝炎に陥ると、肝臓へのダメージが重篤となるため、肝臓が本来持つ機能が保てなくなります。結果、黄疸や倦怠感(けんたいかん)といった症状に加えて、意識障害や腹水・胸水、全身のむくみ、出血傾向等、肝不全に伴う症状が出現するようになります。

検査・診断

A型肝炎ウイルスに感染すると、体内で抗HAV抗体というタンパク質が作られます。特にIgM抗体と呼ばれる抗体は、感染初期のマーカーとして有用であり、A型肝炎の診断に際して血液検査にて確認されます。

また、A型肝炎ウイルスそのものの存在を確認するために、糞便や血液を用いて、リアルタイムPCRと呼ばれる検査が行われることもあります。

A型肝炎ウイルスは、感染者が疑われた段階で保健所に報告することが医師に義務づけられています。地域の保健所と連絡を取り、上記の検査を組み合わせながらA型肝炎ウイルスを特定します。

急性肝炎の炎症の程度を判断する指標としては、血液検査にてASTやALT、ビリルビン、ALPなどの肝臓に関連した検査項目を行います。また、肝臓のタンパク合成機能を評価するために、コリンエステラーゼや凝固因子(血液を固めるために必要な物質)、出血傾向の指標を検索することもあります。

治療

A型肝炎ウイルスに対しての特効薬はありません。急性肝炎の症状を呈した場合には、安静を保つことが重要です。必要なタイミングで血液検査を行い、急性肝炎の状態をチェックしつつ、劇症肝炎の徴候が出現していないかどうかを経過観察します。肝庇護(かんひご)薬が用いられることもあります。劇症肝炎が発症した場合には、肝移植の適応も考慮されます。

A型肝炎ウイルスに特化した治療がないため、予防を徹底することが重要です。A型肝炎ウイルスに汚染された食物を摂取することから急性肝炎が発症するため、予防としては、手洗いの励行などの一般的予防法が大切です。

また、発展途上国においては、路面店での食物の摂取にも気をつける必要があります。水も、ミネラルウォーターの使用や煮沸消毒(85℃以上で1分)を行うことが大切です。A型肝炎が治癒した後も、数週間はウイルスが便の中に排泄されることも知られています。症状が治まった後も、しばらくは感染予防対策を続ける必要があります。

また、日本国内においては1歳以上に対して、A型肝炎ウイルスのワクチンが利用可能です。日本国内のワクチンは、2~4週間の間隔で2回接種し、約半年後に3回目の接種をすると免疫が強化され、5年間は有効といわれています。発展途上国への渡航前等においては、予防接種を受けることも検討することが大切です。

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