基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)
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ASTとは、肝臓・心臓や骨格の筋肉・赤血球に多く含まれる酵素の一種です。ASTが多く含まれる肝臓・筋肉・赤血球が何らかの原因でダメージを受けると細胞が壊れて血液中にASTが流出するため、ASTの上昇はそれらに障害が生じている可能性を示唆します。このため、肝炎や脂肪肝、肝硬変、肝臓がんなどの肝臓の病気、心筋梗塞など体内の重要な筋肉がダメージを受ける病気、赤血球が破壊される溶血性貧血などの発見に役立つ検査です。
ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの略語ですが、一般的には広くASTの名称が使用されています。また、医療機関によってはGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)と呼ばれることもあります。
ASTは上記で述べたような病気の可能性が疑われる際に、病気の有無や重症度などを推測するために行われる検査です。ただし、血中のAST濃度を測定するのみで病気が特定できるわけではありません。異常値がみられた場合は、ほかの血液検査を追加したり、画像検査などの精密検査を行ったりして病気を特定する必要があります。
一方、病気が特定されて治療が開始された後にも、治療の効果を判定する目的で定期的に検査が行われることがあります。また、特に症状がない場合でも健康診断などで肝臓や心臓などの病気の有無を調べるために広く検査される項目となっています。
ASTは血液検査によって測定します。基本的には食事や服薬の影響をあまり受けないため、検査前でも普段通りの食事・服薬をして構いません。
ただし、ASTは骨格筋にも含まれているため、検査前に激しい運動を行うと骨格筋がダメージを受けてAST値が上昇することがあります。ASTは血液中に放出されると11~15時間は体内にとどまるとされていますので、検査前半日はなるべく筋肉の負担になるような運動は避けるようにしましょう。
採血を行うため、検査当日は前腕部が出しやすい服装を心がけ、万が一血液が付着しても目立ちにくい色味のシャツなどを着用していくとよいでしょう。
AST検査の採血は、一般的に広く行われる静脈血採血と変わりません。採血自体がスムーズであればごく短時間で終了し、検査後は1~2分ほど採血部を圧迫して止血が確認できたら終了です。
採血時には注射針を皮膚に刺すため痛みを伴いますが、痛みの程度は軽い場合がほとんどです。
ASTは、10~40(U/L)が正常値とされています。ただし、検査機関や医療機関によって正常とされる検査値の範囲には差がありますので、受診した医療機関の判断に基づいて異常の有無を判定することになります。
ASTが正常値よりも高値である場合、肝臓・心臓・筋肉・赤血球などASTが含まれる部位に何らかのダメージを受けていることが考えられます。ASTが高値というだけで病気を特定することはできませんが、ASTは非常に短時間で検査が可能な項目であり、異常値がみられる場合はほかの検査項目も併せて、画像検査などの精密検査に迅速に進むことが可能です。
精密検査の内容は疑われる病気によって異なりますが、代表的なものとして、肝機能障害では腹部超音波検査や腹部造影CT検査、腹部MRI検査、心筋梗塞や狭心症といった心筋障害では心電図検査、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査、冠動脈造影検査が挙げられます。また、筋ジストロフィーなどの筋肉の病気では筋電図検査や筋生検、遺伝子検査、溶血性貧血においてはクームス試験などが行われることが考えられます。
ASTは何らかの病気が疑われるケースや、健康診断などで全身の状態を広く調べるために検査される項目で、異常値が発見された場合には病気を確定するための精密検査が必要となります。
特に肝臓の病気の場合は自覚症状がないことも多く、精密検査やその後の治療・経過観察を自己中断してしまうケースがあります。異常値がみられた場合は、医師の指示通りに精密検査を受け、治療や定期的な経過観察を継続するようにしましょう。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。