かんせいのうしょう

肝性脳症

肝臓

目次

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概要

肝性脳症とは、肝臓の機能が低下した結果、意識障害などの症状が起こる状態を指します。

肝臓は、体にとって不要な物質を解毒する作用を持っているため、肝臓の機能が低下すると体内に不要な物質が蓄積します。肝性脳症は、こうした不要な物質が脳に影響を与えることから、神経に影響が生じた状態です。

原因

肝性脳症は、脳に対して毒性のある物質が影響することで発症します。消化管から吸収された物質は、門脈と呼ばれる血管を通り肝臓へ運ばれます。肝臓では、体に必要な物質を全身組織が利用できるように処理する一方、処理の過程で発生する不要な物質を解毒する作用ももっています。

しかし、肝硬変を始めとした慢性的な肝障害が存在する状況では、消化管から吸収された物質を適切に処理することができなくなります。その結果として、体内にアンモニアを始めとした不要な物質が過剰に蓄積することになります。

さらに、肝硬変が存在すると「門脈圧亢進症」と呼ばれる病態を併発することになります。門脈圧亢進症を発症すると、門脈から肝臓への血液の流れが阻害されることになります。その結果、消化管から吸収され本来であれば肝臓で処理を受けるべき毒性物質が、肝臓での処理を受けることなく直接全身に循環することになってしまいます。

以上のような結果毒性物質が脳へと運ばれることになり、脳細胞に障害を引き起こし肝性脳症となります。

症状

肝性脳症では、中枢神経症状が主体であり、意識障害の程度に準じて5つの段階に分類されています。第一段階では、昼夜睡眠覚醒のサイクルが逆転したり、自分の身なりに無関心になったりします。こうした症状は軽微なものであり、気づかれないこともあります。

症状が進行すると、時間や場所、人に対して誤った認識を示すようになります。たとえば、病院に入院していても自分が病院にいることを忘れてしまったり、看病してくれている家族のことを認識できなくなったりします。またお金を捨ててしまうといった異常行動を示すこともあります。

この段階では「羽ばたき振戦」といった症状を呈することもあります。羽ばたき振戦とは、両手を広げた状態で腕を伸ばし、手の甲が自分のほうを向くように手の関節を曲げると、手の関節や指先が羽ばたくように揺れ動く運動のことを指します。

肝性脳症がさらに進行すると、傾眠傾向が強くなったり、興奮状態となったり、周囲の状況に極度におびえたりするようになります。最終的には意識が完全になくなり、痛みなどの刺激でも反応をしなくなってしまいます。

なお、アミノ酸の一種である「メチオニン」が処理される過程で生成される「メルカプタン」と呼ばれる物質がありますが、肝性脳症の患者さんでは本物質が多く蓄積しています。その結果、肝性口臭と呼ばれる特有のにおいを認めることもあります。

検査・診断

肝性脳症では、ベースにある肝機能障害を評価するために、ASTやALT、アルブミン、コリンエステラーゼ、凝固機能などを血液検査で確認します。また、肝性脳症では血液中のアンモニアが上昇しているため、血液検査でこれを確認することもあります。ただし、その値は必ずしも意識状態とは相関しないため、結果の解釈には注意が必要です。

肝性脳症に関連した検査として、フィッシャー比が低下していることを確認することもあります。肝臓の機能が低下している状態では、フィッシャー比と呼ばれる比が低下しています。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類存在しますが、さらに構造をもとにして細分化されています。このなかの「分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸」と「芳香族(ほうこうぞく)アミノ酸」の両者の比をとったものを、フィッシャー比といいます。

肝性脳症では脳波検査を行い、「三相波」を確認することもあります。また肝性脳症が悪化した原因を探るために、感染症がないかどうかを血液検査で確認することもあります。

治療

肝性脳症の治療では、原因があれば、その原因に対するアプローチが行われます。具体的には、感染症が疑われる場合には抗生物質が使用されますし、食道静脈瘤からの出血がある場合には内視鏡を用いた止血術が行われます。

腸管内に存在する毒性物質を排除するために、ラクツロースと呼ばれる下剤が使用されることがあります。また特に動物性タンパク質を大量に摂取すると、毒性物質が体内でより多くつくられることになります。したがって、動物性タンパク質を減らした食事を摂取することも治療の一環として有効です。

さらに、毒性物質をつくりだす腸内細菌を減らすことを目的として、腸管から吸収されにくい抗生物質であるリファキシミンが使用されることがあります。