かんせいのうしょう

肝性脳症

最終更新日:
2022年08月03日
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2022/08/03
更新しました
2017/04/25
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概要

肝性脳症とは、肝硬変や肝臓がんなどによって肝臓の機能が著しく低下し、肝臓で代謝されるアンモニアなどの有害な物質が体内にとどまることで発症する病気です。

有害な物質が脳にダメージを与えるため、性格や行動の変化、睡眠リズムの乱れなどの症状が引き起こされます。進行すると、錯乱や昏睡、運動機能の異常などの症状が現れて死に至ることもあります。

また、肝性脳症は重度な肝機能低下によって引き起こされる病気であるため、黄疸(おうだん)(皮膚や白目が黄色くなる)、腹水(お腹に水がたまる)、むくみ、出血しやすいといった症状を伴うのが一般的です。

肝性脳症の治療は、体内にとどまっている有害な物質を減らすための薬物療法が主体となります。肝機能が低下している病気がある場合は、発症を予防するために食事療法や運動療法などが必要になることもあります。

原因

肝性脳症は重度な肝臓の病気によって肝機能が低下し、体内にとどまったアンモニアなどの有毒な物質が脳に達することによって発症します。劇症肝炎など急激に肝機能が著しく低下する病気、肝硬変や肝臓がんなどのように徐々に肝機能が低下していく病気など、さまざまな病気が発症の原因となります。

徐々に肝機能が低下していく病気の場合は、便秘、たんぱく質の取り過ぎ、脱水、電解質バランスの変化、アルコール摂取、感染症、消化管出血などをきっかけに発症するケースが多いとされているため注意が必要です。

症状

肝性脳症では、体内にとどまった有害な物質が脳にダメージを与えるため、さまざまな脳機能の低下が引き起こされます。

重症度は幅広く、軽症な場合は睡眠リズムの乱れ、怒りっぽくなるなどの性格の変化、抑うつ気分などのみがみられるため、発症に気付かないことも少なくありません。しかし、進行すると場所や日時が分からなくなるといった見当識障害、傾眠、判断力や集中力の低下などの症状や羽ばたき振戦(両腕を前に伸ばすと手にふるえが生じて羽ばたくような動きをする)という肝性脳症の特徴的な異常運動がみられるようになります。

また、精神的な錯乱状態に陥って最終的には意識を失って昏睡状態となることもあり、昏睡状態にまで至ったケースでは治療を行っても救命できる確率は低いとされています。

検査・診断

肝性脳症が疑われる場合は以下のような検査が行われます。

血液検査

血液に含まれるアンモニアの量、肝機能の状態などを評価するため血液検査が行われます。検査は診断時に一度だけではなく、病状の変化を評価する目的で複数回にわたって行われるのが一般的です。

画像検査

肝性脳症は脳機能が低下する病気であるため、ほかの脳の病気と鑑別するために頭部のCTやMRIなどの画像検査を行うことがあります。また、以前の情報がない場合は、肝臓がんの合併や腹水・門脈の状態を調べるために腹部CTを行うこともあります。

さらに、重度な肝臓の病気は食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)を合併することが多く、破裂すると多量な出血で死に至ることもあるため、合併の有無を調べるために内視鏡検査を行うことも少なくありません。

治療

肝性脳症の治療の主体は薬物療法です。具体的には、腸におけるアンモニアなどの有害な物質の産生や腸からの吸収を減らす作用を持つ二糖類、アンモニア産生を促す腸内細菌を減らすための抗菌薬などが挙げられます。

また、昏睡に至ったような重症なケースでは、アミノ酸代謝異常による意識障害を改善させ、アンモニアの分解に必要なアミノ酸を補うために“BCAA製剤”や“L-アルギニンL-グルタミン酸”という薬剤の点滴を行う必要があります。

予防

肝性脳症は元々肝機能低下があり、便秘、たんぱく質の過剰摂取、消化管出血、感染が引き金となって発症するケースも少なくありません。そのため、発症を予防するには便通を整え、たんぱく質を取り過ぎない食事、適度な運動、禁酒、感染(発熱)に対する早めの治療などを心がけることが必要です。発症の誘因となる便秘を避けるために緩下剤などを使用することもあります。

また、肝硬変など肝性脳症の原因となる病気の治療を適切に行うことも大切です。なお、肝性脳症を発症する可能性のある重度な肝機能低下がある人は食道静脈瘤を合併しているケースも多く、出血が生じると肝性脳症を引き起こす原因にもなります。定期的に内視鏡検査などで状態をチェックし、適切な治療を継続していきましょう。

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