しょくどうじょうみゃくりゅう

食道静脈瘤

最終更新日
2023年03月28日
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2023/03/28
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)とは、食道の粘膜下にある静脈の壁が膨れ、血管が(こぶ)のようになる病気のことです。

肝硬変などによって門脈圧亢進症という状態になると、普段あまり血流量が多くない胃上部や食道の静脈の内圧が上昇し、血管が無理に押し広げられることで、でこぼこと瘤状に膨らむようになります。

食道静脈瘤ができたとしても特に症状は自覚しませんが、進行すると静脈瘤が破裂し、大量出血を起こします。その結果、吐血や下血がみられたり、肝不全や腎不全になったりすることがあります。また、大量出血によってショック状態に陥り、死に至ることもあります。

そのため、静脈瘤が破裂する前に発見し、治療を行うことが大切です。治療は内視鏡治療が中心となりますが、病気の状態によっては透視下でのカテーテル手術や外科手術が選択される場合もあります。

原因

食道静脈瘤は門脈圧亢進症によって生じます。門脈というのは胃や腸、膵臓(すいぞう)脾臓(ひぞう)などの腹部の臓器から肝臓に入っていく大きな静脈のことで、この門脈の血圧が高くなる病態を門脈圧亢進症といいます。

門脈圧亢進症は、主に門脈の血流が悪くなることで生じ、その原因のほとんどが肝硬変といわれています。肝硬変は肝臓が硬くなる病気ですが、肝臓が硬くなることによって門脈の血液が肝臓へスムーズに入らなくなります。

そうすると本来肝臓に入るはずの血液が行き場を失い、食道の細い血管に大量の血液が流れ込むこととなり、その結果として血管の壁が膨らみ蛇行して瘤状になってしまうのです。

肝硬変以外では、肝外門脈閉塞症(かんがいもんみゃくへいそくしょう)バッド・キアリ症候群などが原因になることもあります。

症状

食道静脈瘤ができても通常は症状が現れませんが、原因となる病気の症状はみられ、たとえば肝硬変が原因であれば疲労感、倦怠感、手のひらが赤くなる、胸部の血管が浮き出る、体が黄色くなる(黄疸(おうだん))などの肝硬変の症状を認めます。

しかし、静脈瘤は一定以上まで進行すると破裂し、大量出血によって吐血や下血がみられるようになります。出血に伴って臓器への血流量が減少し、肝不全や腎不全に陥ることも珍しくありません。ショックによって死に至ることもあります。

検査・診断

食道静脈瘤は上部消化管内視鏡検査によって診断することができます。食道静脈瘤の有無や出血部位の確認、重症度の判定などにおいて非常に重要な検査です。この検査では、口または鼻から内視鏡(先端に小型カメラがついた細い管)を挿入して食道内を観察します。

また、治療方針を決定するうえで静脈瘤の詳細な状態や、全身状態、各臓器の状態を把握する必要があるため、治療前に腹部超音波検査やCT検査などが行われることもあります。

治療

食道静脈瘤が破裂し出血がある場合にはまず輸液や輸血が行われ、出血量が多い場合はバルーン付きチューブを用いて出血部位の圧迫止血を行います。破裂の予防には薬物療法が有効で、出血リスクが高い場合にはβ遮断薬など門脈圧を下げる薬を用いることがあります。

病変に対する治療としては内視鏡治療が第一選択です。破裂の予防と破裂後の緊急時のどちらにも対応しています。内視鏡治療で止血が困難な場合などには透視下でのカテーテル治療や手術療法が行われます。

内視鏡治療

食道静脈瘤に対する内視鏡治療として、内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)、内視鏡的静脈瘤結紮術(ないしきょうてきじょうみゃくりゅうけっさつじゅつ)(EVL)、アルゴンプラズマ凝固法(APC)などがあります。

内視鏡的静脈瘤硬化療法では内視鏡を用いて静脈瘤やその周囲に注射針を刺し、硬化剤を注入して拡張した血管を塞ぎ、内視鏡的静脈瘤結紮術では静脈瘤を特殊なゴムで縛って静脈瘤を壊死(えし)・脱落させます。

アルゴンプラズマ凝固法は、小さな静脈瘤がある粘膜面に高周波電流を放射して焼灼・凝固する治療法で、主に再発予防を目的として上記2つの治療後に追加で行われます。

手術療法

手術方法には、下部食道や胃噴門部への血行遮断に加え、自動吻合器による食道離断術などが多く施行されます。

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