ばっど・きありしょうこうぐん

バッド・キアリ症候群

最終更新日
2023年12月27日
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2023/12/27
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

バッド・キアリ症候群とは、肝臓を通った血液が流れる肝静脈や肝部下大静脈が詰まったり細くなったりすることで肝臓に血液がうっ滞し、門脈(腸などの臓器から肝臓に入っていく静脈)の圧力が高くなり、さまざまな症状を引き起こす病気のことです。

バッド・キアリ症候群は肝静脈や肝部下大静脈の生まれつきの形態異常や血栓(血の塊)が原因と考えられていますが、約7割ははっきりした原因が分かりません。日本では難病の1つに指定されています。

バッド・キアリ症候群を発症すると、“門脈圧亢進症”による脾腫(ひしゅ)(脾臓の腫れ)や、腹壁静脈の怒張(血管が膨れ上がること)、食道や胃の静脈瘤(じょうみゃくりゅう)、腹水などの症状を引き起こします。

治療は、それぞれの症状を和らげるための対症療法と、肝静脈や肝部下大静脈の閉塞(へいそく)狭窄(きょうさく)を改善するための手術などが行われます。

原因

バッド・キアリ症候群は、肝臓から出た血液が流れる肝静脈やその先の肝部下大静脈が詰まったり狭くなったりすることによって引き起こされます。肝静脈や肝部化大動脈の生まれつきの形態異常や血栓などが原因として挙げられますが、はっきりとした原因が分からないケースも少なくありません。

また、バッド・キアリ症候群発症に関して、経口避妊薬の服用や妊娠・出産、真性多血症骨髄線維症など血液の病気、血管炎、血液凝固異常など、血栓を引き起こしやすい病気を合併していることも多いとされています。

現在のところ遺伝の関与はないと考えられていますが、はっきりとしたことは分かっておらず研究が進められている段階です。

症状

バッド・キアリ症候群は急激に症状が現れる急性型と、緩やかな症状が続く慢性型に分類されます。

急性型は、腹痛や嘔吐、急速な肝臓の腫れ、腹水などの症状を引き起こして、1か月以内に肝臓の機能が著しく低下することで死に至る可能性があります。

一方、慢性型は発症当初は自覚症状がほとんどないものの、時間が経過すると門脈の圧が上昇することによる脾臓の腫れ、食道や胃の静脈瘤貧血、腹壁静脈の怒張、腹水といった症状を引き起こすようになります。特に食道や胃の静脈瘤は、破裂すると出血が生じて吐血を引き起こし、命に関わるケースもあります。慢性型は静脈瘤の破裂を予防できれば予後はよいとされています。

検査・診断

バッド・キアリ症候群が疑われるときは、以下のような検査が必要となります。

血液検査

肝機能の状態や貧血の有無などを評価するために血液検査を行う必要があります。また、血液検査によりバッド・キアリ症候群の根本的な原因となり得る病気の有無を評価することも可能です。

画像検査

肝静脈や肝部下大静脈の閉塞や狭窄、肝臓の腫れの有無などを評価するために超音波、CT、MRIなどによる画像検査を行います。特に超音波検査では肝部下大静脈の血流の状態なども評価することができ、診断に役立つ検査となっています。

また、造影検査を行うこともあります。

内視鏡検査

慢性型の場合は食道や胃に静脈瘤を形成し、破裂することで命を落とすことがあります。そのため、バッド・キアリ症候群と診断された場合は静脈瘤の有無や状態を確認するために内視鏡検査を行います。

病理検査

肝臓の細胞の一部を採取して詳しく顕微鏡観察する病理検査を行うことがあります。

治療

バッド・キアリ症候群の治療は、発症の原因となる肝静脈や肝部下大静脈の閉塞・狭窄を解消するための治療と、門脈の圧力が高くなることによる症状に対する治療が必要です。

肝静脈と肝部下大静脈の閉塞や狭窄に対する治療としては、血管を拡張したり血栓を溶かしたりするカテーテル治療や手術が挙げられます。一方、門脈の圧力が高まることによる症状に対する治療は、食道胃静瘤に対する内視鏡治療などが挙げられます。また、肝臓の機能が著しく低下している場合には肝臓移植手術を検討する必要があります。

予防

バッド・キアリ症候群は、7割ははっきりした発症原因が分からないため予防法も確立していないのが現状です。一方で、基礎疾患として血液の病気などを合併していることも多いとされています。そのため、それらの病気がある場合は適切な治療を継続していくことが大切です。

また、バッド・キアリ症候群は食道や胃の静脈瘤を形成することがあるため、万が一発症した場合は医師の指示に従って定期的な検査や治療を行うようにしましょう。

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