もんみゃくあつこうしんしょう

門脈圧亢進症

肝臓

目次

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概要

門脈圧亢進症とは、肝臓に流入する血管のひとつである門脈内の圧力が異常に上昇している状態を指します。門脈圧亢進症は、肝硬変に伴って発症することが多いです。門脈圧亢進症では、門脈を介して心臓へとうまく血液を送ることができず、別の経路を迂回するようになります。このことと関連して、胃食道静脈瘤からの出血、脾機能の亢進からの血小板減少などのさまざまな症状が出現することになり、ときに生命にかかわることもあります。

門脈圧亢進症では、迂回する経路の発達に関連した合併症を予防するため、内視鏡治療や血管内治療が選択されることになります。また、肝硬変に伴って発症することが多い病態であることから、肝硬変に関連した病態に対しての治療介入も必要となります。

原因

肝臓には重要な血管が3本あります。それは、肝臓に流入する血管の肝動脈・門脈(消化管から吸収した栄養成分などを肝臓に運ぶ管)・肝臓から流出する血管の肝静脈の3本です。なかでも門脈は肝臓に流入する血液の3分の2を運ぶもっとも重要な血管です。「門脈圧亢進症」とは、何らかの原因により門脈の圧力が上昇し、それに伴い食道・胃静脈瘤、脾腫(ひしゅ)及び脾機能亢進症、腹水・胸水、肝性脳症などの症状をきたします。

門脈圧亢進症をきたす主な病気には、肝硬変・特発性門脈圧亢進症・肝外門脈閉塞症・バッドキアリ症候群・日本住血吸虫症などがあります。このうち肝硬変が原因としてはもっとも多く、門脈圧亢進症患者全体の約80%を占めるといわれています。

門脈圧亢進症を発症すると、肝臓を経有した心臓への血液還流に支障が生じることになります。すると、胃食道静脈瘤が発達したり、脾機能亢進症を発症したり、肝性脳症を呈することになります。

症状

門脈圧亢進症では、食道胃静脈瘤、腹水・胸水貯留、肝性脳症、脾腫・脾機能亢進症などさまざまな症状が出現します。胃食道静脈瘤を発症すると、静脈瘤破裂から出血をきたすことになり、吐血や下血などの症状を呈します。また、胸水や腹水が貯留することから呼吸困難を伴うことがあったり、腹水に細菌が感染し、発熱や腹痛を伴う特発性細菌性腹膜炎を起こしたりすることもあります。

さらに、門脈圧亢進症では意識障害や昼夜逆転などを呈することがあり得る肝性脳症を起こします。脾腫・脾機能亢進症を発症すると、全身倦怠感や出血傾向、貧血などの症状を呈することになります。

検査・診断

門脈圧亢進症では、血液検査や腹部超音波検査、CT、上部消化管内視鏡検査、門脈造影検査などが行われることになります。

血液検査では、脾機能亢進症による貧血・白血球減少・血小板減少の程度や、肝性脳症の可能性を示す高アンモニア血症、もっとも多い原因である肝硬変の程度を調べるため、肝機能などをチェックします。また、腹部超音波検査やCT検査を行うことで肝臓の形態や脾腫・腹水の有無、血管系の形態や血行動態の評価を行うことができます。

門脈圧造影検査はより侵襲性の高い検査にはなりますが、門脈圧を直接測定することができ、門脈系の血行動態評価も可能となります。上部消化管内視鏡検査では、胃食道静脈瘤の形態評価を行うことができます。出血がおこりやすそうな静脈瘤がある場合や出血を起こしているときには、治療介入を行うことも可能です。

治療

門脈圧亢進症では、門脈圧の上昇を引き起こした病気に対する治療が必要です。なかでも肝硬変が原因となることが多いので、肝硬変の予防的な観点も重要です。その他には、門脈圧亢進に対する薬物治療としてβ遮断薬・バソプレシン・亜硝酸薬・オクトレオタイドなどの薬剤を用いることがあります。

また、門脈圧亢進症では、胃食道静脈瘤に対しての治療も重要です。内視鏡的治療により、結紮術(けっさつじゅつ)や硬化療法等とよばれる方法で静脈瘤に対しての治療アプローチを取ります。また、カテーテル治療、手術療法(食道離断術、Hassab手術)を取ることもあります。門脈圧亢進症では、腹水を軽減させるための治療も行われます。具体的には、塩分制限やスピロノラクトン、フロセミドなどの利尿剤の投与が治療の基本です。また、アルブミンを体外から補正することもあります。こうした治療が奏功しない場合には、腹水穿刺や「経頸静脈的肝内門脈肝静脈短絡術(TIPS)」、「腹膜・頚静脈シャント」、「腹水濾過濃縮再静注」などの適応を考慮します。

門脈圧亢進症では、肝性脳症に対しての治療も必要となることがあります。タンパク摂取量の制限に加え、「ラクツロース」という薬剤の投与、および腸管を浄化するために抗菌薬や、「分枝鎖アミノ酸」の投与を行います。さらに、秘機能亢進症に対する治療アプローチとして、脾臓に栄養を供給する動脈の一部を血管内治療で塞栓する治療法や、外科的に脾臓を摘出する方法がとられることがあります。